届け物を届けたら仕事が増えたんだが
今回は届け物を届けたら仕事が増えた話です
洋平は一体、何に興味があるんでしょうか?
では、どうぞ
子供の頃に遊んだオモチャってのは何だかんだでガタがきているものだ。例えば、飛行機のオモチャなんかだと欠けている部分があったりする。後は電池の液漏れとかもある。それに、音割れとかな。それはともかくとして、死安さんと共に神子の部屋に戻ってきた俺はいろんな意味で非常に困っていた
「死安さん、これは酷いと思うんですけど……」
俺の目の前に置かれたパワーアップアイテム。いや、これは……なんだろう?そもそも、俺は小学校三年くらいから特撮を見なくなった。つまり、俺は死安さんが買ってきたものを実際に見せられても何かわからない。わかる事が一つだけあるとしたら、今、俺の目の前にある物は焦げた跡ではなく、おそらくだけど、電池の液漏れによる変色だと思うけど、元の灰色にかなり黒が侵食している状態だった
「僕も酷いとは思ったんだけど、これしかなくてさ……」
「はぁ……そうですか。それにしても酷いなぁ……これ、一回テストしていいですか?」
いくら特撮関係に詳しくはないとはいえ、電池の液漏れによる変色や現段階では特に何もしてないから何とも言えないけど、おそらく、ボタンの何個かはいかれてるであろう事は俺でも理解できる
「いいけど、洋平君、こういうの直せるの?」
「まぁ、一応は」
神様パワーがそこに注入されるだろうから俺が無理に直す必要なんてないんじゃないか?まぁ、分解してはみるけどね
「洋平って機械いじりとか好きだったっけ?」
先程までキッチンにいた神子が戻ってきて俺達の話に入ってきた。
「いや、機械いじりは別に好きじゃないけど、壊れたオモチャを自分が遊んで楽しいレベルには直せる」
今、ここでこのなんだかよくわからないものを直してもいいんだけど、道具がないし、神子の力で綺麗になったりするんだ。わざわざ俺が手間をかける必要はないだろう
「ほえ~、そうなんだ……」
感心した様子の神子。そんな事は今は置いといて、俺はこれが何かがサッパリわからないんだけど……
「感心しているところ悪いけど、そろそろ買ったものの説明と俺が行く世界の説明だけしてもらっていいでしょうか?」
俺が器用か不器用かなんて今はどうでもいい。しかし、俺がこれから行く世界がどんな世界なのか、それをまだ知らない。ヒーローの苦悩なんて俺が知る由もないけど、せめて世界観だけでも知りたいところだ
「洋平がこれから行くのは変身特撮ヒーロー『マスクヒーロー・タイム』の世界だよ」
『マスクヒーロー・タイム』か……なんか安直な名前だとは思うけど、子供向け番組だから番組名は覚えやすい方がいいか。
「名前について深く触れない事にして、その世界はどんな世界なんだ?」
名前について突っ込んでたら日が暮れるからスル―するとして、今回はいろいろな意味で気合を入れないといけないな
「その世界では未来から来た主人公が過去に行って『スモーク』と呼ばれる怪人を倒しいくんだよ」
物語の概要は理解した。うん、変身特撮ヒーローなら怪人を倒すのは当たり前っちゃ当たり前だ。
「概要は理解したけど、その目覚まし時計を小さくしたようなものは何だ?」
変身アイテムが何かも知らないのにいきなり目覚まし時計を小さくしたようなものを見せられても困る
「死安……これ、何?」
「さぁ?僕も『マスクヒーロー・タイム』の世界に行くって言うのは知ってたし、リサイクルショップでそれの最終フォームになるオモチャをくださいって店員さんに言って買っただけだからよく知らないよ」
「「「…………」」」
この場にいる全員がこの目覚まし時計を小さくしたようなものが何かを知らないというのは問題あるんじゃないのか?なんて思いつつ、見た目からして音声がまともに鳴るとは思えない目の前のものをどうしようかを考える。
「神子と死安さんが知らないのはいいとして、これ、まともに音声が鳴るとは思えないんですが……?」
言っておくけど、直せと言われても俺は直せないぞ?俺の友達はよくこういうオモチャを買ってきてはバラして直してたけど
「それは大丈夫だよ。洋平が転生者に届けに行く前に私の力を注いでその世界に順応させるから!」
それなら安心だ。分解して直す必要もないし
「それなら安心だけど、『マスクヒーロー・タイム』って何を使って変身するんだ?」
そもそもの話、このヒーローの変身道具って何かを俺は知らない
「あれ?洋平君は知らなかったの?」
意外そうな顔で俺を見る死安さん。何で知ってると思ったの?
「ええ、俺は特撮ヒーローにこれといった興味はありませんでしたから」
高校生で特撮ヒーローを見てる奴なんて余程好きじゃない限りはいないだろう
「このヒーローは懐中時計で変身するんだよ」
懐中時計とはこれまたレトロだな。って事はこの目覚まし時計は開くのかな?
「それならこの目覚まし時計って……」
「うん、形だけで本当は懐中時計だよ」
マジでか……いや、別にいいんだけどね?
