始まり。
黒いコートを着た少女との再会から程なくすると医者らしき人物が、俺の目の状態を見にやってきた。
俺は、もう誰とも目を合わせたくなかった。アレがもし本当に『過去と未来の罪』であるなら。
俺が、それを知ったところで、どうなるというのか。俺のコスモスを乱さないで欲しい。ただ、それだけなのに。
当たり前と言えば当たり前だが、目を怪我したのだから目で目を見る他ないのだ。否が応でも視えてしまった。そうして驚愕した、その医者の『罪』に。
『19xx年 はつらつ病院赤丸前 脱税』
『20xx年11月16日 はつらつ病院赤丸前 医療ミスによる大量殺人』
『20xx年1月08日 自宅 無理心中』
ーーーーー今は19xx年。ということは医療ミスと無理心中は未来の『罪』だ。
つまり、この医者は…たくさんの人をミスで殺してしまい、それを苦に家族を巻き込んで死ぬ、ということなのだろうか。19xx年のの脱税については、過去のことだ。
俺は、鳥肌が止まらなかった。
もしも。
ーーーーもしもだ。
『俺が彼の医療ミスを止められたなら』
どうなるというのか。
医療ミスで一体何人の人が死ぬのか、分からない。医者の家族構成も知らない。
でも、もし。俺が、その運命を変えられるというのであれば。
罪ありき者に、救いの手を。