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ようやく神子の部屋に帰って来れたんだが

今回で3章が終了します

神子の部屋に帰った洋平はこの世界での事を終えて何を思うのか?

では、どうぞ

「康祐……」


 篠崎が容赦なく宮田の魂を燃焼させるところをただ見ているしかできなかった俺。そして、悲しそうな目で見ていた里奈と由紀子達。俺は人の命を奪うなっていう事しか約束してないからとやかく言えた立場じゃない。本当は止める事だってできたのに……でも、里奈と由紀子達は止める事もできず、ただ見ているだけしかできなかった。現在、里奈の悲しそうな声が体育館に響き渡る


「これで俺がお前達とは違う存在だって事が理解できたかな?幼馴染と義理だけど母と姉だったって事で君達の魂はそのままにしておいたけど」


 俺はともかく、里奈と由紀子達は篠崎のお情けで無事みたいなものだ。ここで篠崎に逆らうのは得策じゃない


「康祐、私はあなたの姉であなたは私の弟よ?どんなに変わり果ててもその事実は変わらない」


 茉利奈はどんなに変わってしまっても自分は篠崎の姉で篠崎は自分の弟であり、その事実は変わらないと言った。だけど、篠崎にした事を考え、篠崎の立場だったら素直に許すことはできないと思う。


「そう。でも、俺からしたら君は害でしかない。俺の平穏な生活を脅かす害だ」


 許す許さない以前に篠崎にとって義母も義姉二人も幼馴染も自分の平穏な生活を脅かす害でしかない。そこは俺も同意だ。コイツ等と一緒にいる事は百害あって一利なし。篠崎の言う通り害だ


「ねぇ、康祐。私達、またやり直せないかな?」


 由維はやり直せないかと言った。だけど、それはおそらく無理だろう。篠崎にとってやり直すなんて事は選択肢の中に入っていない。俺がもし、篠崎の立場ならやり直す事はあり得ない


「無理だね。君達は俺にいろいろやり過ぎた。君達と俺の立場が逆なら大切なものを壊した俺を、自分の平穏な生活を壊した俺を許す事ができるの?」


 テレビで見ただけだから何とも言えないけど、幼馴染である里奈も義母である由紀子も義姉である由維と茉利奈も篠崎の平穏な生活を脅かし、大切なものを壊した。そんな連中を篠崎は許せないだろう


「そ、それは……」


 篠崎の問いに答える事ができない由維。当然だ。篠崎の問いはもし自分がされたら許せるかどうかってのはその時になってみないとわからない。俺だってその問いに答えられる自信はない


「答えられないでしょ?それに……さ、人を無意味にイジメて来た連中が俺と一緒に暮らしたいとかほざいてんじゃねぇよ!!謝れば許してもらえると思ったか?謝って許されるなら戦争なんて起こってねぇんだよ!!寝言は寝て言え!!」


 篠崎が怒るのも無理はない。散々イジメてきた奴が謝るから許してくれだなんて虫が良すぎる。時には許す事も大事だけど、それだって程度による


「「「「ご、ごめんなさい……ごめんなさい……」」」」


 篠崎に対して涙ながらに謝る四人。涙ながらに謝って篠崎は許してくれるんだろうか?コイツ等に復讐する為に霊力を得たくらいだ。きっと憎しみも相当なものに違いない


「泣いたって許さないよ。君達には俺の事を忘れてもらうから」


 篠崎の中では記憶を消すのは決定事項みたいだ。ま、当然だな。復讐するために力を得たんだからな


「こ、康祐……もう無理なのかな……?」


 泣きながら篠崎に尋ねる里奈。そろそろ記憶を消さずに篠崎の願いも里奈や由紀子達の願いも叶う案を出した方がいいのか?


「無理だね」

「そんな……」


 里奈の問いを一刀両断する篠崎。これ以上問答を繰り返す事は無意味だ。それに、俺はさっさと帰りたい。仕方ない、両方の願いを叶える為の案を出すか


「あのよ、篠崎」

「ん?何?白石君も俺の邪魔をするの?」

「いや、俺も篠崎の気持ちはよく解る。だけど、里奈や由維達との問答に付き合ってるのも疲れるからな。ここらで俺から提案がある」

「「「「「提案?」」」」」


 さっきから黙っていた由紀子を含めた全員が俺の方を向く。押し問答を終わらせる案があるとは思ったなかったみたいだな


「ああ、篠崎の願いも後藤や由維達の願いも叶う案なんだけど、どうだ?」


 まぁ、里奈や由紀子達にとっては碌でもない案だけど、篠崎と一緒にいれるなら安いものだろう


「白石君の案を聞こうか。俺の願いもこの連中の願いも叶えられる案を」


 篠崎の方は一応、聞いてくれるみたいだな。まぁ、篠崎と俺が戦う意味なんてないから戦わないけどね


「俺の案は至ってシンプルだ。後藤や由紀子達が篠崎の下僕になればいい。篠崎は平穏な生活を送れるし、由紀子達は篠崎と一緒にいられる。最高の案だろ?」


 俺の考えた案。それは里奈や由紀子達が篠崎の下僕になる事だ。平穏な生活を送りたい篠崎と篠崎と一緒にいたい里奈や由紀子達。この両方の願いを叶えるには片方だけにメリットがあるんじゃダメだ。篠崎にとっても里奈や由紀子達にとってもメリットがなきゃな。まぁ、下僕になる事が里奈や由紀子達にとってメリットになるかは知らないけど


「ふ~ん。俺は平穏な生活を送れればそれでいいよ。元々平穏な生活を送れればそれでよかったし」


 篠崎の方は了承したけど、里奈や由紀子達はどうだ?


