俺の家族と幼馴染が死をアッサリ受け入れたんだが
今回は洋平の家族と幼馴染が自分の死をアッサリ受け入れた話です
自分の死をアッサリ受け入れたからと言って天国に行くか、異世界転生かを選ぶのは別の話です
では、どうぞ
異世界転生ものの小説で必ずと言っていいほどあるのが神様に死んだ事を告げられ、異世界に転生するっていう展開だ。まぁ、異世界転生ものでも神様が登場しない場合もあるだろうけど、今は神様が登場するかどうかの問題ではない。もちろん、異世界に行く以外の仕事が初めてだとかそんな問題でもない。問題なのはどうして俺の家族と幼馴染がどうして死んだのかだ
「なぁ、神子。俺に関する記憶が戻っているのはこの際いいとして、家族と幼馴染はどうして死んだんだ?」
不謹慎だが、家族だけが死んだなら納得がいく。強盗に襲われたとか、旅行中に何等かの事件か事故に巻き込まれたからとかいろいろな理由があるからな。だけど、家族と幼馴染という妙な組み合わせは妙だ。
「洋平のご家族と幼馴染ちゃんは死んだ日に洋平の家で一緒にお夕飯を食べていたみたいなんだけど、そこに運悪く放火犯に洋平の家を放火されて全員逃げ遅れて死んだんだよ……」
「そっか」
「怒らないの?」
神子の表情はまるで親の大事なものを壊してしまった子供のそれだ。しかし、俺が怒る理由がどこにもない。いや、怒れるはずがない。
「どうして俺が神子に怒らなきゃいけなんだよ。悪いのは放火犯であって神子じゃない。それに、神子は神様なら人間の寿命や誰がいつ、どうやって死ぬかっていうのはある程度ならわかるんじゃないのか?」
俺の死もそうだけど、神子は人間がいつ、どうやって死ぬのかを知っている。何となくそんな気がした
「そ、それは……」
俺の指摘にどこか言いづらそうな神子。この様子だと知っているみたいだ。誰がいつ、どうやって死ぬかをな。
「あー、別に答えなくていい。その反応を見て何となく理解した」
「ありがとう……」
「誰がいつ、どこで死ぬかはともかく、死ぬ場所までは知らないよな?」
「………………知ってます」
「…………」
死ぬ場所まで知っているとはさすが神様。またも気まずそうな顔をしている。こりゃ話題を変えないといけないか
「まぁ、暗い話はこれくらいにして、どうやって暇を潰すかを考えるか」
「うん……」
「気にするなとは言わないけど、生き物は生まれた以上、いずれは死ぬんだ。俺の家族や幼馴染が今、ここにいるようにな。死因から死ぬ場所まで知っている神子を俺は責めない」
「うん……」
俺は神子をそっと抱きしめ、頭を撫でる。これで神子の気が楽になるとは思えないけど、何もしないよりはマシだ。
「「「…………」」」
「なぁ、神子?」
「何?洋平?」
「何か視線感じないか?」
「うん。感じる」
抱き合ってた俺と神子は視線を感じていた。死安さんも時々いきなり現れる事がある。しかし、それは仕事があるからであって俺と神子の仲を冷やかしに来る事は……ないとは言い切れない
「とりあえず、離れるか」
「うん……」
視線を感じた俺と神子はとりあえず離れる事にした。
「面白くないぞぉぉぉぉ!!我が息子と謎の美少女のイチャイチャがこれで終わるだなんてぇぇぇぇ!!」
「そうだよ!お兄ちゃん!そこでブチュっとキスの一つでもしてよ!!」
「そうよ!洋平!息子がヘタレで母は情けないわ!!」
「洋平……情けなさすぎ」
俺と神子のやり取りを面白がって見ているのが親父でキスを要求してくるのが妹の茉央、そして、俺の羞恥心を全く考えてないのがお袋。俺に対して辛辣な意見を言ってくるのが幼馴染の美緒。いつの間に目覚めたんだ
「アンタ等、相変わらずだな……いつ目覚めたんだ?」
「「「「さっき!!」」」」
「さいですか……」
俺の家族と幼馴染は死んでも変わらない。人間簡単に変わったら苦労はしないか。それよりも神子の様子は……
「……………………」
ダメだ……神子は完全にフリーズしている。
「はぁ……神子がフリーズからいつ戻ってくるかわからん以上、俺が状況を説明するしかないのか……」
神様である神子がフリーズしている以上、俺が家族と幼馴染に現状を説明するの面倒なんだけど……
「洋平!この父にもっとイチャイチャシーンを見せなさい!!」
「そうだよ!お兄ちゃん!妹は兄の恋愛を見届ける義務があるんだよ!!」
「母にもあるわよ?」
「幼馴染にもね」
こ、コイツらぁ……!!いきなり知らない部屋にいて何も思わないのか!?って言うか、人の恋愛にとやかく言うなよ!!
