久々に転生者とまともに話した気がするんだが
今回は異世界に行って帰ってくるまでです
さて、カードゲームメインの世界で何を話すんでしょうか?
では、どうぞ
「詩央ッ!」
「詩音姉さんッ!」
俺が見ているのもお構いなしでヒシっと抱き合う。この二人は人目を憚るという事を知らないのか?
「あー、『音痴ゴリラ』のカードを返してさっさと帰っていいかな?」
誰に問いかけるわけでもなく、俺は一人呟く。この二人は血の繋がった姉弟なのか、それとも、義理の姉弟なのか……少年が転生する時にどんな環境下で転生するように神子に頼んだのかよくわからないから何も言えない。一つ言える事はお願いだから俺を忘れてイチャつかないで!って事だ
「詩央……」
「姉さん……」
俺が考え事している間に少年達は見つめ合い、キスする寸前になっていた
「あのーお二人さん?俺がいる事を忘れちゃいませんよね?」
「「─────!?」」
心底驚いたような顔の少年達。完全に俺の事を忘れてましたね
「お前ら俺の事を完全に忘れてたな?」
「「……………はい」」
「俺は詩央君にさっさと『音痴ゴリラ』のカードを返して帰りたいんだけど?」
「「ごめんなさい」」
俺は謝れとは一言も言ってない。
「俺は謝れって一言も言ってないんだけど……まぁ、いいや。少し聞きたい事もあるし」
「「聞きたい事?」」
俺の言葉を二人で反復するなんて本当に仲良いな
「ああ、詩央君と詩音さんは実の姉弟なのか?それとも、義理の姉弟なのか?」
姉と弟、兄と妹によくあるのは一緒に街を歩いてるとよくカップルに間違えられるって話を聞いた事がある。目の前の姉弟も例外じゃないと思う。しかし、俺の目の前で恋人みたいにイチャついてる姿を見ると実の姉弟なのか、義理の姉弟なのか気になる
「僕達は実の姉弟じゃありませんよ。僕は母の、姉さんは父の連れ子です」
この少年は何歳の頃に転生したのかな?って少年の方は転生者だから気にするだけ時間の無駄か
「そうかい」
俺は一言そう返した。別に転生者が転生後にどんな生活をしていようがどうでもいい。俺個人としては転生した先の世界に迷惑を掛けなければそれでいい
「うん。ところで君はどちら様?」
「そういや自己紹介してなかったな。俺は白石洋平。神の使いだ」
「神の使い?君って神様のところから来たの?」
「そうだけど?それがどうかしたのか?」
俺が神の使いで来たら少年にとって何か不都合な事でもあるのかな
「って、事は白石君はあのゴミ屋敷みたいな部屋で神様と一緒に生活してるの?」
少年の顔色が真っ青になっている。俺が関わった転生者は神子の部屋について何も言ってこなかったけど、やっぱあの部屋は汚かったよなぁ……
「あ、ああ、そうだ。因みにあの部屋は俺が神様と一緒に掃除したから今は汚くないぞ?」
「そ、それならよかった……」
ホッと胸を撫で下ろす少年。普通の感性をしている人間ならあの部屋で生活するのは考えられないよなぁ……
「何がよかったのか知らないけど、神様の部屋は俺が掃除したから安心しろ」
「うん!あの部屋じゃまともに人も呼べないだろうし、それに何よりあのガサツさじゃ彼氏なんてできないだろうって思ってたから少し心配だったんだ!」
屈託のない笑顔で神子をディスる少年。神子本人が聞いたらなんて言うか……
「それは俺も最初に感じたけど、彼氏の件は何も心配ないぞ?」
そのガサツな神様の彼氏は俺だ。いや、幼い頃に結婚の約束をしたから婚約者か?
「え?どういう事ですか?」
頭に?マークを浮かべている少年。転生した者は神子と顔を合わせるのは死んでから異世界に転生するまでの短い間だけ。だから、リビングの様子をチラッと見る程度はするだろうけど、風呂場とかキッチンの様子を見るだなんて事はない。この少年も例外じゃなくリビングをチラッと見まわして“汚い”と感じたんだろう
「そのガサツな神様の彼氏は俺だからだ」
別に隠す事じゃないから正直に言う。まぁ、俺はどんな容姿、性格の女だろうと付き合ってる事を隠すなんてしない
「ええっー!?白石君ってあのガサツな神様の彼氏だったの!?」
瓦礫の山と化したビル街に響く少年の叫び声。俺が神子の彼氏だった事がそんなに意外だったのか?それとも、神子に彼氏ができた事が意外だったのか?
