★ アサルトドアからの脱出そして、回収
アサルトドア編加筆しました。
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あたしは、領主館の二階へと続く階段を上る。
階段自体にも赤い絨毯が敷き詰められていて、一段一段上る事にわずかな足音が響く。
アサルトドアからの脱出には、思いの他時間が経過してしまった。
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執務室からの脱出が出来たのは、正面の出入り口の扉に宿るアサルトドアを倒した後だった。
執務室の扉を背に、全ての部屋と外へと繋がる経路に宿るアサルトドアを倒したはいいのだけれど、次の部屋へと続く出入り口にその都度、アサルトドアを倒さなければならない。
アサルトドアの中では時間の経過がなくなってしまうのだけれど、アサルトドアの外は、刻一刻と時間が進んでしまう。
早く脱出しなければならない。と思う脱出の欲求を抱いてしまうのも、アサルトドアの思惑なのかもしれない。
アサルトドアからの脱出は、最後の経路を通過するまで、わからない。
あたしの体感ではアサルトドアからの異質な雰囲気からの解放というのを感じられた。
そう、アサルトドアの中は静寂という帳に覆われているのだけれど、帳の外は、やっぱり違うよね。肌に感じる空気とか温度。それに、なんて言うんだろう? 雰囲気が違うって感じかな?
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そして、すごく気のせいなのかもしれないけれど、あたしは感じた。
階段に敷き詰められた絨毯を下りながら、あたしの事を舐めるように見る視線。
最後の一段を降りてから、確認のために立ち止まると振り返る。
二階へと続く階段。真っ赤な絨毯が敷き詰められていて、装飾の彫り込みがされている白い手すりに、天井には闇を照らす大きな魔導灯からのほのかな灯り。
あれから時間は経過していないという感覚を感じられるのだけれど、大きな間違いだ。実際にはかなりの時間が経過しているはず。
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あたりを見回してから思い出す。
階段をゆっくりと上る。執務室へと続く通路を抜け、茶色い扉の前。ドアに触れるのに一瞬の戸惑いを感じたけれど、脱出が完了したのだから、大丈夫だろうと思いながら、扉を押し開ける。
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ついさっきまで、アサルトドアの邪本に閉じ込められていたのが、ウソのように感じる。
頭上のシャンデリアからの灯りは薄暗く、正面には重厚な執務机。左手には沢山の調度品が仕舞われている棚。その向かいには、真っ赤なカーテンで締め切られた出窓。
執務机には一冊の本がおかれている。タイトルも何も記載されていない無地の茶色いハードカバー。そう、全ての元凶であるアサルトドアの邪本。 この本を野放しにする事はできない。
あたしは一度あたりを見回す。主のいなくなった執務室は不思議なくらい静まり返っていて、目を凝らさなければわからないが、閉ざされた深紅のカーテンが波打っている。アサルトドアからの脱出を果たしたのだから、これはただの自然現象。そう、言い聞かせて、それを胸の中にしまい込む。
あたしは静寂に包まれた執務室に踵を返す。
アサルトドア編、いかがでしたしょうか?
臨場感を出すために、時間を大幅に割いてしまいましたけれど、これにてアサルトドア編終了です。
ご迷惑でなければ、ブクマ、評価、感想などいただけたら嬉しいです。
引き続き、ジャスティス オブ ラバー。お楽しみください