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幼い頃に神子と会った事がないかと聞かれたんだが

今回は神子の事を考える洋平です

会った事ないか?なんて聞かれたら少なからず意識してしまうかもしれませんね

では、どうぞ

 プライドだけが無駄に高い転生者を始末し、死安さんの出現させた扉を潜り、神子の部屋へと帰る。これまで俺は三つの世界に行き、目的を果たして帰ってきたが、今回のように誰かと一緒にというのは初めての事だ。


「洋平君、ちょっと聞きたい事があるんだけどいいかな?」

「はい、構いませんが、死安さんは俺よりもいろいろ知ってますよね?」


 もっとも俺が言ってる“いろいろ知っている”というのは転生者や魂に関係する事や世界に関係する事だけど


「うん、転生者や魂に関係する事、世界の事は知っているけど、洋平君に関する事は何も知らないよ。これからも良好な関係を築いていく為に僕は洋平君の事を知りたいんだよ」


 女子から言われたら嬉しい言葉でも男から言われると嬉しくも何ともない。俺の事を知りたくて質問される分には答えるけど


「はぁ、俺の事を知ってもいい事なんてないと思いますけど……いいですよ。何でも聞いて下さい」

「それじゃ遠慮なく聞くけど、君は神子ちゃんに会った事ってないかい?」


 おかしな事を聞く死安さん。俺は神子の部屋に入り浸っている状態だ。それを考えると神子とは常に顔を合わせている


「おかしな事を聞きますね。今の俺は神子の部屋に入り浸ってる状態なんですよ?神子とは常に顔を合わせているんで会っているに決まっているじゃないですか」


 異世界かラノベの世界に転生していれば神子の部屋に入り浸っている状態になる事も神子と常に顔を合わせる事もなかった。ま、俺がチート能力にもハーレムにも興味がなく、異世界にもラノベの世界にも行く事を拒否したから今の状態があるだけなんだけど


「僕の質問の仕方が悪かったね。洋平君は幼い頃に神子ちゃんと会った事はないかい?」


 幼い頃に神子と会った事がないか?うーん、幼い頃ねぇ……神子くらい美人な人だったら覚えているはずなんだけど……強いてあげるなら幼い頃に爺ちゃん家に遊びに行った時に神社で遊んでいた俺に美人の女子高生らしきお姉さんが声を掛けてきたくらいか?俺が美人に会った記憶は


「幼い頃に神子と会った記憶はないです」

「そうかい。ならいいんだ……」


 俺の答えに納得いってない様子の死安さん。だけど、それ以上追及してくる事はなかった。死安さんは何が聞きたかったんだ?


「質問は終わりですか?」


 死安さんが何を聞きたかったかは質問が全部終わった後で聞こう。今の段階で聞いても誤魔化されて終わりだ


「いや、まだあるよ。洋平君は幼い頃に神社で遊んだ事はあるかい?」

「はい、小さい頃に爺ちゃんの家の近所にある神社で遊んだ事はありますけど……アレって神の立場から見るとマズイ事でしたか?」


 俺は内心ビクビクしていた。神社を荒らしたりはしてないけど、俺達人間にとってはどうって事なくても神の逆鱗に触れる事かもしれないし


「いや、マズイ事じゃないんだけど、その時に女子高生くらいの女の子に会わなかったかなと思ってね」

「女子高生くらいの女の子ですか?」

「うん。洋平君は会ってないかな?」


 女子高生くらいの女の子になら会った事はある。だけど、それがどうしたって言うんだろう?


「会いましたね。幼い頃、俺が一人神社で遊んでいた時に声を掛けてきた女子高生らしきお姉さんがいました」

「そっか。それで、その女子高生らしき女の子と別れる時に何か約束とかしなかったかな?」


 約束か……そういえば何か約束をしていたような気がするけど、何だったかな?


「言われてみればそのお姉さんと何か約束した気がしますが、その約束の内容は覚えてません」

「そう……わかったよ。ありがとう」


 死安さんは結局何を聞きたかったんだ?


「いえ。それより俺からも質問があるんですけど、いいですか?」

「いいよ。何でも聞いて」


 何でも聞いていいなら俺は遠慮なくさっきの質問の意味でも聞こうか


「では、遠慮なく聞きますが、さっきの質問で死安さんは何を聞きたかったんですか?」


 いきなり幼い頃に神子と会った事がないか?とか、幼い頃に会った女子高生らしき女の子と約束していなかったとか、何なんだ?


「洋平君が僕達神と幼い頃に関わった記憶がないかって事を聞きたかったんだよ」


 幼い頃に神と関わっていたとしても俺にそんな記憶は残らないと思うけど


「幼い頃に神と関わっていたとしても人間と関わった神は掟で記憶を消さなければいけないと思うんですけど」


 俺は神の掟について詳しくは知らない。それに、小説の中には神は関わった人間の記憶を消すという描写がされている小説もある。しかし、神話がある以上、神は関わった人間の記憶を絶対に消さなければならないって決まりがあるようには思えない