「まぁな。っていうか、俺はどうして詩央君と恋バナなんてしてんだ?俺は詩央君に神様の力を宿したカードと『音痴ゴリラ』のカードを返したいだけなんだけど?」
恋バナに夢中になり過ぎて本来の目的を忘れそうなので話を元に戻す。俺も一応は健全な男子だ。恋バナに興味がないわけじゃない
「そうだったね。じゃあ、『音痴ゴリラ』のカードを返して?」
笑顔で俺に手を出す少年。さっきまで意識を失っていた人物と同一人物だとはとても思えない
「言われなくてもそうする。トレーディングカードゲームのカードを一枚だけ持ってても仕方ないからな」
俺は少年に『音痴ゴリラ』のカードを渡す。トレーディングカードゲームのカードって一枚だけ持っていても意味はない。まぁ、それが五枚や十枚になっても意味なんて全くない。
「ありがとう!これ、僕の切り札だからないと困るんだよね~!」
「そ、そうなんだ……」
『音痴ゴリラ』だなんてふざけた名前のカードが切り札にしているだなんて珍しい人間もいたものだ
「うん!このカードで姉さんを守るんだ!」
俺は少年の人を守る思いを否定する気はないし、カードゲームごときでとバカにする気もない。この世界はカードゲームメインだ。考えようによってはカードゲームは娯楽であり、軍事兵器であり、自然災害になる。この世界はそういう世界だ
「姉を守るのはいいけど、その姉にあんまり心配を掛けないようにな」
「わかってるよ!」
わかってない。俺は途中からしか見てないから詳しい事は知らいない。だけど、この少年は自分が姉の為、世界を守る為に戦う事で姉に心配を掛けてるって事を理解できてない
「それならいい。俺としては無茶しすぎなければそれでな」
本当はわかってないって言おうと思ったけど、途中しか見てない俺に少年を説教する資格なんてないから無茶し過ぎないように釘だけ刺しておく
「うん!」
満面の笑みを浮かべる少年。まぁ、この少年には俺が帰った後も様々な試練が訪れるだろう。その中で周囲の人間の大切さを学んでいけばいいと思う。俺が教える事じゃない
「じゃあ、俺は帰るから」
俺は神子の部屋へ繋がる扉を出現させた。
「白石君、ありがとね」
「ありがとうございました!白石さん!」
扉を潜る前、俺は詩央君と詩音さんに礼を言われたけど、俺は届け物を届けに来ただけで礼を言われる事は何もしていない
「俺は届け物をしただけで礼を言われる事は何もしていない」
詩央君と詩音さんに届け物をしに来ただけだと伝え、俺は扉を潜った。
「義理の姉がヒロインか……それはそれでアリなのかもしれないな」
神子の部屋に帰る道中、俺は詩央君と詩音さんの事を思い出していた。詩央君にはこれからも試練があるだろうけど、それを頑張って乗り越えられればと思う
「ただいま~」
俺はいつもと同じように神子の部屋に戻ってきた。今回はリアルファイトじゃなかったし、バトルしているところに乱入したわけでもないからゆっくり話ができた。ハーレムに悩む転生者と篠崎を入れると異世界でまともに話した人間は三人目だ
「おかえり、洋平」
顔は笑顔だけど、いつもとは違い、冷たい声の神子。ひょっとして、俺と詩央君のやり取り見てたのか?
「あ、ああ、ただいま。神子」
「うん。それより、洋平」
「何だ?」
「私の事、ガサツな女だと思ってる?」
俺が詩央君とのやり取りを見ていたのかを聞こうとする前に神子の方からガサツだと思うかどうかを聞かれた。これでハッキリしたけど、神子は俺達のやり取りを見ていたようだ
「そりゃガサツだと思ってるけど、俺はガサツなところも好きだぞ」
詩央君との恋バナもそうだけど、面倒な話は広がる前に終わらせるに限る
「そ、そっか……好き……好きなのかぁ~、え、えへへ~」
先程とは打って変わって照れたように笑い、子供みたいな声を出す神子。何ともまぁ単純な神様だ
「ああ、それに、だ。俺が神子とここで生活しているんだから部屋が汚くなるだなんて事はもうないだろうし、異世界の人間に酔っ払った勢いで酒瓶なんて投げつけないだろ?」
俺もそうだけど、異世界の人間にポンポン酒瓶を投げつけられて殺されちゃ身が持たないだろうし、転生させる世界もいずれはなくなるだろう
「うん。酔っ払った時は洋平に甘えるし」
「それはそれでコメントに困るんだけど?」
年上の女性に甘えられるのはぶっちゃけ悪い気はしないけど、それをハッキリ言われると反応に困る
「え~!酔っ払ってるとはいえ彼女が甘えるんだよ~?嬉しくないの?」
「年上彼女が甘えてくれるのは嬉しいけど、俺としては酔っ払った時だけじゃなく、素面の時にも甘えてくれた方が助かる」
「え!?甘えていいの!?」
俺の言葉に目を輝かせる神子。別に彼女なんだから建前なんて必要ないと思うんだけど?それに、ここには死安さん以外には誰も来ないだろ
「ああ、いつでも甘えてくれ」
「うん!!」
満面の笑みを浮かべる神子。これで神様だって言っても死者や人間は信じないだろうなぁなんて思いながら俺に抱き着いてくる神子の頭を撫でる。頭を撫でられた神子は嬉しそうにしているし、俺もその様子を見てると幸せだからいいんだけどな
今回は異世界に行って帰ってくるまででした
異世界で少し恋バナをして帰ってくるだけでした。少年のその後は次回
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