「うるせぇぇぇぇぇ!アンタら!自分がどうしてこの部屋にいるのかって思わないのか!?俺の家族と幼馴染はここまでアホなのか!?」
俺は自分の家族と幼馴染のアホさ加減に頭が痛い……
「「「「あっ、そういえば……」」」」
「そういえばってアンタらな……」
俺は異世界転生を拒否した事は後悔してないし、自分に近しい人間の記憶を消した事も後悔はしていない。しかし、今更ながら俺は『記憶を消すのは学校の連中だけで家族や幼馴染の記憶は消さなくてもいいんじゃないか?』と思う。
「だってなぁ?」
「「「うん」」」
「自分が死んだと言われても実感ないし」
「「「だよね~」」」
親父の言葉に同意しているお袋達からは危機感が全く感じられない。普通死んだと聞かされたら少しばかり動揺したり危機感を持ってもいいものだと思うんだけど?
「はぁ……危機感がないのは一先ず置いといて、アンタらが今、どういう状況か説明だけしていいか?」
「「「「どうぞどうぞ」」」」
ダメだ……小説みたいに上手く事が進まない……シリアス?そんなの微塵もねーよ!あるのギャグみたいな雰囲気だけだよ!
「アンタらは残念な事に死んでこの神の部屋に来た。ザックリと説明するとこんな感じなんだけど、納得できたか?」
俺の雑な説明で納得してくれたらいいんだけど、いきなり死にましたとか言われても納得できるはずが─────────
「「「「OK、理解した!」」」」
あったよ……俺だって最初に死んだと聞かされた時は喚き散らしたのに
「り、理解が早くて助かる。それでだ、アンタらは天国に行って生まれ変わるのを待つか異世界転生のどちらか一つを選ばなきゃいけないんだけど、どっちにする?」
俺が死んだときは異世界転生一択だったけど、親父達や幼馴染には天国に行くか異世界転生かを選ばせてやろう
「どっちにするって言われてもなぁ……」
親父は顎に手を当てて考え込んでいる。当たり前の事なんだけど、あなた達は死にました。天国に行くか異世界転生の二択を選択しろといきなり言われても困るのが普通だ。自分達の死に実感がなく、場所が場所なだけに信憑性に欠けるが、天国行きか異世界転生の二択を出されてようやく自分が死んだ事を実感するか……
「まぁ、いきなり言われても困るだろうからゆっくり選ぶといい。その間に俺は神様を元に戻しておくから」
一人ならパッと決められるけど、家族と他所の家の子がいるとなるとそうもいかないと思い、俺は話し合いの時間を与える。何事にも話し合いは必要だ
「洋平、ちょっといい?」
話し合いをするのかと思っていたところにお袋から声が掛かった。まさか、今になって元の世界に生き返らせろとか言わないよな?
