届け物を届けに行っただけなのに悩み相談を聞くハメになったんだが
今回は悩み相談と洋平の思う事です
ヒーローに転生した人はそれなりに悩みがあるようです
では、どうぞ
この特撮ドラマの世界に来て改めて思う。届け物を届けに来ただけなのにどうして仕事が増えるのだろうかと。現に俺は懐中時計を渡したにも関わらず、呼びとめられてしまった。これ以上俺に労働を強いるのなら残業代請求するぞ?それはさておき、話くらい聞いて帰るか
「何?俺は届け物をしたから帰りたいんだけど?」
「神様の使いなら転生者の悩みくらい聞いてくれないんですか?」
「いや、俺は届け物を届けに来ただけであって悩みを聞いて来いとか言われてないんだけど」
俺は届け物を届けに来ただけで悩みを聞くつもりはない。それこそ悩んでいる事があるのなら俺じゃなくてこの世界でできた仲間にでも言えばいい。どうして俺なんだ?
「貴方は言われた仕事しかしないんですか?悩みくらい聞いてくれてもいいじゃないですか!」
今までの異世界人や転生者にも悩みや不安、苦しみがあったと思う。大剣を届けた勇者にも、ハーレムで悩む少年にも、篠崎にも、詩央君にも悩みや不安、苦しみがあっただろうけど、それを自分の力や仲間の力を借りて乗り越えてきたと思う。だけど、目の前にいるこの少年はただの甘ったれだ
「はぁ~、わかったよ。悩みくらい聞いてやるから」
俺はごねられても困るので悩みくらい聞いてやろうと思う。はぁ……
「最初からそう言えばいいんですよかったんですよ!」
相談している身のクセして態度デカいなぁ~
「はいはい、悩み聞いてやるからさっさと話せ」
コイツは生前にどんな連中と過ごし、どんな生活を送れば相談する立場でこんなにデカい態度をとれるんだ?
「わかりました。それで、悩みなんですが、俺、不安なんです」
「何がだ?」
「これからも敵は現れるだろうけど、本当に勝てるのかって……」
「そうか。それで?」
「それで、俺、もう戦うの止めようかなって思うんですけど、どう思いますか?」
どう思うか聞かれても困る。戦うか、逃げるかを決めるのは俺じゃなく、戦う本人だ。
「どう思うか聞かれても困る。最終的に判断するのは俺じゃないし」
「そんな無責任な……」
無責任とか言われても俺は戦う事に対してこだわりを持っているわけじゃない。それに、戦いアリの世界に転生したいと言ったのは自分でしょ?
「無責任と言われても戦うか逃げるかを決めるのは俺じゃなく君だ。俺は必要なものを届けに来ただけ」
神子の使いという立場で言うなら俺はどんな世界でも必要なものを届けに行ったり、必要な助言をしに行くだけで転生者の在り方を決める事はしない。決めるのは結局自分だから
「それじゃあ……それじゃあ!俺はどうしたらいいんですか!」
少年は逆切れとも取れる理不尽な怒りを俺にぶつけてきた。それに対し、俺も怒鳴って返そうかとも思ったけど、そんな事はしない。したところで意味はない
「知るか。そもそも、どうして君は戦いがあるこの世界に転生したんだ?」
今まで関わってきた転生者には聞かなかった事。どうしてこの世界に転生したのかを聞いてみた。
「だ、だって、人々を守るヒーローってカッコいいじゃないですか!女の子からモテるじゃないですか!だからですよ!」
あ、アホくせぇ……カッコいいとか、女の子からモテたいならラブコメがある世界に転生しろよ
「…………」
「どうしました?急に黙って」
あまりのアホ臭さに言葉が出ない俺を不思議そうに見る少年。お前のアホみたいな理由に飽きれてるんだよ
「いや、あまりにアホ臭くてどうしたものかと思って」
「アホ臭い!?どこがアホ臭いんですか!!」
「いや、全てが」
空想とはいえ、ヒーロー達はそれぞれ苦悩し、時には心折れそうになりながらも必死でもがいていた。だけど、この少年からはその必死さとか、苦悩が感じられない
「全てって俺は今まで必死で戦ってきたんだ!それのどこかアホ臭いんですか!!」
「いや全てって言ったじゃん。転生した理由もそうだけど、必死に戦ったって言ってるけど、それを決めるのは君じゃない。周囲の人間だよ」
必死で戦ってきたという事を決めるのはこの少年じゃない。周囲の人間だ。その時点でコイツはヒーローとしては甘いと思う
「…………」
さっきは俺が黙り込んでしまったけど、今度は少年が黙ってしまった。
「黙ってしまったところ申し訳ないけど、君は今まで挫折した事ある?」
「挫折……ですか?」
「うん。今まで話している感じを見てると君は挫折を味わった事がなさそうだし、自分の相談は聞いてもらって当たり前みたいなところがあったんだけど?」
「お、俺は……」
「うん」
