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異世界とか初めて行ったんだが

今回は初めてのお使いです

洋平は無事に神様からのお使いを果たす事ができるのか?

では、どうぞ

 神様の酒癖の悪さが原因で死んでしまった俺、白石洋平は当の神様にお使いを命じられた。正直、解せないところもある。解せないところもあるんだけど、一つ聞いていいか?いや、聞きたい事はたくさんある。あるんだけど……どれから聞いていいものか……とりあえず、基本的な事から聞くか


「あの、神様?」

「何ですか?」

「この大剣を勇者に届けるんだよな?」

「そうですよ。早く行ってきてください」


 この女……さっきは半ベソ掻いてたクセに急に態度がデカくなったな。別に俺は行かなくてもいいんだぞ?困るのは俺じゃないしこの勇者なら自分の力で魔王を倒せるだろうし


「別に俺は行かなくてもいいんだけどなぁ……」


 俺はボソッと呟く。別に行かなくても俺は困らない。困るのは勇者と神様であって俺じゃない。それに、神様に至っては酒に酔って投げた酒瓶が俺に当てて死なせてしまったという事実を忘れてやしませんかね?


「え?行ってくれないんですか?」

「はい。だって、困るのは俺じゃありませんし。それに、戦闘中の場に乱入して無事に済むわけないっていうのはバカでも理解できますよ」


 テレビに映った場面は勇者と魔王の最終決戦の場面。しかも、勇者側がピンチだった。そんな場面に乱入したらどうなると思う?答えは簡単だ。俺は間違いなく殺される。いや、そもそも俺は死んでるんですけどね?


「そ、それはそうですが、い、行ってくれないと困ります!」

「え~、でもなぁ……さっきはお使いに行ってもらう立場で随分とデカい態度を取られたしなぁ……行く気失くしたなぁ」


 俺が脅迫しているみたいになっているから誤解がないように言っておくけど、別に俺は脅迫しているんじゃない。ただ、自分にとって損になる事はしないだけだ


「し、白石さんにも力を授けますから!だから、勇者にその大剣を授けに行ってください!!」


 神様は土下座せんばかりの勢いで俺に頭を下げる。神様は『力を授ける』って言ったけど、俺は神様のチート能力はいらないんだよなぁ……


「俺は別に届けないって言ってるんでもチート能力をよこせって言ってるんでもないんです。ただ、勇者と魔王の戦ってる場に乱入するんだからケガしない程度の力をくださいって言ってるんです」


 俺は神様のお使いに行きたくないって言ってるんじゃなくて、危険な場所に行くんだからケガしない程度の力があれば行くって言ってるんだ


「その力があれば本当に勇者の元へ行ってくれるんですね?」

「ええ、もちろん。俺は約束は守る男です」


 力を授かってやっぱ行きませんなんて言わない。力を授かったらすぐにでも勇者の元へ行く


「本当ですか?」

「本当です」

「力をあげた瞬間に逃げ出したりとかしませんか?」

「しませんよ」

「本当に?」

「本当です」


 何だ?随分と疑り深いな。そんなに俺が信用できないのなら俺が留守番して神様が勇者に力を授ければいいのに……


「わかりました。白石さんに力を授けます」


 チート能力はいらないけど、ケガしない程度の力はほしいと言ったが、どんな力をくれるんだろう?


「宜しくお願いします」


 今まで生きてきて神様と話した事も神様から力を授かった事もないのでどうやって力を授けてくれるかは知らないけど、一体全体どうやって?


「では、白石さん、力を授けますので私と握手してください」

「わかりました」


 俺はまだこの人が神様だなんて信じていない。だけど、この人の言う事を信じないと話が前に進まないから一応は信じてみせたけど……この人は本当に神様か?まあ、力をくれるって言うから握手はするけど


「はい、終わりましたよ」

「え?もう?早くないですか?」


 力を授けるって俺はこの自称・神様と握手しただけなんだけど……


「確かに早いとは思いますけど、ちゃんと白石さんには力を授けましたよ」

「でもなぁ……俺としては女性と握手しただけなんだけどなぁ」

「むっ!信じてませんね?」


 当たり前だ。そもそも、神様だって事すら信じてない。テレビの事は偶然が重なったと思ってるしな


「当たり前です。握手しただけで神様パワーがもらえるなんて都合よすぎます」


 握手しただけで神様の力が手に入るならラノベの主人公は苦労していない。安直すぎる


「なら試してみますか?」


 神様が俺を煽ってくる。上等だ!握手しただけで神様の力が手に入んない事を証明してやる!