「はぁ……」
誰が悪いでもなく、溜息しか出ない俺。もうどうにでもなれ
「変身ポーズ見せようか?」
死安さんは余計とも言える気遣いをしてくれるが、俺はただ、届け物を届けるだけなのでそんな気遣いは無用だ
「いや、いいです。俺はこの懐中時計を届けるだけなので」
「そう……」
死安さん?どうしてそんなに残念そうにしているんでしょうか?そんなに変身ポーズ見せたかったんですか?
「洋平!できたよ!はい!」
神子がいつの間にか見た目が目覚まし時計の懐中時計を直して俺に差し出してきた
「あ、ああ、じゃあ、行ってくる」
神子から懐中時計を受け取り立ち上がる。俺はどうして変身ツールが懐中時計なのかとかのツッコミを放棄し、転生者の元へと向かう。番組の題名や変身ツールについてのツッコミはナシだ。俺はただ、アイテムを届けるだけなので細かいことは気にしない。特に興味もないしな
「俺はどうしたらいいんだ……」
転生者っぽい少年がいる河川敷。着いて早々、苦悩しているみたいだけど……なんて言うか、声掛けづらいな
「着いて早々ですか……」
少年の後ろ姿を見て思うのは死んで特撮ヒーローの世界に安易な気持ちで転生し、敵を倒してきた。しかし、今までは順調に敵を倒してきたはいいけど、強敵が現れて倒せなくて挫折した。こんなところだろうな
「こんな事なら安易な気持ちで『マスクヒーロー』の世界に転生なんかしなければよかった……」
転生した後で後悔しているみたいだけど、そもそも異世界転生すら拒否した俺にあの少年に対して何を言う?『甘ったれるな!!』って説教すればいいのか?それとも、『そうだな、君は転生する世界を間違えた』とでも言えばいいのか?
「あー、悩んでるところ悪いけど、届け物いいかな?」
俺は一人悩んでいる少年に声を掛ける。俺の仕事は届け物を届けるだけで少年の悩みを聞く事じゃない
「あ、貴方は?」
「俺は白石洋平。神の使いだよ」
「神様の使い?怪しい……」
ですよね~、知ってた!今までの転生者や異世界人だって簡単に信じる人と信じない人いたもん!
「だよなぁ……簡単に信じるはずないよな」
「はい……貴方は俺と逆の立場なら信じるんですか?」
「は?信じるわけないじゃん」
俺だっていきなり声掛けられただけでも怪しいと思うし、そんな怪しい奴がいきなり自分は神の使いだとか名乗ったら疑いたくなる。まぁ、俺が転生者の立場だったらの話だ
「自分で信じられないのに他人に信じろって言うんですか?」
少年の言ってる事はものすごく正しい
「じゃあ、何か証拠かそれに準ずるものがあれば信じるかな?」
「それはまぁ、信じますけど……」
コイツも転生者なら神子の部屋がかつてどうだったか知ってるはずだ。こういう時だけは神子の部屋が汚かった事に感謝する。
「それじゃ遠慮なく言うけど、君が転生する時に神様の部屋からこの世界に来たと思うけど、その神様の部屋って汚くなかっただろ」
「はい!汚かったです!でも、それが証拠にはなりませんよ?」
神子の部屋が汚いのは証拠にならないか……
「そうだな。神様がエプロンしていてパッと見は家事全般が得意そうに見える女性だっていうのは証拠にならないよなぁ……」
神子は恰好だけ見ればパッと見で家事全般が得意そうな女性に見える。しかし、その実態は部屋の汚いだらしない女だ
「いえ、そこまで言われれば信じますよ」
先程とは打って変わって俺を信じる少年。悪口を言っただけで信じてくれるだなんて神子が哀れになってきた
「そ、そうか……ま、まぁ、信じてくれるならいい。俺は君に届け物を届けに来ただけだし」
俺はいつもそうだけど、異世界に届け物をするだけでその世界に転生した人間と深く関わる気はない。届けものをしたらさっさと帰りたい。必要とあれば話をする。ただ、それだけだ
「そうですか……それで、その届け物とは?」
「これだ。この懐中時計で君は更なる力を手にする事ができる」
俺は懐から取り出した懐中時計を見せる
「それは?」
「俺も詳しくは知らないけど、パワーアップアイテムらしい。君が変身する『マスクヒーロー・タイム』のね」
「これが……」
「ああ」
「そういう事なら有難く受け取っておきます」
俺は少年に懐中時計を手渡した。これで俺の仕事は終わりだ。早く帰ってゆっくりしたい
「それじゃ届け物を届けたし俺は帰るわ」
俺は神子の部屋へ繋がる扉を出そうとした。しかし───────────
「待ってください!!」
少年に呼び止められた。アイテムを渡して終わりかと思ったけど、この世界でも無駄に仕事をさせられそうだ
今回は届け物を届けたら仕事が増えた話でした
洋平の趣味って一体なんだろうと思い始めた今日この頃。カードゲームでも、特撮ヒーローのグッヅを集める事でもないなら何?
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