異世界転生
ふつーに時間がない! もっと溜めてから投稿すればよかった……出したからには頑張りますけどね
「……という訳よ、わかった?」
「わかりはしたけど説明が長い」
思ったより話は複雑だったので、頭の中で一度整理することにした。
まず、魔王が現れた。強くなりすぎた魔王をどうにかするため勇者を送ることにした。この女神様──フルーシェ様という名前らしい──は地球と異世界サーヴェスの管理をしているので、地球の少年という闇を深く知らず、サーヴェスのような殺伐とした感情を持たない者に力を与えてなんとかしようとした。
そして無事に魔王は討伐された。でもその勇者は帰れないと知るや現代知識で無双しようと考えた結果、早すぎる技術をサーヴェスの人々は手に入れてしまった。
その技術の一つに年端もいかない子供達に魔法陣を植え付け定着させるというものがあった。
それは成功確率が低く、犠牲となる子供がたくさん生まれた。この問題を解決する為に事情を知った者──つまり地球人であり、この問題を解決できるだけの何かを持っていそうな人──を送ることを決めた。だがそんな人はそもそも死ぬような自体に合わず、自殺した者やただ事故に巻き込まれて命を落とした者ばかりであったため強制的に事故に合わせようとした、ということらしい。
そして、見事その貧乏くじを引いたのが俺だということだ。なんともまあ、厄介そうな話で……楽しそうな話だ。
受験に落ち、浪人する気力もなくこのままバイトから正社員となってと地味な人生を歩むんだなと思っていたらこれだ。正直なところワクワクしていたりする。
「流石に力に溺れることを考慮してその勇者に与えた力は頑張れば魔王を倒せる程度の力しか与えてないけど、十分に強力な力よ。まあ対抗できるだけの力は与えてあっちで不幸な事故で死んでしまった貴族の子に憑依させるから、頑張ってちょうだい」
「その不幸な事故とやらも仕組んだやつか」
「人聞きの悪いことを言わないでくれる? その子は木登りをしてたら手が滑って頭から落ちて死んだだけよ」
「うわぁ、間抜けなやつだ」
貴族なのに木登りって……でも貴族スタートか……
「その貴族の子に憑依っての以外でそっちに行けないの?」
「え? いけないこともないけど……なんで?」
確かに貴族スタートなら安全なスタートを切れるし、勇者へ接触しやすいだろう。権力で子供達を救うこともできると思う。だけど……
「可能なら、貴族スタートじゃなくて孤児スタートがいいんだ」
「それは、何故? わざわざ孤児になって行く意味がわからないわ」
売買される子供達、見つかったら強制的に連れて行かれる孤児たち、その子たちを多く救うなら政治に顔を突っ込んでなんとかするのが一番多く救える方法なんだろう。
だが、売買される子供たちは兎も角孤児たちはその現状をどう思っているのか。失敗すれば死ぬ。だが成功すれば給料がもらえる。
救うだけなら貴族になればいい。だが、その子たちを知るなら同じ境遇を味わったほうがいい。味わった上でどう動くか考えればいい。そうでなければ俺は納得できない。どのような気持ちで現実を見ているのか知りたくて仕方がないのだ。
「まあ、あなたがそれを望むというのなら私は構わないけどね。本当に孤児になるの? あんな辛い環境に行きたいだなんて、とんだどMね」
「まあ、苦労せず力を得るってのも好きだけどな。俺はどん底からスタートしたいんだ」
「そう、ならそうしてあげる。結局のところ行くのは私じゃなくてあなたなんだからね。あなたがやりたいと思ったとおりにやらせてあげるわ」
そう言ってフルーシェは転移用の魔法陣を構築し始めた。さっさと送りたいらしい。
「一応、子供のうちに失敗して死ぬなんてことがなるべく起きないようにサポートはするわ。15歳まではあなたに道を教えたり、動き方を教えたり、運を味方につけたり、なんでもしてあげるわ。あなたの仲間になる人たちにも支援ぐらいはしてあげるわ。と言っても強運を持たせるぐらいしかできないけどね」
「それはありがたい。運が味方に付くなんてとんでもないことをしない限りは成功するな」
「そんな油断こいてたら死ぬわよ? そんな生易しいところじゃないんだから」
「わかってるよ。でも逆から考えれば15歳までに足場を固めなければ終わりって聞こえるな」
「あなたが転移するのは8歳の孤児よ。流石に孤児に憑依させても身体が弱くてすぐ死んでしまうからこっちで身体を作ったの、丈夫ではあるから心配はないわ。7年で足場を固めなさい。それぐらいできないなら世界を正すなんてできないもの、頑張ってちょうだいね?」
説明が終わった途端、足元の魔法陣は一層輝きを増し、俺の魂を異世界へと送り始めた。
ついに始まる俺の異世界転生の物語、いったいどんな面白ことが起こるのか、楽しみだ!
………………だが、俺は理解していなかった。地球の孤児と異世界の孤児、それは全く別物だというほど違いが──孤児同士の奪い合いが──存在しているなんて。そして、この世界で孤児として生きるという意味を。