「篠崎の方からは了解を得られたけど、後藤や由紀子達はどうだ?篠崎と一緒にいられるようにはしてみたんだけど」


 いくらなんでも好きな人や弟(息子)と一緒にいられるとはいえ下僕になれだなんて提案を受け入れるはずが────────────


「「「「受け入れます」」」」


 あった。里奈と由紀子達は俺のふざけた提案をアッサリ受け入れたよ……


「そ、そうか……でも、どうしてこんなふざけた案を受け入れたんだ?」


 いくら好きな人や弟(息子)と一緒にいれる案だとはいえ、下僕はないだろ。提案したの俺だけど


「私はどんな形でもいい。大好きな康祐と一緒にいれるのなら下僕でも構わない」


 頬を真っ赤に染め、篠崎と一緒にいたいと言う里奈。恋は盲目ってか?


「そうか。後藤の言い分は解った。由紀子達もそうか?」

「「「はい……」」」


 由紀子達も里奈と一緒で篠崎と一緒にいられさえすればどんな形でもいいみたいだ


「じゃあ、これで解決だな。ところで魂がない身体はどうするんだ?新しい魂を入れるのか?」


 一人二人ならともかく、ここに倒れているのは男女含めてざっと三十人弱はいる。こんなに大勢の人達が急に意識を失い、篠崎達だけ無事というのは上手いこと言わないと篠崎達が怪しまれる状況だ


「魂が抜けた身体に新しい魂を入れるのは俺の力じゃ無理だ。その辺はなんとかするさ」

「そっか。もう一つ聞くけど、篠崎はどうして稲荷神社に行き、どうやって力を得たんだ?」


 由維と里奈の話じゃ篠崎に触れた瞬間、恨みの声が聞こえたと言っていた。どうやって力を得たかは大体想像できるけど、どうして稲荷神社に行ったのかが謎だ


「俺が稲荷神社に行った理由は元々あそこがイジメられてた俺にとって唯一の居場所だったから。どうやって力を得たかっていうのは白石君は最初から俺の事や俺に関係する事をある程度調べて知っていると思うけど、稲荷神社は元々、生前に不当な扱いを受けた人々の魂が集る場所。俺は自分をイジメた連中に復讐したいって強く願ったらみんな快く力をくれたよ」

「なるほど、つまり、イジメられてた篠崎はイジメられる度に稲荷神社に逃げ込み、復讐する為の力が欲しいと願ったらそこに集まってた魂は何の代償も求めずに力をくれたってわけね」

「ああ、世間一般的には憑りつかれたって解釈もあるけど、俺の中にいる人達は俺と一緒に生きていくって言ってくれてるから憑りつかれたり力を使っても俺に何ら影響はない」


 篠崎達は運命共同体または一心同体ってわけか


「代償がないなら別にいい。それじゃ俺は帰るけど、篠崎」

「何かな?」

「全てを許せとは言わない。だけど、少しくらい後藤や由紀子達の事を見てやったらどうだ?ま、下僕になったらどうだ?だなんてふざけた案を出した俺が言えた立場じゃないけど」


 里奈や由紀子達を救うつもりはない。だけど、下僕のままじゃ可哀そうな気がする。それに、篠崎には平穏な学校生活を送り、幸せになってほしいしな


「気が向いたらソイツ等を異性や母、姉として意識してみるよ」

「今はそれでいい。それじゃ俺は帰るが、精々平穏な学校生活を楽しんでくれ」

「うん」


 俺は神子の部屋へ繋がる扉を出現させ、篠崎や里奈、由紀子達に見送られる形で神子の待つ部屋へと帰った。結局篠崎の父親には会わなかったけど、父親は篠崎がイジメられてたっていう状況を把握してないだろうから別に会わなくてもいいか。


「ただいま~」

「おかえり!洋平!」


 部屋へ帰るとエプロン姿の神子が出迎えてくれた。今回、俺は異世界に行ってそこにいる人間の暴走を止めはしたが、多くの犠牲を出してしまった事には変わりはない


「ああ、ただいま……神子」

「うん、お帰り。洋平。どうしたの?浮かない顔して」

「ああ、今回俺は篠崎の暴走を止めはした。だけど、犠牲になる人が大勢出たけどよかったのかな?って思ってな」


 出る前に神子から犠牲者を出すなとは言われてない。篠崎は魂を燃焼させただけだから人の命を奪ったとは言い切れない


「洋平、篠崎君の世界で魂を燃やされちゃった人には気の毒かもしれない。それに神様が言う事じゃないとは思うけど、篠崎君が手を付けられないほど暴走する前に止められたんだから、あの程度で済んだのはよかったんだよ」