「いいでしょう。試してください」


 挑発に乗るのは癪に障るけど、簡単に手に入る力がない事を証明するにはいいチャンスだ


「わかりました!行きますよ?」

「いつでもどうぞ」


 試してみろとは言ったけど、どうやって試すつもりなんだ?行きますよって言われても俺と神様はさっきから距離を取ったというわけでもないのに


「えいっ!」


 神様がテーブルを指差したと思ったら今度はその指を俺の方へ向けてきた


「は?えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?う、浮いてる!?っていうか、ちょっと待ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


 神様がテーブルを指差したらテーブルが浮かび上り、その浮かび上ったテーブルが俺の方に飛んできた。って、観察してる場合じゃねぇ!!あんなの当ったら確実に大ケガするぞ!?この女マジふざけんな!!


「大丈夫ですよ~私が力を授けましたから~」


 いやいや、大丈夫じゃないよ!!そんなの当ったらケガするだろ!!酒瓶の次はテーブルかよ!!この女はどんだけ俺に恨みがあるんだよ!?


「力をもらってもそんなの当ったらケガす────────────」


 俺の身体にテーブルが当ったのであれば聞こえるはずの鈍い音が聞こえてこない。代わりに聞こえたのは水の中に何かが落ちたような音だった


「あれ?テーブルが当ったのに痛くない?」

「そりゃ水の力を授けましたからね!当たり前です!」


 水の力?何だそれは?


「水の力?」

「水の力です!」


 水の力って言う事は水に関係する力なんだろうけど、それとテーブルが当った時に痛みを感じないのと何の関係があるんだ?


「その水の力とテーブルが当った時に痛みを感じなかったのと何の関係があるんですか?」


 俺に与えられた力と痛みを感じない事への因果関係がサッパリわからない


「関係ですか……時間がないので簡単に説明しますね」

「は、はあ、よろしくお願いします」

「今の白石さんは身体全体が水になってます!」


 説明が雑過ぎる!!あー!!もう!!説明を聞くのは後だ!!


「説明は後で聞きますので勇者のところへ行く方法を教えてください」

「あ、はい!このドアを通ればすぐに勇者の元へ行けます!」

「わかりました!ありがとうございます!」


 俺は神様に言われた通りにドアを開けようとした。しかし─────────


「あ、ちょっと待ってください!」


 神様に引き止められてしまった。何だよ……時間がないんじゃなかったのか?


「何ですか?」

「これを持って行ってください」


 大剣は持ったから忘れ物はないはずだけど……他にも持って行くものってあったか?


「ネックレス?」


 神様に渡されたのは十字のネックレスだった。これも勇者への届け物か?


「ええ、それがないとここへは帰って来れませんから」

「了解です!じゃあ、行ってきます!」

「ええ、いってらっしゃい」


 こうして俺は勇者と魔王が戦う決戦の地へと向かった。のだが────────────


「うわぁ……マジかぁ……」


 当たり前だが、勇者と魔王が戦っているだけあって周囲は木が薙ぎ倒され、辺り一帯は焼け野原。神様のところにあったテレビで見て状況はわかっていたが、実際に見るとキツイものがある。この世界がどうなっているかは不明だけど


