JOR/f/04スウィートルーム
さすがはお高いホテルのスウィートルーム、
昨日チェックインしたのが日が沈む前で、紅色に染まる湖畔と女神像という絶景だったのだけど、
一晩眠って壁一面のガラスを見てビックリ。
この街のガイドブックにももちろん、スクルージディスコニアンの特徴や見どころ施設の案内もあったし、アクセスの方法もこと細かにあったし青一色の町並だと言うことも記事にされていた。
だけどさ、こうして改めて見るとなんて言うんだろう、作られた造形であるんだけど。女神像のための街といったほうがはやいのかな?。
人が住むための居住地の向こうには湖畔が広がっていて、その湖畔と居住地の境目がわからないくらいの町並みを一言でいうのであれば、このスクルージディスコニアン自体がまるまる湖畔。
そんなイメージ。
ハッキリ言ってこの町並を作った彼の手腕は恐ろしいとしか言えない。
スクルージディスコニアン領、領主。
【スクルージ=ディスコニアン】
ここの領地の地名が示す通り、 元貴族であったスクルージ氏がこの地を治めている。
このアースキャニオン全域の慣例として、領主の名前がそのままその土地の名前になる。
(仮にあたしがドコかの地域の領主になったのであれば、その地域の名前は【エレナ=ミラージュ=クリスティーン】となり、きっと、【エレナ】と呼ばれる街か【エレナ=ミラージュ】と呼ばれるようになるのかもしれないけれど、そんな事はゼッタイにありえないし、あたしが領主になんてなるはずがない)
だって、領主っていったらばすごく忙しそうだし、ゆっくりお食事したりランチをしたりなんてできない気がする。
つまりは、遊ぶ時間が全くなくなってしまうという事だ。(そんなのゼッタイにイ・ヤ)
スクルージ氏の事に関しては、依頼を受けるにあたって少し調べさせてもらった。
はじめてあったときの印象として、目の下には大きなクマがあってこの人、 寝不足? こんなになるまで寝てないなんて大丈夫なの? と思った。
スクルージ氏に関して調べてもらったのは情報屋のサラ。 さすがはアースキャニオン随一と豪語するだけあって、その調書の内容も細かく、っあたしが期待する以上の事まで調べてあった。
その内容で一番印象に残っているのはこのスクルージ氏、全く帰らずににこの町の領主館に泊まり込んでいるようだ。
本来ならば疲れた身体を癒やすために必要なものや、生活必需品が揃った宿舎があるはずなんだけど、その宿舎には全く帰らずに領主館の仮眠室を頻繁に使っているかのようだ。
もちろん領主なんて仕事をしているいれば寝る間も惜しんで働かなければならないのであろうかもしれないけど、さすがにねぇ。
ストイックで愛国心から来てると思うんだけど、ちょっと狂気じみた印象を感じる。
そんな成果もあり、結果をキチンと出しているスクルージ氏の評判や支持率を見てみると、悪い成績が全く見当たらない為政者の鏡である。
といった内容の反面
当然と言えば当然。光に当たらない部分も存在する。
あたしはフワフワのバスローブを羽織りながら湯浴みへと向かう。
やっぱり現実世界に帰る事ができたんだから、現実世界でやれることは全部したい。 朝食前の湯浴み。貴族であれば湯浴みはゼッタイ行っているはずだ。 だからあたしも今日だけは、本当にゆっくりとVIP気分を味わうつもり。
目覚めたばかりで頭の中はまだポワンポワンとしている。
身体中にザワザワと湧き立つ、寝起きの鳥肌をボリボリと掻いて身体を暖める程度のシャワーを浴びる。
シャワーの蛇口からは大量の湯気とともに、熱いお湯が溢れだすと浴室内が僅かな時間で真っ白な湯気で視界がぼんやりとなる。
こっちの浴室は、シャワー兼サウナの部屋でちょっとした座る場所がある程度で、他は何もない。
室内の温度はこのシャワーからでお湯を、熱湯に換えて流せばいいだけだ。
いくらお高いホテルでスウィートルームといってもやっぱりあってもこんな感じのシャワー兼サウナルームがある程度だろう。
もしかしたら、このクラスで浴室とシャワー室さらにサウナルームといったさんセットを完備している場所もあるかもしれないけど……。
熱を帯びた白い湯気が立ちのぼり、浴室内を満たすと、裸のままでも違和感をかんじない温度になる。足下からお腹周り、胸、両手、首に頭。 全身がポカポカとしてくると、頭の回転も早くなり眠気の帳も消滅する。
足元で垂れ流しにしていたお湯のシャワーヘッドを拾い上げると、ちょうどいい温度に調節する。
壁際から伸びる黒ビカリする長いホース、その先端にはあたしがもっているシャワーヘッドがある。
シャワーヘッドからは大量に溢れるお湯が音を立てて流れ落ちると同時にこれまた音をたてて床へと叩き付けられる。
適温に調節されたシャワーヘッドを何度ももちかえて湯浴みをする。
室内の温度がやや下がってきたけれど、浴びているシャワーの温度が適温なので、違和感は全くない。