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ホットミルク

 白い陶器のマグカップはヒエヒエのガラスのカップよりも小さく、ちょっと飲んだだけで直ぐになくなってしまう。


 あたしの身体を意識しながら給仕していたボーイさんは、食事が終わると空になった食器を、ロキソニウム合金製のカートに危ない手つきで載せて片付けて、超濃生乳の入ったポッドと、カップとソーサーのセットだけを残して退出した。



 退出するのもこれまた大変そうで、身体をくの字にしながら変な歩き方をしていた。


『もう、バレバレなんだからさぁ……。』 と言おうと思ったけれど、ちょっと可哀想だったからあたしは、無言を通していたんだけどね。


ガラスから射す光りを受けながら、あたしはアティーカップ片手にソファーでくつろいでいる。


 スクルージディスコニアンのガイドブック片手に、今日の予定を思案する。




【このスクルージディスコニアン】は大きく分けて

商業区、歓楽街、住宅地の三つだ。 あたしが今いるのは歓楽街になる。

 住宅地の方にはハッキリいって全く用がないので商業区か歓楽街のどちらかだ。


 まぁ、依頼の授受についてはスクルージ氏の仕事が終わるだいたい夕方くらいを目処に領主館へ行けばいい。


 それまでは、商業区でお買い物か、それとも歓楽街でのんびりするかなんだけど……。


……………………………。


うん、冷静に考えたらあたし、絶賛金欠。 三千キャロルしかないんだもん。 遊びに行くなんて、不可能であることに気づく。


 一泊2日にした理由はもちろん、スクルージ氏からの依頼の授受が終わったらこのホテルに戻ってくるつもりだったけれど、ちょっとそれができなさそうな可能性も出てきた。


 スクルージ氏の情報について、スクルージ氏の予定についても調べておいてもらえば良かった。


 まだまだ、温めてある超濃生乳は美味しく飲める温度だ。


超濃生乳に限らず全ての生乳は温め過ぎてはならないのだ。

 温め過ぎると、生乳本来の旨みが膜としてかたまり、生乳の上に浮いてしまう事がある。


 もし、生乳を温めて飲むのであれば温める時に温め過ぎないのが重要なのだ。もちろん、温める人が、いままでにどれだけ生乳を温めてきたのか? 今までにどれだけの火と向き合ってきたのかが重要になる。生乳を美味しく温めるようになるにはそれなりの努力と経験が必要になってくるのだ。



 たかが、生乳、されど生乳。生乳を美味しく飲むには努力が必要なのである。


 あたし?


(もちろんよ)


うん、あたしは批評家なんかではないけれど、超濃生乳を美味しく温める技術はもっているつもりた。


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