人殺し
迷いの森で、少しグロいとか気分を害する人が居るとかそういう理由で簡潔に終わらせた部分です。
Anotherstory「夜の森」より
村の子供に顔を見られてしまった後の少女の行動は早いものでした。
少女は直ぐにフードを被り直し、少女の顔を見てしまった少年の口封じをしたのです。
殺したりはしませんでしたが、焦った少女の様子を見て弱味を握れたと確信したのか、少年は調子に乗ってしまい、段々と態度を大きくしていきました。
そしてある日、少年はとうとう他の子供達の前でも少女のフードを取ってしまいました。
少年のその行動は迂闊とも言えます。
だってそうでしょう?
少女は無意識とはいえ、人の命を奪っているのですから。
少女はこの瞬間、口封じは無意味だったのだと思い知りました。
「人殺し」
小さい声ではありましたが、その言葉は少女の耳に届きました。
その言葉を発したのは勿論、口止めをされていた少年です。
少女の耳に届いた、と言う事は周りの子供達にも聞こえた、という事でもありました。
そして少女は二度目の罪を犯しました。
結局、少女は顔を見られてしまった周りの子供達に殺気を向けて殺しかけ、――――――いいえ、少女を脅し続けていた少年を殺してしまいました。
気が付いた頃には、少女も子供たちも傷だらけでした。
ショックの強い出来事ではあるので、茫然としている子が殆どでした。
少女にとって最も幸いだったのは殺してしまった相手が少女を脅し続けていた少年一人だけだったと言うことでしょうか。
しかし、人を殺してしまった事実は変わらずそこにあります。
少女は今度は最初から、記憶もありました。
ただし、少女は熱くなってしまった感情を抑える事が出来ませんでした。
少女は周りに倒れ伏す子供たちを見て、現実を受け入れられず、逃げ出しました。
そうして少女が逃げ込んだ先は森でした。
夜がやってくると暗く、そして夜行性の動物が闊歩する世界に変貌すると言われています。
昼の森ならともかく、夜の森は人が自分から入ろうなどとは決して思わない、思えないのです。
そんな場所へ逃げ込んだ少女は森の暗闇に安堵し、そしてあまりの静けさに恐怖しました。
少女は土や木の葉からはみ出た木の根に、足を取られそうになりながら恐る恐る歩き、森が騒ぎ風が吹けば走りました。
それを何度も何度も繰り返している内に、拓けた場所に辿り着きました。
そこは、月の光を湖に目一杯含んだ美しい場所でした。
景色に目を奪われた少女は湖の美しさに思わずため息をつき、湖の側で眠りに付きました。
その後、何度も夢を見ました。
少女が幸せそうに蝶と戯れている夢を。
そしていつしか夢は正夢になりました。
少女が死して尚願ったのは償い。
家族と向き合えなかった事への後悔。
少女の強い後悔と未練は、奇跡を成しました。
消化不良だったので、投稿出来て良かった。