お袋が轟音と共に乱入してきたんだが
今回は洋平の母乱入の話です
いくら攻撃しても再生する洋平に助っ人っていりますかね?
では、どうぞ
「何だよ!?何なんだよ!?それ!?」
絶叫にも似た狂人の声が響き渡る。“それ”とは俺の力の事を言っているのだろう。まぁ、コイツは今までこの能力で周囲の人間を片っ端から殺してきたんだ。それも一撃で。それが通用しない相手に出会ったとなると目の前の現象が信じられないのも無理はない
「何ってアンタの能力で俺の左腕は消え去った。でも、俺の身体は再生している。それだけの事だろ?何を驚く事がある?」
「そんな能力聞いた事ねーよ!!」
この世界に来る前に死安さんが超能力メインの世界だと言っていた。コイツのそれも超能力なんだろうけど、何の能力か判らない。空気を利用したものなのか、音を利用したものなのか。あるいはもっと別の何かなのか
「聞いた事なくても実際に存在しているんだから仕方ないだろ?」
狂人と話している間に俺の左腕は再生を終え、元に戻っていた。消された時もそうだけど、再生している途中も特に痛みは感じなかった。これには俺もビックリしている
「ざっけんな!」
そう言って地団駄を踏む狂人はきっと自分の能力を過信していたんだと思う。それ故に俺の左腕から出血がなく、それどころか再生しているという現実が受け入れられないのだろう
「そんな事言っても事実だから仕方ないだろ?何ならもう一度やってみるか?今度はどこを消し飛ばす?頭か?それも、足か?あ、右腕でもいいぞ?どうせどこを消し飛ばしても結果は同じだろうけどな」
俺は自分の力を過信するわけじゃない。しかし、コイツの能力を調べる為にはもう一度能力を使わせる必要がある。その為に煽った。話しているとコイツは挑発に乗りやすい性質みたいだし
「やってやるよ!!今度は右足だ!!いくぞ!!」
先程と同様に狂人は能力を発動させる素振りを全く見せない。だけど、気が付けば俺の右足はなくなっていた。そして、先程と同様に再生を始めている
「ダメだったな。右足もさっきの腕と同様にすぐに再生を始めてるんだけど?」
「なん……だと……?」
左腕同様に消された右足も消されてからすぐに再生を始めている。そして、ほんの僅かな時間で再生が終了していた。コイツの能力は判らなかったけど、俺の身体がどうして僅かな時間で再生しているのかは大筋で理解した。
「やっても無駄だったな。アンタの能力は判らなかったけど、俺の身体がどうして超再生したかは理解できた。礼を言う」
相手の能力が判らないのに自分の身体がどうして超再生するのか理解できるだなんてこれは最高の皮肉になるんじゃないか?
「はっ!自分の身体の超再生する理由が理解できても俺の能力が判らねーなら意味ねーだろ!!」
「普通ならそうだな。だけどな、アンタが俺の身体を消し飛ばしたところですぐに再生するんだ。いくらやっても無駄と言うものじゃないか」
狂人が俺の身体を消し飛ばしたところで俺の身体は超再生する。いくらやっても無駄なのは明確な事実だ。
「ちっ!ふざけんな!俺は最強なんだよ!!神様から能力を貰って最強になったんだよ!!」
力を貰って最強になった……か。力ってのは時として人を狂わせるんだな。俺の世界で言うところの麻薬と一緒じゃないか
「神様から能力を貰って最強になったところでその能力の使い方を間違えている時点でアウトだよ」
「黙れ!!じゃあ、俺がどうしてこんな事したか教えてやるよ!!」
「ああ、是非とも教えてほしいね」
狂人がどうして自分の能力を悪用したかなんて特に興味はない。でも教えてくれると言うのなら教えてもらおうじゃないか
「俺に干渉してきたからだよぉ!!ったく、コッチが何も言わない、抵抗しない事をいいことに俺の周囲の奴は好き放題やり始めやがった!!それが堪らなくウザかったんだよ!!それが理由だよ!!」
コイツの話を要約するとただ周囲の人間がウザかったから殺した。自己中が人を殺す典型的な理由じゃないか
「それで、アンタは満足したのか?」
「ああ!この上なく満足したね!父親は俺を無意味に殴る!母親、妹、姉は俺を無意味に罵倒してばかり!学校の連中は俺が何も言わない事をいい事に俺の所持品を壊したりしたんだ!だから……だから!俺もやってやったんだよぉ!!」
話を聞いてると同情できる部分もある。しかしだ。コイツはやり過ぎた。いくら何でも殺す事はなかった。俺はそう思う。
「父親や母親、妹、姉に関しては俺は何も言えない。だけどな、同級生はものを壊しただけだろ?こう言っちゃなんだが、ものってのは別のものに代用が利く。利かないものもあるだろうけどな。でも、アンタはものを壊した同級生の命を奪ったんだ!命はものと違って代用何てできないんだよ!」
「黙れ……黙れよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!お前に俺の何が解る!どうして俺が親父に殴られなきゃいけない!どうして俺が母から!妹から!姉から!罵倒されなきゃいけない!どうして俺の大切な人の写真を破られなきゃいけない!!答えろ……答えてみろよぉぉぉぉぉぉ!!」
狂人が雄叫びを上げると周囲の木々は折れ、周辺住宅の窓ガラスは一斉に割れた。そうか、コイツの能力は音か!でも、どうして音で人が破裂するんだ?って、今はそんな事を言っている場合じゃない!このままコイツに叫ばれ続けたらヤバイ……何とかしないと!