「神の掟に関わった人間の記憶を消さなければならないっていうのはないよ。神が関わった人間の記憶を消すっていうのは一部の人間が考えた作り話だよ」

「そうなんですか?」

「うん。別に掟には関わった人間の記憶に関する事は何もないし」


 神の掟っていうのは人間の記憶に対して雑な部分があるんだな。死者を元の世界に戻せないって掟はあるのに


「そうですか」

「うん。洋平君の聞きたい事は終わりかな?」

「はい、ありがとうございました」


 互いに聞きたい事を聞き終えた後、俺と死安さんは無言で神子の部屋に向かった。それにしても、幼い頃の記憶か……


「「ただいま」」

「おかえり!二人とも!」


 相変わらずエプロン姿で出迎える神子。エプロン姿の神子を見るととても神様だとは思えない。同棲している彼女か新婚の妻だ


「ただいま、神子ちゃん」

「おかえり!死安!」


 死安さんを元気よく出迎える神子。神子の元気な姿を見たら俺は帰ってきた気になる。だけど、今回の俺は素直に帰ってきた気にはなれない。幼い頃の記憶を思い出さなきゃいけない事ができてしまったからだ。しかし─────────


「おかえり!洋平!」

「あ、ああ、ただいま、神子」


 神子の笑顔を見ていると幼い頃の事を思い出す事は後でもいいかという思う。今、無理に思い出す必要はない。それに、どんな事になっても俺は異世界転生はもちろん、ラノベの世界に転生する気もない


「ん?どうしたの?洋平、元気ないけど」

「いや、何でもない。今回は初の死神業だったから疲れただけだよ」

「そう?ならいいけど」


 疚しい事がないので焦りはしなかった。だけど、神子と幼い頃に会ってないかと聞かれてからか、俺は神子の事について考えなきゃいけない。そんな気がした


「洋平君、僕は自分の部屋に行くけど、知りたい事があったらいつでも来ていいからね」

「はい、ありがとうございます」

「それじゃあね」

「はい」


 死安さんはドアを開け、来た道を戻って行った。死安さんの部屋は遠いのかな?


「洋平、お疲れ様」

「あ、ああ……」


 死安さんが去り、神子と二人きりになった瞬間、俺は説明できない気まずさを感じた。それが気のせいなのか、神子を少し意識しだしたからなのかはわからない


「本当にどうしたの?元気ないみたいだけど」

「あ、いや、今回会って来た転生者について少し思うところがあってな」


 俺は死安さんからされた質問を隠し、今回会った転生者について考える事にした


「思うところ?何かあったの?」


 心配そうに俺を見る神子


「あ、ああ、転生者ってどんな人間でもいいのかな?って思ってな」


 今回会った転生者は俺なら絶対に転生させない。しかし、神子は転生させた。どうしてだ?


「一応、死んだ人間には転生するか、それとも、何百年か待って元の世界で生まれ変わるかを聞いて決めるんだけど中には転生した先の世界で悪さをする人もいるんだよ」

「そうなのか……あれ?転生させるか元の世界で生まれ変わらせるかって事は死んだ人間は天国に行かないのか?前にそんな事を言ってたような気がするけど」


 最初に神子にあった時に言われた。『天国に行くも異世界転生するもその人の自由』だと。しかし、異世界に転生するか何百年か待って元の世界で生まれ変わるかだと最初に言われた話と噛みあわない


「正確には『天国で何百年か待って元の世界で生まれ変わる』なんだよ。だけど、洋平は『元の世界に返せ』って言ったよね?」

「ああ。元の世界に帰せって言ったな」


 俺は神子に『元の世界に返せ』と言った。だけど、神子は『それはできない』って言われた。この違いは多分、俺を白石洋平として元の世界に返す事はできないという意味だったのだろう。しかし、天国で何百年か待って元の世界で生まれ変わる事は可能だって事だけど、俺が神子の話に耳を貸さなかったから異世界転生を提案したんだと思う。多分


「だけど、洋平は興奮して聞く耳を持たなかったでしょ?だから異世界転生かラノベの世界に転生する事を提案したんだよ」


 そうだったのか……これであの無駄にプライドが高い奴がどうして異世界に転生できたかは理解した。


「そうだったな。だけどまぁ、これであのプライドが無駄に高い奴がどうして転生できたかは理解した」

「解ってもらって何よりだよ」

「ああ。ところで、何か焦げ臭い」

「あっー!クッキー焼いてるの忘れてたー!」


 神子は慌ててキッチンへ走って行った。料理してるなら無理に出迎えてくれなくてもいいのに……っていうか、神様がクッキー焼くって不思議なモンだな


「はぁ……幼い頃に俺と会った事があるかどうか聞くのは後にするか」


 慌ててキッチンに走って行く神子を見ると俺が幼い頃の話をするのは気が引ける。お茶の時にそれとなく聞いてみるか


「失敗しちゃった……」


 俺がリビングでくつろいでいるとキッチンからションボリした神子がやってきた。どうやらクッキーを焦がしてしまったみたいだ。


「また作ればいいだろ。今度は俺も手伝うからさ」


 ションボリしている神子に対し『料理中にキッチンを離れるからだ』とは言えず、神子を慰めるしかできなかった。落ち込んでいる女性に追い打ちをかけても仕方ないし、ここで泣かれでもしたら聞きたい事も聞けなくなる。それなら慰めるしかないだろ?


「うん……」


 ションボリした神子の頭を撫でると神子は嬉しそうに目を細めた。神様である神子もこういう時は一人の女の子に見える。このまま俺が異世界転生をせずにこの部屋に入り浸っていてもいいのかなと思うけど、神子を一人にすると今度はどんな失敗をするか心配で異世界転生する気にはならない

今回は神子の事を考える洋平でした

会った事ないか?なんて聞かれたら少なからず意識してしまうかもしれませんが、本当にその人が本人かもわからないのに答えようがない。ってところです


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今回は最後まで読んで頂きありがとうございました!

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