パパ大好き
「誕生日おめでとぉ〜!」
「ありがとうママ!」
「何か欲しいものとかある?」
「えっとね!わたしね、パパのお話聞きたい!」
「もー、また〜?まったく、天国にいるパパもきっとあきあきしてるわよ。それで、なんの話が聞きたいの?」
「んー、パパがどんな人だったか聞きたいな!」
「ふふっ、そのお話ね!いいわよ〜。
あなたのパパはね、男前でかっこよくて頼りがいのある人だったのよ。悪いところといったら、ちょっと女癖が悪かったところかしら」
「うんうん、それでそれで!!」
「パパはね、ママにベタ惚れだったの。毎日迫られて困ったものよ〜」
「きゃー、パパこわーい!」
「ふふっ、そーいえばママ、あなたにパパがどうやっていなくなったか話したっけ?」
「え、聞いてないよ!?」
「じゃあ今日はひとつ大人になったあなたに特別に教えてあげる。
あれは、結婚記念日の前の日のことだったわ。パパが結婚記念日のプレゼントを買い忘れたって言ってね、わざわざ雨が降ってる真夜中に買いに行ったの。でもママね、不安になっちゃってついていったの。でももうパパは……」
「ううっ、ママぁ〜」
「あら、暗い話になっちゃったわね。大丈夫よ、パパは今もこの家をすぐ近くで見守ってくれてるわ。
今日はもうおしまい!もう寝る時間だからベッド入りなさーい!」
「……はーい」
女は娘が寝たのを確認した後、自分の部屋のクローゼットからひとつの大きな箱を取り出した。
「あぁ、どうしてあの日彼は同僚の元カノの妹と走っていたのかしら。あんなに他の女と一緒にいるのはダメって言い聞かせたはすずなのに……」
そう言いながら女は箱の中の頭蓋骨を優しくなでる。
親の恋愛話って聞きたくないよね。