表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/96

★プロローグ





 「取引だ!」 




 白髪で筋骨隆々の男は柔らかくもドスの効いた声で、真っ赤なカーテンを背に重厚な執務机を挟みながら眼前に立つ三人組。


 派手な色合いのパンツスーツを着たやや小太りの男性、


【バン=ガード=リタリン】


 皮鎧を身に纏ったヒョロっとしている銀髪の男性。


【ライズ=レンジ=スターリン】


 そして、この二人に相反するような、形のいい胸をほとんど露出しているいやらしいビキニドレスに身を包んだ細身でスタイルのいい栗色のセミロングを垂らしながら大きな瞳を何度も瞬きさせている女性。


【ベニス=シルブレン=ガストロフ】


「ゼルダ公国領、地下貯蔵庫にある一冊の本がある」


 白髪の男性は、三人組に取引を持ちかける。


 「この本を、盗み出す事ができたならば、無罪放免だ」


 白髪の男性は、三人の行方を目で追う。



 その後、その三人の姿を見たものは誰一人いなかった。



    ■ ■

アースキャニオン全域を統治するゼルダ公国は、切り立った山々に囲まれた窪地にある。


そびえ立つ白亜の王城は天然の城壁に守られ、難攻不落の城塞であった。



 このゼルダ公国領には 世界各地から集められた神器や、アーティーファクトと呼ばれる累々の魔道具を厳重に保管している。


 ゼルダ公国のお城の直ぐ近くには、ゼルダ城に並ぶ大きさの派手派手な美術館が存在する。


 その美術館と、王城は石造りの暗い地下通路により結ばれていた。


 美術館側の地下貯蔵庫には、ゼルダ公国が集めた神器やアーティーファクトが木箱に収められて眠っている。



 いくつかある部屋の一つは、光も当たらない、完全な真っ暗な貯蔵庫になっていた。その貯蔵庫には無数の木箱が並び、綺麗に積み上げられていた。木箱の上には表題も著者名も記載されていない無地の茶色いハードカバーの分厚い本がおもて表紙を上にして無造作におかれている。


木箱の上におかれていた本は、誰もいない庫内でバサっと音を立てて開かれると、風もないのにひとりでにページがペラペラと捲られる。



 ページを開きながら、その場でボワッと青白く燃え上がるような光りを放つ。


 青白い炎は周囲を照らすが、やはり周りには誰もいる気配はない。


 床には無数の足跡と、 乱暴に開かれた木箱の破片が散らばっているだけであった。



 開かれた本は、青白い光りを放ちながら沢山の人名のみが刻まれたページの末尾に光りの軌跡を残しながら、文字を刻む。



【エレナ=ミラージュ=クリスティーン】


 開かれた本は青白い残照を残しながら、ゆっくりと輝きを薄れさせるとパタンと、音を立てて閉じられた。




    ■ ■


 油の切れかけた地下貯蔵庫の扉がギギーと音を立てながら開かれると、

足音を殺してはいるが慣れた足取りでに入ってくる一人の人物。


 庫内は真っ暗で、開けた扉から射す光りもない。時間は夜といったところだろうか?


 その人物は、何も見えないはずの暗闇の中を

 勝手知ったる我が家も同然に進むと、木箱の上におかれている本を手にしながら、溜め息まじりに呟く。


「やはり、今回も無理であったか……」


 柔らかさを感じる男性の声。


 一言だけ零すと、男性は手に取った本を持ったまま、その貯蔵庫に踵を返す。




    ■ ■



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