「うっさい!!」
「ぐはっ!」
「は?」
叫んでいる狂人を何とかしないとと思っていたところに我が母親が耳をつんざくような轟音と共に狂人を殴り飛ばした。その前になんか光ったな
「さっきから騒がしいと思って来てみれば、アタシの息子に何してんだ?あ?」
俺は今、信じられない光景を目にしている。いつもは俺をからかってきたりするような母親。そんな母の口調は荒く、殴り飛ばされた狂人の胸倉を掴み、ガンを飛ばしている。どうなってんの?
「よ、洋平、一応、聞くが、平気か?」
遅れて親父が茉央、美緒、死安さんを連れてやってきた。息を切らしていないところを見ると俺の為に駆け付けたわけではないみたいだ
「ああ。俺は何ともないんだけど、お袋の豹変ぶりがヤバイ」
俺はいくら攻撃を受けても再生するから平気だ。それよりもお袋の豹変ぶりがヤバイ
「あー、母さんって元暴走族だから仕方ないな」
何が仕方ないのか全く理解できない。って言うか、お袋が元暴走族だっただなんて初耳なんだけど?
「お袋が元暴走族だったって俺は初耳なんですけど?え?茉央と美緒は驚いてないみたいだけど、知ってたの?」
「「もちろん!」」
なんてこった……。お袋が元暴走族だったって事を知らなかったのは俺だけだったみたいだ。いや!待て!まだ死安さんがいる!
「親父や茉央と美緒はともかく、死安さんは知りませんでしたよね?」
頼む!そうだと言ってくれ!死安さん!いくら神でも知らなかった。そう言ってくれ!
「いや、知ってたよ?神なんだから当たり前でしょ?」
この場にいる連中の中でお袋が元暴走族だった事を知らなかったのが俺だけになった瞬間だった。神子は人間の過去を知っていても不思議じゃないと思うけど、死安さんが知っていた事は驚きだった
「お袋が元暴走族だった事や俺だけその過去を知らなかったのはこの際どうでもいいです。それで、お袋には何の力を与えたんですか?死安さん」
お袋が狂人に近づいている事に気が付かなかった。光が見えて耳をつんざかんばかりの轟音は聞こえたが
「ん?君のお母さんは雷を司る力だよ?それがどうかしたの?」
「い、いえ、何でもありません……」
何でもないように答える死安さんと冷や汗が止まらない俺。お袋と異世界に来る事は多分ないと思うけど、雷関係の力を持つ人は速いって相場が決まっている。バトル系のマンガとかじゃお約束だ
「ふざけんなぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
俺と死安さんが話をしているところに響く狂人の雄叫び。話に夢中で忘れていたけど、お袋が戦ってる最中じゃなかったか?
「マジかよ……。お袋が戦っている最中じゃなかったのかよ……」
死神とはいえ神様から力を貰ったお袋が簡単に負けるとは思っていない。しかし、狂人は傷一つ負ってない。
「はぁはぁ、攻撃が全く当たらない……」
狂人の後ろで息を切らせているお袋。額からは汗が滲んでいるが、こちらも傷一つ負ってない
「ババア!調子こいてんじゃねーぞ!!テメェの攻撃なんて当たるかよ!!」
雷を司る力を得たお袋からどうやって傷一つ負わずに逃げおおせたんだ?
「母さん!選手交代だ!」
俺の疑問を余所に親父がお袋に交代宣言をする。親父も死安さんから力を貰っているみたいだし、どんな力かは知らないけど、心配はなさそうだ
「そ、そうね、お父さん、あ、後はよろしく……」
そう言ってお袋はヨロヨロと俺達の元へと戻って来ようとした。しかし────────────
「させっかよ!!」
そうはさせまいと狂人はお袋に攻撃を放つ。傷一つ負ってないとはいえ、疲れている人間に攻撃するかよ!?
「お袋!!危ねぇ!!」
「お母さん!」
「おばさん!!」
俺、茉央、美緒は危機を知らせる為、力の限り叫んだ。いくら力を貰ったとはいえ、俺の身体を一瞬で消し飛ばした奴だ。万全の状態じゃない今のお袋じゃすぐに殺される!!
「え……?」
疲れのせいもあってか、お袋は気が付くのが遅れたみたいだ。
「自分の女に言いたかねーが、いい年なんだか無理すんな」
お袋に攻撃が迫ったその時、お袋の身体は何かに包まれ、そして────────────
「は?え?どうなってるの?」
俺達の元へ一瞬で移動していた
「どうなってるも何も俺がお前を移動させたんだよ」
そう言った親父の顔は俺をからかっている時のものじゃなく、真剣な場面で見せるものだった
「親父……今のはどうやって……」
「それは見てからのお楽しみだ」
親父は一言だけ言い残し、狂人の元へ行ってしまった
「死安さん、今のって……」
親父は見てからのお楽しみだと言ったので代わりに死安さんに聞くとしよう
「洋平君、君のお父さんも言ってたでしょ?見てからのお楽しみだよ」
聞いてもはぐらかされてしまった。しかし、そう言う死安さんの表情はどこか楽しそうだった
今回は洋平の母乱入の話でした
いくら攻撃しても再生する洋平にとっては助っ人なんていらないような気もしました。
今回もは後まで読んでいただきありがとうございました




