俺が幼い頃に神子と会って結婚の約束をしていたみたいなんだが
今回は幼い頃の記憶です
洋平は幼い頃の記憶を見て何を思うのか?
では、どうぞ
「洋平君、本当に観るんだね?」
死安さんは最後の確認と言わんばかりに聞いてくる。これは俺がいずれ向き合わなければいけない事だ。それが遅いか早いかの違いだから観るタイミングは大した問題じゃない
「はい。ちょっと早い気がしますが、これは俺がいずれ向き合わなければいけない事ですから」
「そうかい。洋平君、観終わった時、神子ちゃんになんて言うの?」
「別に何も。観終わった時に思った事をそのまま伝えます。それより、静かにしていてください。肝心なところを見逃してしまいますから」
俺は死安さんを強引に黙らせ、テレビに集中する
『親戚の集まりに何の意味があるんだろう?』
幼い頃の俺が一人で神社の鳥居の前に座っていた。この頃の俺は親戚の集まりを退屈な大人の酒飲み会くらいにしか思ってなかった
『お父さんもお母さんもおじさん達とお酒飲んで騒いでるだけ、茉央も茉央で従姉妹達と遊んでいるだけだし……』
この頃の俺は爺ちゃん家の近所の子供達と遊ぶ気にもなれず、一人で持ってきた本を神社の鳥居の前に座って読む事が爺ちゃん家に来ると毎回する事だった
『持ってきた本も読み切っちゃったし、暇だなぁ……』
この頃の俺は五歳。読めて絵本、振り仮名を振ってある小説が精一杯。振り仮名なしの本やラノベなんて読めたものじゃない。まぁ、漢字を読めなかったから仕方ない。五歳なら読めてひらがなだ
『本当に暇だなぁ……』
我ながら五歳の俺はよく一人で出歩けたものだと感心する。普通なら親が注意くらいしてもいいものだと思うけど、家は放任主義。五歳の俺が一人で出歩こうが特に何も言わなかった
『君、暇してるの?』
五歳の俺に声を掛けた女子高生っぽいお姉さん。いや、神子だった。
『お姉さん誰?』
『私?私は神様だよ!』
この頃の俺はこういった人にどんな反応してたっけ?確か……
『お姉さん、いい歳して神様とか言って恥ずかしくないの?』
そうそう、年上であっても容赦なく意見を言ってたんだった
『は、恥ずかしくないよ!私は本物の神様だもん!』
『あ、そう』
うっわぁ……可愛くねぇガキ!って、このガキは俺か
『信じてないでしょ~?』
『うん、全然信じてないよ』
『じゃあ、どうやったら信じてくれるの?』
『神様の力を見せてくれたら信じてあげるよ』
神様の力を見せろと要求するところは俺が最初に神子と会った時にした事と変わらない
『本当はいけないんだけど、君になら特別に見せてあげる!で?どんな力を見せたらいいの?』
『どんなのでもいいけど、そうだね、解りやすく雷でも落として見せてよ』
我ながら子供っぽい。山を一つ消し飛ばせとか言ってもよかったのに、雷を落とせだもんなぁ……
『そんな事でいいの?もっと他の事もできるけど?』
『いいよ。今は夕方で雨も降ってない。それに雲一つない。俺はまだ五歳だけど、そんな俺でも雨雲一つない状況かつ雷が落ちそうにない状況だって事は解る』
うん、この頃の俺は嫌なガキだと思う
「この頃から洋平君は状況判断がよくできる子だったんだね」
さっきまで黙っていた死安さんから出る客観的な意見だ。その意見には同意で俺もそう思う
「そうですね。自分でもそう思います」
他者や身内と関わりがないと大人から見たら嫌な子になってしまうのかと思う。死安さんは状況判断がよくできる子って言ってくれたけど、本質的には単なる嫌なガキだ
『君って大人から嫌なガキだって言われない?』
『別に、俺は大人にも他人にも興味ないから。それに、アンタが神様だって言うならそれくらいできるでしょ?何?ひょっとしてできないの?』
本当に嫌なガキだ。神子はこんな嫌なガキのどこに惚れたんだろう?