 本当に神様の言葉じゃない。しかし、手を付けられないほど暴走する前になんとかできてよかった。篠崎に魂を燃やされた人達には気の毒だと思うけど


「そっか。俺は篠崎と篠崎の住む世界を守れたのかな?」

「うん」


 今まで行った世界は勇者に届け物をしたり、ハーレム状態で悩んでいる少年の背中を押しに行ったりと人の命に俺が直接関わる事はなかった。今回初めて人の命に関する事態に直面したけど、犠牲を出さずに世界や人を救う事って無理なのか?


「俺が帰った後、篠崎は平穏な学校生活を送って幸せになれたのかな……?」


 燃えたものはどんなものであっても元に戻る事はない。そこは割り切らなきゃいけない。が、篠崎は俺が帰った後で平穏な学校生活を送って幸せになってくれれば俺としても嬉しい


「気になるなら見てみる?」

「ああ」


 テレビを点けてから俺と神子は二人でテーブルを囲み、お茶を飲みながら篠崎のいる世界の様子を見てみる


『じゃあ、行ってくるよ。義母さん』

『はい、行ってらっしゃい。康祐』


 俺達が見たのは登校する為に家を出た篠崎とそれを見送る由紀子の姿だった


『おはよう!康祐!』

『うん、おはよう。後藤さん』


 玄関前には里奈が待っていたようだけど、里奈に対しての呼び方はどこか余所余所しい


『もぉ~!恋人同士になったのに後藤さんはないでしょ!』

『何?下の名前で呼んでほしかったの?』

『うん!』


 篠崎と里奈は恋人になったのか……俺が帰ってからまだ少ししか経ってないのに展開早いな


『ちょっと!康祐!私達に行ってきますのキスないの?』

『そうだよ、康祐』


 由維と茉利奈に行ってきますのキスをするほどの仲に進展したところを見て改めて思う。展開早くね?


「もういい。展開が早すぎて俺にはついて行けない」

「そう?じゃあ、もうテレビ消すよ?」

「ああ、そうしてくれ」


 神子はリモコンを操作し、テレビを消す。篠崎が里奈や由紀子達と仲良くやっているようで何よりだけど、展開が早いな


「さて、洋平はさっきの光景を見てどう思った?」


 どう思うも何も展開が早いとしか言いようがない


「どう思うって、展開が早い。それしか思わない」

「そうだね。洋平の言う通りだよ」


 しかし、展開が早いから何だって言うんだ?スピード結婚とかスピード離婚なんて言葉があるくらいだから展開が早い事くらいじゃ俺は驚かない


「展開が早い事くらいじゃ俺は何も思わないけど篠崎達の関係が進展したのと何か関係があるのか?」


 俺がこの部屋に帰って来てまだそんなに時間は経ってない。まぁ、篠崎達限定で言えば許し許されるのは早いと思うけど


「うん。さっきの光景は洋平が帰って来てから一年後のものなんだよ」

「え?」


 一年後の光景?どういう事だ?俺が帰って来てからそんなに経ってないはずだぞ?ここには時間の概念がないから正確な時間までは把握できないけど


「洋平にはまだ言ってなかったけど、ここの一分は異世界でいう一年なんだよ」


 俺が異世界に行って帰って来た時はそんなに時間が経ってない様子だったけど、それはどうなっているんだ?


「ここでの一分が異世界での一年だとして、俺が異世界に行ってる間は年単位で時間が進んでないようには感じなかったけど?」


 俺が異世界に行ってる間は一年経ったとかっていう感覚はない


「私が渡したネックレスあるでしょ?洋平が異世界に行ってる間はそのネックレスが時の流れをこの部屋と同じにしているけど、洋平が帰ってきたとほぼ同時に異世界の時間の流れは元に戻るようになっているんだよ」


 つまり、俺が行った先の世界の時間はこの部屋と同じように流れるけど、俺がいなくなった瞬間、その世界の時間は元の流れが戻り、この部屋で一分経ったら異世界では一年経つと言った感じで流れが元に戻るのか


「つまり、神子から貰ったネックレスはストッパーみたいな役割を果たしているって事か」

「そういう事」


 俺は数学が苦手だから詳しい事は何も言えないし、計算が面倒だからしないけど、時間の流れが違うって事だけは理解した

今回で3章が終了しました

神子の部屋に戻ってきた洋平は救えなかった人達について思うところがあったようです


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感想を書くついでに評価して頂けると作者のモチベーション向上になるので宜しくお願いします


今回は最後まで読んで頂きありがとうございました!

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