「何だ?お袋?」
「私達が死んだって事はいいとして、私達死者は天国に行くか、異世界転生するかのどちらかから選ばなきゃいけないのよね?」
「そうだけど、それがどうかしたのか?」
「もしそうだとしたら洋平はどうしてここにいるのかしら?」
お袋、なかなかに痛いところを突いてくるな。俺がここにいる理由を話してもいいけど、その話をするなら俺の死因から話さなきゃいけなくなるし、それに、俺が今までしてきた事についても話さなければならない
「その理由を説明するには俺の死因と今まで俺がしてきた事を話さなければならないし、少し長くなるぞ?」
俺の今までしてきた事の中には転生者を殺したという事も含まれている。そして、俺は家族を始めとする俺に関係した人間全ての記憶から俺の記憶を消すように言った事もだ
「俺は洋平の死因や今まで何をしてきたかを聞いても怒りはしない。もちろん、母さんや妹の茉央、幼馴染の美緒ちゃんだってそうだ。だから、お前が死んだ後、何があったかを全て話せ」
親父もお袋も茉央も美緒も真顔で俺を見つめてくる。いつもはふざけてるクセにこういう時だけ真面目になるんだな
「話すのはいいけど、神様を責めないと約束してくれ」
「「「「わかった!!」」」」
「ありがとな!じゃあ、まず、俺の死因からだけど───────」
俺は神子に酒瓶を当てられて死んだ事、その後で転生者に大剣を届けに行った事を始めとする異世界への届け物をした事、悪さした転生者に制裁を加えに行った事を話した。最初は『コイツ、何言ってんだ?』って顔されたけど、最終的には全て信じてくれた。証拠もないのに
「なるほどな。洋平がここにいる理由は解った。解った上で俺個人の選択を言っていいか?」
「ああ。天国にしろ異世界転生にしろ送るのは俺じゃないけどな」
天国に行くにしろ異世界転生をするにしろ親父達には幸せになってほしいと思う。どっちを選択するかは親父達次第だけどな
「俺個人の選択になるが、俺は天国に行く気も異世界転生する気もない」
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
俺も天国に行く事も異世界転生する事も拒否した。自分も同じ選択をしたとはいえ、第三者から天国に行く気も異世界転生をする気もないって言われたらこんなに驚くものだとは思わなかった
「お兄ちゃん、何そんなに驚いてるの?自分だってどっちも拒否したのに」
茉央ちゃん?自分もした選択だけど、第三者に言われたら驚くものは驚くんだよ
「俺も親父と同じ事を言ったから強くは言えないけど、第三者から言われると驚くんだよ」
「ふ~ん……お兄ちゃんさ~」
「何だよ?」
「本当は神様と一緒にいたくて天国も異世界転生も拒否したんじゃないの~?」
目を細めて俺を見つめる茉央は意地悪な笑みを浮かべている。天国行きか異世界転生を選択した時にはまだ俺は神子と付き合ってすらいなかったんだ。そんな状態の俺が一緒にいたいという理由だけでどっちも拒否するわけないだろ
「今でこそ俺は神様と付き合っているけど、天国行きか異世界転生かの選択を迫られた時はまだ恋人でも何でもなかったんだ。一緒にいたいって理由だけで両方拒否するわけないだろ?」
「ふぅ~ん、それならいいんだけど」
俺を見る茉央の目は完全に信用したわけではなく、この場は一応、信じたフリをしておこうという感じだ。俺としても信用されているかどうかは別として、深く聞かないでくれるのは有難い
「俺の事より、親父達は全員、天国にも異世界にも行かないっていう選択でいいのか?」
「「「うん!」」」
「おう!」
俺の家族と幼馴染がよりにもよって自分と同じ選択をする。心のどこかで解っていたのかもしれない。しかし、それはないとも心のどこかで思っていたのかもしれない。
今回は洋平の家族と幼馴染が自分の死をアッサリ受け入れた話でした
自分の死をアッサリ受け入れたからと言って天国に行くか、異世界転生を選ぶのかは別の話です
感想等があれば気軽に感想欄へ書いていただけると嬉しいです!
感想を書くついでに評価して頂けると作者のモチベーション向上になるので宜しくお願いします
今回は最後まで読んで頂きありがとうございました!




