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ある人外さんのお話  作者: 狐月鏡
第2章 女の子と水色ドラゴンとのお話
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第4話

「ここまで来れば大丈夫だろ」


月希は女の子を抱えて少し走り(100km/hくらい)、森の真ん中あたりで足を止めた。そこで女の子を地面に下ろすと女の子はヘタリと座り込んでしまった。息が荒い。疲れてしまったようだ。大丈夫か?と月希が聞くと、


「大丈夫なわけないでしょ!!」


と大声で言われた。

月希はわかっていないが、生身で100km/hを体感すると景色がめまぐるしく変わり、精神力がごっそり削られるものである。ましてや森の中を走っており、木が近くを通るたびに当たらないかとひやひやするのだ。疲れないわけがない。


しばらくたって落ち着いたのか女の子が立ち上がりながらこちらを見てくる。その目は疑問の色に染まっていた。


「あんなに速く走れるなんてあんた何者?」


当然の疑問である。走っただけで100km/hを超える人が普通なわけがない。何も考えていなかった月希は、とっさに思いついた言い訳を話した。


「えーっと、あれだ。魔法魔法。」

「魔法?そんなに速くなるのかしら?」


ソフィーはルイにジト目を向けてくる。この世界には身体強化の魔法はあるにはあるのだが、あんなにスピードは出ないものなのだ。だから月希は、そういう魔法ばっか使ってたから速く走れるようになったんだよ。と言って会話を終わらせた。「まあ、いろいろあるんでしょう」と女の子はため息つきながらしぶしぶという風に追求を諦めた。それから木に寄りかかり、ドラゴンを抱きかかえる。ドラゴンは安心したのか疲れて寝ているようだ。


「で、あんたの名前は何ていうの?」

「俺の名前はルイだよ。」

「ずっと気になってたんだけど、なんで女なのに一人称が俺なの?」

「いや俺男だけど。」

「えっ男!?女にしか見えないわよ…髪の毛長いし女の子みたいな顔だし…」


ソフィアはそういって驚いた顔でこちらを見てくる。今の月希ーールイの容姿は腰まで伸びた銀髪に金色の目。女っぽい顔という地球にいた頃と同じ顔である。人化し始めてからずっと髪の毛を切っていなかったから銀髪が腰の方まで伸びていたのだ。顔の方は地球にいた頃から女の子みたいと言われ続けていた。しかし地球にいた頃は髪の毛が短いおかげでまだ男の部類に入っていたのだ。身長が160cm程度と低いのも相まって、髪の毛が長い今では、もうただの美少女にしか見えない。まあ本人はあまり女の子みたいと言われても気にしていないようだが。最初に幼なじみに恋愛対象で見られないと言った理由はこれである。


「私はソフィア。ソフィーって呼んで?それからこのドラゴンの名前はカリーナよ」

「りょうかい。ところでソフィーはこのドラゴン「カリーナ!」…カリーナと友達なの?」

「そうよ。私が小さい時から一緒に遊んでるの。」


ソフィアはカリーナを撫でながらそう言う。しかしいつもドラゴンを連れて歩けば、今日のように余計なゴタゴタが起きるのは間違いないだろう。そのことをソフィアに聞くと「ま、まあ親が過保護だったから…」と言って目を逸らされた。


「そ、そんなことよりどうすんのよこれから。」

「街には入りたいけど…このままだとドラゴンが目立つよな…」


といってもここにずっと居続けるのも見つかる可能性があるので、2人は街道の方に移動してみることにした。歩いている商人から袋を買い、カリーナをそれに入れて荷物として門を通るためだ。


「そういえばこんなに森の奥にいるのに魔物に合わないなんて珍しいわね」


街道に向かう途中、そうソフィアがルイに話しかけてきた。


「俺がいるからじゃね?」

「なにそれ。それじゃあルイが魔物が恐れるほど強いってことになるじゃない。見た目そんなふうには見えないわよ?」


ソフィアはルイをジト目で見てくる。確かに見た目は線が細く、戦闘するようには見えないだろう。尤も1人の人間と1匹のドラゴンをかかえながらすごいスピードで走ることができるほどの力はあるのだが。そんなことをソフィアには説明できないので魔法が使えるということで通すことにした。


「魔法が使えるじゃん」

「うーん。そうじゃなくてなんか歴戦の風格みたいのがないのよ。」


確かにルイがあんまり強い魔物(ルイから見て)と戦ったことがないのは事実である。


ソフィアは少しの間考え、「もしかしたらカリーナがドラゴンだから恐れて出ないのかもね」と笑いながら言った。実際はルイがドラゴンの中でも頂点に立つくらいのドラゴンだということを魔物が敏感に察知し、近寄っていないというのが真相なのだが、ソフィアが気づくわけがない。


そんなことを話しながら歩いていると街道に出た。もう日が傾き始めているせいか人はもうあまりいない。ルイはきょろきょろとあたりを見回し馬車に乗っている商人風の人に近づき声をかけた。


「すいません。丈夫な袋とか売ってもらえますか?」

「いまかい?」

「はい。すいません」

「いいよ。まあ売れ残りしかないけど…大銅貨3枚と銅貨5枚になるよ。」

「あ、お金…」


そういってルイはソフィアを見る。ソフィアはそんなルイを見てため息をついた。


「お金持ってないの?はぁ…しょうがない。」


ソフィアがかわりに支払う。その後商人は奥から大きめな袋を出してきた。

この世界での通貨は次のようになる。


銅貨10枚で大銅貨1枚

大銅貨10枚で銀貨1枚

銀貨100枚で金貨1枚

金貨100枚で王金貨1枚


だいたいパン一つに買うのに大銅貨2枚必要になることから銅貨1枚は日本円で10円ほどになるだろう。


「うーん…本当はそのままで売りたいけど売れ残りを処分できるとして銅貨のぶんはおまけでいいよ。」

「おお!ありがとうございます!」


無事に袋を買い終わったルイは袋をソフィアに渡した。ソフィアはカリーナを袋の中に入れる。カリーナは眠っているので素直に入ってくれた。起きていたらまたひと悶着あっただろう。


「お金あとで絶対返すね?」

「いいわよこれくらい。それにカリーナのためなんだからあなたが払わなきゃいけないってわけじゃないでしょ?」

「そうだけど…」

「ああもう!ほら早く行こ!日が暮れたら門しまるのよ!」

「そうなの!?」


そんな感じでルイたちは街の方に走り始めた。周りには既に人がいなくなっており、日が沈み始めていた。



――――――――――――



ルイたちが森の奥で話している頃。


カリーナを取ろうとした貴族が護衛をルイたちの捜索に向かわせようとしたが、護衛はが森に少し入ったところでたくさんのゴブリンやリザードマンに阻まれた。そのせいで護衛はルイたちを探すことができなかった。


その時の魔物たちの様子は怒らせてはいけないものに近づかせない、というような妙な気迫があったという…

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