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親父がチートに見える気がするんだが

今回は洋平の父のデビュー戦です

洋平の父はどうやって母を救ったのか

では、どうぞ

 狂人の攻撃を受ける寸前のところでお袋が親父と選手交代した。それはいいとしてだ、かすり傷一つ負ってないとはいえ、お袋は疲れていて体力はほとんどない状態と言っても過言じゃなかった。そんなお袋を親父は一瞬で移動させた。どうなっているんだ?


「何だぁ?今度の相手はオヤジかよ……ったく、自分の父親を殺したときにも思ったけどよぉ~。男の悲鳴ってのはそそられないんだよなぁ……」


 この狂人は人をいたぶった挙句、殺すような理解不能な奴かと思っていた。しかし、今の言葉で俺の理解を完全に超えている。ダメだ……コイツが何を言っているのかが解らない……


「そう言いなさんな。俺の力を見て少しはやる気出しただろ?」


 狂った事を言ってのける狂人に顔色一つ変えずに対峙する親父。その立ち振る舞いと背中を見てると俺よりも修羅場を潜り抜けてきたんだと感じる。尤も、それは医者としてだと思う。


「あ?力を見せられたからと言って俺がオヤジ相手にやる気なんて出すかよ……どうせなら女の悲鳴が聴きてぇなぁ……そうだ、アンタ、そっちの女二人のどちらかと変わってくれよ。な?いいだろ?」


 そう言って狂人が指さした先にいたのは茉央と美緒の二人。狂人に指名された茉央と美緒は“ビクッ”と肩を震わせた。そりゃ、死安さんから力を貰ったとはいえ、女の子だ。怖いと思う気持ちはよく解る。


「ダメだね。あの二人は俺の大事な娘とその幼馴染だ。悪いが、アンタにゃ指一本だって触れさせやしねーよ」


 親父は気怠そうに答えるが、茉央と美緒を守り抜く。そんな決意が背中から感じた。茉央は実の娘だ。美緒は実の娘じゃないけど、娘も同然の存在だから守るのは当たり前か


「そうかい!じゃあ!アンタを殺してからそっちの二人を殺すとするさ!!」


 狂人は俺と対峙した時同様に能力を発動させる仕草は見せなかったが、仕草がない代わりにコンクリートや周囲の木々、家の窓ガラスが割れたりヒビが入ったりしていた。コイツの力は音を操るとみて間違いなさそうだ


「命を粗末にするもんじゃねーぞ」


 耳を塞ぎたくなるような轟音の中で聞こえた親父の声。普通、耳を塞ぎたくなるような轟音じゃ人一人の声なんて聞こえるはずがないんだが、この時の親父の声は不思議とハッキリ聞こえた。


「は……?」


 親父の攻撃を食らった狂人本人も俺も気が付かなった。気が付いた時には狂人の身体に黒い棒状の何かが刺さっていた。何が起きているんだ?親父は力を使う素振りを見せたか?いや、そんな素振りを見せてはいない。ただ、狂人と会話していただけだろ?だと言うのに、どうして狂人の身体に黒い棒状の何かが刺さっている?どうして狂人が血を流している?


「信じられねぇみたいだな。まぁ当たりめーだよな……俺は自分の女を救った時も、アンタに攻撃した時も目に見える道具は使ってなんだからな」


 親父は何を言っている?お袋を窮地から救った時も狂人に攻撃した時も目に見える道具を使ってない?じゃあ、狂人の身体に刺さっている黒い棒状のものは何だ?あれは武器じゃないのか?お袋を救った時に道具を使わなかった?嘘つけ、スコップを使って目に見えない速度で穴掘って助け出したんじゃないのか?


「は?嘘吐いてんじゃねーよ!!道具を使ってない!?じゃあ、俺の身体に刺さってるこの棒は何だよ!?オバサンが突然消えた理由をどう説明するんだよ!?あぁ!?」


 狂人の言う通りだ。道具を使ってないのならどうやって狂人に黒い棒を刺した?どうやって攻撃を受ける寸前のお袋を俺達の近くに移動させた?テレポートさせたとでも言うのか?


「その刺さっている黒い棒はアンタの影だ。母さんを移動させた時には母さんの影を入口にし、洋平の影を出口にして移動させただけだ」


 親父の力が具体的に何の力を司るのかは知らない。でも、今言えるのは親父は道具の類を一切使ってないという事だ。お袋の時はお袋の影と俺の影を繋いで移動させた。ゲームで言うところのワープホールってところか。で、狂人の時は狂人の影を棒状にし、それを身体に突き刺した。種が解ってしまえば簡単な事だ。


「はぁぁぁ!?ンな能力があってたまるかよ!!」


 俺の時と同様に狂人は自分が実際に体験しているというのに力の存在を認められないみたいだ。あれか?自分がこの世界最強じゃなきゃ気が済まないのか?


「認めようと認めなかろうとあるものは仕方ないだろ」


 親父の言う通りだ。どんなに認められなくても実際に存在するものは仕方ない。むしろ、どうして存在しないと思ったんだ?ここは超能力メインの世界だろ?