「で、あの余裕そうにしてるのが魔王で息が上ってるのが勇者か」


 遠目から見てもどっちが魔王でどっちが勇者かなんて一目瞭然だ。だって、見るからに勇者の方がボロボロだし


「あんな大決戦に巻き込まれたら大変だし、さっさとこの大剣を届けて帰ろ」


 勇者なら他のパーティーメンバーがいてもいいはずだが、きっと一人で突っ走る系の勇者なのだろうか魔王とサシの勝負みたいだし


「うおぉぉぉぉぉぉぉ!!」


 俺が勇者の元へ歩き出した瞬間、勇者は折れた剣を魔王に向け、そのまま魔王に向かって行った。


「気持ちはわかるが、そんな折れた剣で立ち向かっても……」


 世界を守りたい一心なんだろうけど、折れた剣で立ち向かっても結果は見えている


「フン!!」


 魔王は軽く腕を振って勇者を振り払った。


「グハッ!!」


 ほらね、やっぱりそうなる。だから止めといた方がよかったのに


「はぁ……仕方ない、これ以上は勇者が死ぬし、俺も俺で神様とちゃんと話せてないから届け物してさっさと帰ろう」


 勇者に届け物をするのもそうだけど、俺も俺で神様から何も聞いてないから早く帰りたい。はぁ……


「ま、まだだ!!俺は例え死んでもこの世界を守ってみせる!!」


 勇者はボロボロの身体に鞭打つように立ち上がった


「フハハハハ!そんな身体で一体何ができる?貴様はここで死ぬんだよ!!」


 魔王が巨大な火の玉を勇者に向けて放った。多分、ボロボロの状態じゃなければ簡単に躱すなり、弾くなりしたんだろうけど、今の勇者にはそんな余力が残ってるとは思えない


「はぁ……ったく、世話の焼ける勇者だな」


 俺は勇者を魔王の攻撃から庇うべく走り出した。こんな事なら身体能力強化も頼んどくんだった……


「「え?」」


 勇者も魔王も意外だったようで、俺が乱入した事に大層驚いていた。そりゃ勇者は『一人で来たはずなのにどうして?』って思うだろうし、魔王は魔王で『俺の攻撃を食らって無事なはずがない』って思うのは当たり前か。俺だって神様から力をもらってなければ乱入しようとは思わないし


「あ……やっべぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」


 さっき身体能力強化も頼んどくんだったって後悔したばかりじゃねぇよ!!こんなバカデカい火の玉どうやって対処するんだよ!!俺のバカ……


 神様から『水の力』を与えられたとはいえ、こんな巨大な火の玉を食らったらひとたまりもない。だが、すでに目の前にはその巨大な火の玉があった。さて、どうなると思う?答えは────────


「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 どうにもならずに食らう。でした


「魔王!!貴様!!よくも!!」


 俺が勝手に飛び込んで勝手に火の玉を食らったにも関わらず、魔王に激怒する勇者。まぁ、俺は無事なんですけど


「フン!乱入してきた奴が悪いんだろ!!」


 魔王様、ごもっともな意見です。そうです、乱入した俺が悪いんです


「だとしても関係ない人を巻き込む事はないだろ!!」

「勝手に乱入してきた奴の事など知らんわ!!」

「魔王!!貴様は絶対に───────」

「はい、ストップ!!」


 魔王と勇者の言い合いにこれ以上付き合いたくないので俺は待ったを掛ける。っていうか、俺は死んでないし、かすり傷すら負ってない


「「え?」」


 本日二度目の勇者・魔王ペアの驚いたような顔。そりゃ驚くよな。勇者は俺が死んだと思ってただろうし、魔王は俺を殺したと思ってたんだから


「俺は無事だし、かすり傷一つ負ってない。それに、俺は勇者にこの大剣を届けに来ただけだから」


 俺は神様から持たされた大剣を掲げてみせる。俺は勇者にこの大剣を届けに来ただけで戦いに来たわけじゃない


「え?ぼ、僕に?」

「ああ、神様に言われてな。アンタ、転生者なんだろ?」

「そ、そうだけど……で、でも、どうして?僕は神様にチート能力をもらったはずなのに」


 説明するのは些か面倒ではあるが、説明しなきゃいけないし


「魔王がチート能力を得たアンタより強かったから神様がさっき渡した大剣を持ってけってさ」

「そ、そうなんだ……」

「ああ。それじゃ、俺は帰るから」


 俺はそのまま神様の元へ帰ろうとした。だが───────


「神の力だと?俺にもよこせ!!」


 魔王が俺に向かって突っ込んできた。この魔王はアホか?どうして神様が世界を滅ぼす魔王に力を渡すと思うんだ?





今回は初めてのお使いでした

魔王と勇者の戦ってる場所に乱入してサクッと帰れるはずもなく・・・・


誤字、脱字等あれば気軽に感想欄に書いていただけると嬉しいです!

感想を書くついでに評価して頂けると作者のモチベーション向上になるので宜しくお願いします


今回は最後まで読んで頂きありがとうございました!

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