『で、できるもん!私、神様だもん!』
ガキの俺に煽られてムキになる神子。ガキに煽られてムキになるなよ……それでも人を長く見てきた神様かよ……まぁ、初対面でエプロン姿を披露する神様だからなぁ……
『じゃあ、できるよね?お姉さん神様だもんね?』
煽りに煽りまくる五歳の俺。そして────────────────────
『ば、バカにしないでよ!私は神様だから雷くらい落とせるもん!!』
五歳のガキに煽られてムキになる神子。
『そう。じゃあ、やって見せてよ』
『わかったよ!えいっ!』
画面の中の神子が山を指差した。神子が指差した山には轟音と共に雷が落ち、山が消し飛んだ。当時の俺も俺だけど、五歳のガキに煽られて山を消し飛ばす程の雷を落とす神子も神子だ。大人げない
『………………や、山が消し飛んだ?』
長い間の後、五歳の俺が言ったのは山が消し飛んだという事実だった
『へっへ~ん!どうだ!これで私が神様だって事を信じたか!』
山が消し飛んだというのにドヤ顔の神子。ぶっちゃけ大人げない
『雷を出せとは言ったけど、山を消し飛ばせとは言ってないよ?どうすんのあの山。そして、この騒ぎ』
五歳の俺が言った通り、山一つが消し飛び、村は大騒ぎ。この時の神子がすべきなのは山を元に戻し、村の騒ぎを収め、“山が消し飛ばされた”という記憶を村の人間全員から消す事だ
『山は元に戻すし、村の人達から山が消し飛んだ記憶は消すから大丈夫だよ!』
神子は山を消し飛ばした時と同じように山を指差した。すると瞬く間に消し飛ばされた山は元通りになった。でも、村の騒ぎは収まらない。当たり前だ。消し飛んだ山が元に戻ったんだ。それはそれで騒ぎにならない方がおかしい
『大丈夫!村の人達の記憶も消しておくから!』
神子が両手を空へ向けると空から光が降り注いだ。村に光が降り注ぐと騒ぎはすぐに収まった。そして、村人達はポケーっとし、やがて何事もなかったかのような振る舞いを見せた。そして、全てが終わった後─────────────────────
『お姉さんに不思議な力がある事は解ったよ。一応、神様ってのも信用するけど、どうして俺のところに来たの?』
『君が寂しそうにしていたから』
神子は即答で五歳の俺がした質問に答えた。俺が寂しそうにしてたから俺のところに来た。俺からしてみればそんな事かもしれないけど、神子からしてみれば重要な事なのかもしれなかった
『そう。でも、寂しそうにしている人は俺の他にもたくさんいるでしょ?』
そう、寂しそうにしているのは今も昔もたくさんいる。だけど、俺の元へピンポイントで来るだなんておかしい
『うん。でも、私は君が気に入ったから君の元へ来たんだよ』
『そう。で、神様が俺のところに来たって事は何かくれとか言い出すんでしょ?お話みたいに』
『そんな事言わないよ?』
『嘘だ』
『本当だよ』
神子が本当だと言っても信じない俺。幼いながらに疑り深い
『嘘でしょ?本当は何かくれとか言うんでしょ?』
『も~、信用ないなぁ~』
幼い俺に対し、大人の対応を見せる神子。
「珍しく神子ちゃんが大人なところを見た……」
画面の神子を見て死安さんが唖然としている。神子が大人な対応をするのがそんなに珍しいのかな?
