再会と罪
罪を犯す人間の心理なんて分かりはしない。でも俺には、その罪が判ってしまうんだ。知りたくなんてない、視たくなんて、ない!
それでも、視えてしまうんだ。
今、目の前で俺の世話を焼いてくれているナースさんは、数年前に万引きを起こしている。それが店側に露呈したのか、していないのか。分からない。でも、悪いことは悪いことだ。バレなきゃ犯罪じゃない。確かに、そうなのかもしれない。しかし、俺の前では、そうはいかないんだ。いかに小さな悪事であっても、それが何の理由であろうと、完全犯罪であっても。俺は判る。
人並みの正義感を持った俺は、病院で目を覚ました後に、この『罪を視る』という事実を叩きつけられた。最初はなんのことか分からなかったが、日時、場所、罪状と視えていては、否が応でも分かるというものだ。無論、自分の周りに罪を犯したものがいると知ると気分が悪くなった。
「おはようございます ナースの原田です 気分は、どうですか?」
俺が最初に視た罪は、俺の覚醒に気がついたナースさんのものだった。
『19xx 6月11日 ダブリーマート 万引き』
ーーーーー最悪の、気分だ。まあ、そんなことは口では言わないが。
「おはようございます ちょっと目は痛みますが、大丈夫です それよりもーーーー」
「この19xx年の6月11日にダブリーマートで万引きってどういうことですか?」
俺は、この表示が誰にでも見えるものだと勘違いしていたのだ。まるで3dのように彼女の顔の前に浮かんでいるんだ、見えないはずがない。当たり前のことだと。そう考えたのだ。
「? す、すいませんなんのことか分かりません 失礼します」
あらら、もの凄い焦ってどっかに行ってしまった。道中で足がもつれかけていたが大丈夫なのだろうか。
ーーん?誰かが入れ替わりで入ってきた。親だろうか。
いや、違う!コイツは!『あの時』の!黒いコート!
「お前ッ!よくも俺の!ーーーー!?」
俺は、数日前に目を切り裂かれたことへの怒りから殴りかかったが、当たらなかった。そう。回避されたのではなく、当たらなかった。
攻撃は、黒いコートの体を突き抜けていた。幽霊だとでもいうのか…?気味が悪いので、体から拳を抜き距離を取る。そうして問いかけた。
「なぜ、あんなことを!」
当然の質問だ。あのような行為は容認出来ないし、したくもない。説明を要求する。
黒いコートの人物は、おもむろにフードを外し、その顔を晒した。
女の子だった。決して女の人ではなく、子供。身長が、かなりあったので性別が分からなかったが顔つきと髪の毛の長さからすると女性ということだけは、分かる。
「いきなり危害を加えたことは謝罪します ですが、これは「必要なこと」だったのです」
外見通り若い声。こんな子供が、俺を苦しめて、それを必要なことなどと宣う。
「必要なこと?ふざけるな! って、あれ?」
「お気づきになられましたか」
ーーーーそうだ、コイツには、さっきの変な表示がない。あれは、ナースさんが、私の視力を試したかったということなのだろうか…?
「いいえ、それは間違った考えです それは私が貴方に与えた「能力」です」
ーーーーな いや、自然に心を読まれたことも、そうだが、先ほどのナースさんの顔に浮かんでいた『アレ』は能力によるものであったというのか。面白い冗談だ。
「なんのジョークか分からないが、自分から出てきたのは良かった 警察を呼ぶぞ!」
こんな冗談を言うために、やってきたのか。腹立たしさで、自然と大声になってしまう。
ーーーーそこで、見てしまった。
俺の大声で、何人かの人物がこちらの病室を覗き込んでいた。
そこには
『19xx年4月28日 自宅 殺人』
『19xx年7月18 ホテルディーム 援助交際』
『19xx年5月20日 上河原中学校 暴力 』
『20xx年11月05日 スーパキヨトノ 置き引き』
よりどりみどりの犯罪経歴、または犯罪予告が顔で踊っていた。
「ーーーーー理解できましたか?つまりはそういうことです 貴方は選ばれたのです」
………………!何を言っている!どういうことだ!選ばれただと?!
ーーーー? 振り向いた時には、そこにはなにもなかった。今までの会話が、無かったかのように。
ただ、これだけは分かってしまった。愛すべき普通は、俺の手元には二度と戻っては来ないのであろうと。
とりあえず書いてみました、つまらなかったらすいません!!