「挫折した事ないです……今まで大きな失敗なんてした事ないですし、自慢じゃないですけど、生前の俺は金持ちの家の子でしたから自分の言う事を聞いてもらって当たり前でした」
少年の生前の話を聞いて納得がいった。甘ったれた考えや相談する立場なのに態度がデカい理由にもね
「そうかい。じゃあ、この世界でそれを体験するといい。相談に乗ってあげられなくて申し訳ないけど、今の君には挫折が必要だと俺は思うし、戦うか逃げるかは自分で選択して」
この少年には挫折する事が今は必要だと思う。相談に乗るのが面倒だとかそう言う事じゃない
「わかりました……」
この少年がこれからどうするかは知らない。だけど、挫折を味わって今よりも成長してくれればいいと俺は思う
「そう。じゃあ、俺は帰るけど、どうするかは自分で決めなよ。それでも決まらなかったら仲間を頼ればいい」
「はい!」
「じゃあね」
「はい!ありがとうございました!」
俺は今度こそ神子の部屋に繋がる扉を出現させて潜った。少年の先行きが心配ではあるけど、間違った時や挫けそうになった時は仲間が助けてくれるだろう
「届け物を届けに行っただけなのにドッと疲れた……」
「お疲れ、洋平」
「ああ、疲れた」
神子の部屋に帰って来て開口一番に『疲れた』という言葉が出てくるのはどうかと思う。しかし、異世界単位で物事を考えてるから規模がデカくなるけど、これが俺の世界で考える宅配便の人を長時間拘束して悩み相談してるようなものだぞ……
「本当にお疲れみたいだけど、洋平の苦労は無駄じゃなかったみたいだよ?ほら」
神子はテレビを点け、少年の転生した世界にチャンネルを合わせた。そこには少年が敵に勇敢に立ち向かう姿が映し出されていた
「あの甘ったれ少年が勇敢に敵に立ち向かってるなんて……成長したんだな」
「人間は成長するんだよ」
神子、今の言葉は俺が言う言葉であって神様である神子がそれを言っていいものなのかな?
「そうだな。人は成長する生き物だよな」
あまりの疲労感でまともにリアクションするのも億劫になっている。甘ったれが成長してくれるのは嬉しい事なんだけど、それ以上に俺は疲れた
「うん。あ、成長で思い出したけど、洋平は今まで異世界に届け物を届けに行ったり、暴走を止めに行ったりといろいろしたと思うけど、自分の中で成長したなと思うところってある?」
「俺の成長したと思うところか……」
俺は届け物を届けに行ったり、暴走を止めに行ったりと異世界でいろいろした。その中で成長した事か……
「うん、何かある?」
「そうだなぁ……俺は異世界に行ってどんなにチート能力を持っていようと弱点はあるって事を知ったし、世の男性の夢であるハーレムを実現したとしても、そこには絶対に悩みがある。何だかんだでない時は喉から手が出る程欲しいけど、あるならあるなりの苦労を知ったところは俺、自分で成長したと思う」
「そっか」
神子はどこか悟ったような笑顔を浮かべていたけど、俺が成長したと思うところをどうしてこのタイミングで聞いてきたんだろう?俺が今まで行った世界は魔法メインの世界が二つ、転生者はいなかったけど、異世界人が力を得た世界が一つ、カードゲームメインの世界が一つ、そして、今回行った特撮ヒーローの世界が一つ。死安さんと行った世界を除けば四つか……
「悟ったような顔してるけど、神子は俺に行ってほしい世界でもあるのか?」
「ないよ?ただ、神である私の使いとしていろんな世界に行った洋平はどこか成長したのかなと思って聞いただけ」
「そうだったのか。俺はてっきりまた異世界に行かされるんだと思ったぞ」
「そんな事しないよ~理由もないのに洋平を異世界に行かせるわけないじゃん。二人きりの時間減るし」
神様が私情を出していいのかと聞きたいところだけど、可愛い彼女の私情だし大目に見よう
「そうかい。ま、俺は異世界で厄介な事がないのであればそれでいいけどな」
「私だってそうだよ!異世界の人が自分で解決できるのならそれに越した事はないよ!」
神子も神様として異世界人が困難を自分で解決してくれるのを望んでいる。それが転生者であっても同じ事だ
「そうだな。俺が届け物をしない事が一番いい事だな」
「うん!」
転生者に限って言えば強敵や解決不可能な状況であっても自分で乗り越えられればいい。ただ、それだけなんだけど、なかなか上手くいかないのが現実だ
「自分で乗り越えてほしいものだけど、それが簡単に出来れば苦労しないか……」
自分で乗り越えられたらなんていうのは言う程簡単じゃない。しかし、上手くいかないのが現実だ。それを考えると異世界転生も大変だ
今回は悩み相談と洋平の思う事でした
今回の転生者は他の転生者とは違い少し甘ったれにしてみました。
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