「神子が大人な対応をするのってそんなに珍しいんですか?」
「うん」
死安さん、同じ神様なんだから少しは庇うとかしようよ……
『当たり前でしょ。いきなり自分は神様だとか言い出すんだから』
五歳の俺の言う事は正しい。いきなり現れた人が神様だとか言い出したら子供でも不審者か頭の悪い人だと思う
『そんなに言うなら君が十七歳になった時に私のところに来て結婚してよ』
『いいよ。お姉さんがその約束を覚えてたらお姉さんのところに行って結婚してあげる』
五歳の俺は神子が神様だって事を全く信じず、事もあろうことに結婚の約束をしてしまった。そこで俺はテレビの電源を切った。そして、俺は全てを思い出した。幼い頃に神様を名乗る変なお姉さんに会った事、そのお姉さんと結婚の約束をした事を
「どうだい?思い出した?」
「はい。俺は幼い頃に神子と結婚の約束をしてました」
俺は幼い頃に神子と結婚の約束をしていた。十七になったら結婚すると。俺の世界の法律じゃ男が結婚できるのは十八歳だけど
「思い出したようで何より。で、洋平君は今いくつ?」
「十七歳です」
「神子ちゃんは約束を覚えていたよ?」
「はい」
俺が十七歳で死ぬのは最初から決まっていた。神子と結婚の約束をしていたんだから
「それで、洋平君はどうするの?」
どうするか?そんなの決まっている。五歳の俺は結婚についてあまり詳しくは知らなかった。だけど、今の俺は少なくとも神子を他の奴には渡したくないとは思っている
「別にどうもしませんよ。五歳の俺は結婚について詳しく知りませんでした。ですが、今の俺は神子を他の奴に渡したくないとは思ってますが」
「それなら安心だ。洋平君、神子ちゃんの元へ帰りなよ」
死安さんから帰還命令が下された。言われなくてもそうする。帰り方は知らないけど
「帰りたいのは山々なんですが、帰り方がわからないです」
「君が異世界から神子ちゃんの部屋に帰る時と同じ事をすれば帰れるよ」
俺が異世界から神子の部屋に帰る時と同じ事───つまり、神子から貰ったネックレスに力を込めれば神子の部屋に帰れるってわけか
「わかりました。いろいろありがとうございました」
俺は死安さんにお礼を言うと返事も聞かずに神子から貰ったネックレスに力を込め、神子の部屋に戻った
「おかえり、洋平」
「ああ、ただいま。神子」
普段と変わらない笑顔で俺を出迎えてくれる神子
「神子、俺達って幼い頃にあってたんだな」
玄関で出迎えてくれた神子に早速切り出した
「思い出したんだね……洋平」
涙を溜め、俺を見つめる神子
「ああ。って言っても死安さんの部屋で俺の過去を見てようやく思いだしたんだけどな」
俺はいきなり神子から告白されて変だと思ったから死安さんに頼んで俺の過去を見せてもらった。それでようやく思い出した。だけど、神子はずっと覚えていてくれた
「そっか。私はずっと覚えていたよ」
「そうか。でも、結婚の約束をしたのは俺が五歳の頃だ。あの時に結婚の約束をしたのって売り言葉に買い言葉でしたんじゃないのか?」
神子を信用してないわけじゃない。だけど、五歳のガキとの約束を本気にするなんて……と思う。
「違う!!私はそんな事しない!!」
「─────!?」
神子は突然大声で怒鳴った。俺は軽い気持ちで言ったわけじゃない。しかし、俺の世界では同じ年同士ならともかく、当時五歳のガキだった俺と見た目だけで言えば当時十六歳とかそこらの神子。傍目から見れば俺と神子の歳の差は十一歳とかそこらだ。神様じゃなかったら普通にショタコンか同年代の男子に興味を持てない危ない女。第三者にそう認識されても無理はない
「私はそんな事しないよ……」
「…………」
手で顔を覆い泣き崩れる神子。突然怒鳴ったと思えば今度は突然泣き出した。
「ごめん……でも、俺が神子に会ったのはほんの一時の事だ。一目惚れと言われればそれまでなんだけど、それにしても変だろ。五歳のガキとした約束を律儀に守るだなんて」
俺の世界では五歳のガキと女子高生がした結婚の約束なんて果たされることはほとんどない
「変かもしれないけど、洋平が五歳の時、私はテレビで洋平の世界をただ何となく見ていた。そんな時だった……神社の鳥居の前で寂しそうに本を読む洋平を見たのは。そこで私は洋平に一目惚れした。同時に私が洋平を支えてあげたいとも思った。だから洋平と結婚の約束をした。それじゃダメかな?」
「別にダメじゃない。実際、五歳の俺は親戚の集りに退屈していたし、見方を変えれば俺は寂しかったのかもしれないからな」
この時俺は神子の事が無性に愛しく感じた。年齢や身分なんて関係ないし、好かれる理由も関係ない。ただ、俺は神子が愛おしくてたまらない。他の奴には渡したくない。
「神子、お前が俺を好きになった経緯なんてのはどうでもいい。今の俺にあるのは神子がただ愛しい。他の奴には渡したくない。ただ、それだけだ」
「洋平……」
俺と神子は見つめ合い、そして、唇を重ねた。幼い頃にした神子との約束。それはキッカケに過ぎない。問題はこれからどうするかだ。チョロイ奴と笑いたきゃ笑え!俺は神子が愛しいんだ!
今回は幼い頃の記憶でした
幼い頃の記憶を見た洋平は神子の事が愛おしく思い始めたようです。一目惚れから始まる恋があっても不思議じゃないと思う今日この頃
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今回は最後まで読んで頂きありがとうございました!