「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 狂人の叫び声は獣そのものだった。


「ふざけてねーよ。さて、死安さん、コイツはどうしたらいいんですか?」


 親父は狂人の方を向いたまま死安さんに尋ねる。死安さんは最初に転生者の抹殺と言ったんだから当然、殺すに決まっている


「そのまま首を()ねて頂いて構いませんよ。どうせその転生者は殺すつもりでしたから」


 普段とは違い、冷たい表情、冷たい声の死安さん。仕事が早く終わってくれる事に越したことはない。しかし、ちょっと待ってほしい


「親父、その転生者の首を刎ねるのちょい待ち!」


 狂人の首を刎ねようとする親父に待ったをかける。別に狂人に同情したとかじゃない


「どうした?コイツに何か言いたい事でもあるのか?」

「いや、その転生者に言いたい事なんて何もない。でも、お袋はともかく、茉央と美緒に人が死ぬシーンを生で見せるのは拙くないか?」


 神子の部屋と俺が元いた世界じゃ時間の流れが違うってのも、それに伴って茉央と美緒が年齢、精神的に成長しているっての理解はしている。理解しているつもりではある。しかし、俺の中では茉央も美緒もいつまでも子供のままだと思っている。バカにして言ってるわけではない。ただ、最後に会った時はまだ子供だったってだけだ


「あー、それもそうだな。人の首を刎ねてるシーンなんて生で見るもんじゃねーよな」

「だろ?茉央と美緒の為にも首を刎ねるのは止めようぜ」


 別に狂人と化した転生者を助けたわけじゃない。でも、俺は慣れているからいいとして、茉央と美緒は異世界に来るのは今回が初めてだ。その初異世界で異様な光景を見せられ、おまけに人の首を刎ねるという残酷なシーンを見る羽目になる。それを考えると俺にだって思うところがある


「あ、アンタ、俺を助けてくれるのか?」


 狂人は輝いた目で俺を見ている。しかし、俺は助けた覚えななんてない。親父やお袋、妹や幼馴染の初異世界をより良いものにしようとしただけだ


「俺はお前を助けたわけじゃない。俺の両親と妹、幼馴染はこの世界が初の異世界なんだ。ただでさえ異様な光景を見せられたのに人の首を刎ねられるシーンなんて見せられるわけないだろ。お前が助かったのは俺の優しさなんかじゃない。お前が罵った俺の両親と痛めつけようとした妹、幼馴染の為だ」


 勘違いされても困るので俺は狂人に現実を突きつける。俺はお前なんてどうとも思ってない。確かに家族に罵倒され、同級生に大切なものを壊されたというのは少なからず同情する。しかし、一生消えない程度の痛みか傷を与えればいいようなものの、それを殺す事はなかった。


「…………」

「何だ?この期に及んで自分が助けてもらえると思ったのか?」

「…………」


 俺の問いに無言で頷く狂人。つくづく甘い奴だ。


「自分は俺の両親、妹、幼馴染を殺そうとした。だけど、自分はいざとなったら助けてもらえるだなんて上手い話があると思うか?」


 仮にそんな上手い話があったとしてもだ。利用されるだけ利用されて殺されるのがオチだ。結局のところ、コイツに助かる道なんてない。


「…………ねぇよな」

「当たり前だ」


 先程のような殺気は感じられず、生気が抜けたような顔でその場に立っている。自分の影が刺さったままだから座り込めないと言った方が正しいのかもしれない


「それで?俺はこれからどうなるんだよ?」


 本格的に全てを諦めた様子の元・狂人で現・転生者はこれからの処遇を聞いてくる。そんなの俺に聞かれても詳しい事は何も言えない。言えるのは死安さんだけだ


「さあ?俺に聞かれても。知りたいなら爽やかそうな死神に聞いてくれ。俺はあくまでも付き添いだからな」


 神である神子はともかく、死神である死安さんに付き添いが必要なのかと今更になって思う。神子はその場から動けないから俺に使いを頼む。でも、死安さんは自分で異世界に来る事が可能なのにどうして俺を付き添わせるんだ?俺に何か恨みでもあるのか?


「そうかい。ま、両親と姉、妹、同級生を殺せた今となっては俺の命なんてどうでもいいんだけどな」


 目的を果たしたのならさっさと自ら死を選ぶなりなんなりしてほしかった。生き残ったりなんかするから俺の仕事が増えるんだよ……


「狂ってたと思えば今度は投げやりになったか……」


 狂ったり、投げやりになったり忙しい奴だ。さて、そろそろ仕事をしないとな……


「別に投げやりになったりなんかしてないさ。ただ、俺は家族と同級生さえ殺せればそれでよかったんだからな」


 目的は最初から家族と同級生の抹殺でその後で自分がどうなろうとどうでもよかった。そういうわけか……


「あ、そう。それじゃこの世にもう未練なんてないな?」

「ああ」


 この世に未練がないと聞いて安心した。これで心置きなく仕事ができる。しかしだ。家族や幼馴染が見ている手前、どうしたものかというのがある。


「死安さん、コイツの魂だけ昇天させるだなんて事できませんかね?」


 俺はさっきから黙って隣に立っている死安さんに話を振る。コイツを物理的に殺すのではなく、かつて篠崎がやったように魂だけを昇天させる方法がないものかと


「魂だけを昇天させる方法はあるよ」

「じゃあ、それでいきましょう」


 何も命を奪うだけが転生者の抹殺じゃない。個人的な意見にはなるが、魂を昇天させるのも抹殺だ


「まぁ、初異世界である洋平君のご家族と幼馴染の事を考えるとそれがいいのかもしれないね」


 死安さんは俺の提案を受け入れてくれた。確かに世界によっては目の前でグロいシーンを見せられる事だってある。だけど、初異世界だってのにそんなシーンを見せる必要なんてない。これも俺個人の意見になるが、もう少し経験を積んでからでも遅くはないだろう




今回は洋平の父のデビュー戦でした

洋平の父は影を使いましたが、詳しい能力はまた次回

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました

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