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ある人外さんのお話  作者: 狐月鏡
第2章 女の子と水色ドラゴンとのお話
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第3話

この世界に来てから1年の月日が流れた。


月希はずっと人化をしており、ほとんど永遠に人化できるようになった。しかし寝るときに人化が解けることが発覚し、一日中人化することは滅多に無かった。


それからドラゴンになって、空腹というものが無くなった。空気中の魔素を吸収して生活のエネルギーにしているようで、一日中実験に費やしても全く苦にならない。


洞窟の中は人化してからいろいろ整えた。葉っぱを敷いただけのベットや土をほって砂とか木とか入れて暖炉を作ったりした。一応四季はあるみたいで、冬に風情がないということで暇つぶしで作ったものだ。尤も月希はドラゴンであり、冬ぐらいの寒さはどうってことないのだが。


服についてだが、これは既に解決している。月希が人化の練習始めてからしばらくの月日がたった時、急に体がむずむずしてきて、壁に体をこすりつけたりした。すると脱皮?みたいなことが起き、薄い鱗のようなものが取れた。ドラゴンも脱皮するらしい。その古い鱗のようなものは、割くと絶対切れない糸のようになった。それを使い、コートもどきとTシャツもどきとズボンもどきを作った。布を織った方法は気合だ。服の色が全て銀色になってしまった。仕方ないね。


それから人化状態でも力は変わらなかった。足で岩を蹴ったら破壊できたし、木も根っこごと引っ張りあげることが出来た。しかし防御力は人並みに下がるようで、ミノタウロスのような魔物との戦闘でミノタウロスの攻撃が掠った時に少し切れた。傷はすぐ治ったが。


あと脱皮後の皮で作った服はすごい防御力を誇った。ミノタウロスが持ってる斧で攻撃された時、腕でガードをしたのだが切れる様子がなかった。衝撃は吸収できずに吹っ飛ばされたのだが、吹っ飛ばされて木にぶつかった時も服に傷一つなし。汚れも付かない。洗濯いらずの服が出来上がってしまった。


お返しとしてジャンプ(3mくらい)してミノタウロスの頭を蹴った(衝撃波出た)ら頭がなくなって倒れた。あっけない。蹴った先の地面がえぐれていてびっくりした。


時空魔法についても2つ報告がある。


1つめはドラゴン状態では転移などの時空魔法が使えない。転移などをする時は空気中の魔素を使うみたいだが、ドラゴン状態の時は必要魔力が多すぎて周りの魔力が足りないからだ。しかし草原は魔素が濃くドラゴン状態でも転移できる。はっきり言って無双だった。あの草原は魔素が濃いためか強めの魔物が多いのだが、転移で背後に移動し魔物がこちらを見失っているうちにブレスを吐くという必勝パターンができた。尤も正面からぶつかりあっても楽勝なのだが。ちなみに転移は発動までに時間がかかるため戦闘中には使えず、奇襲や移動に使っている。


2つめは時空魔法魔法の新しい使い方で、なんと亜空間を作ることが出来た。空中に亜空間の裂け目みたいのを作ってそっから手を突っ込む形である。この中に物とかを入れればよく小説とかであるアイテムボックスとやらを再現できると月希はテンションが上がった。ちなみに亜空間の中の時間を止めるか止めないかは自分で決められる。月希は物入れる亜空間の時間は止めている。



――――――――――――



さらに1ヶ月たった。上を見ると、雲一つない綺麗な秋空が見えた。


今、月希は人間の状態で森の中を歩いている。なぜなら月希はこの世界に来てから人間に会ったことがなく、この世界の人間と話してみたいからである。


「とりあえず街道を探せば街に行けるよな」


人化状態では障害なく人語が喋れることがわかっている。喋れなかったら人間に会ってみたいなんて思わなかっただろう。


途中、3mくらいのミノタウロスみたいのや2m近い大きさのケルベロスみたいのや2m近いくまや同じくらいの大きさのモグラみたいのに会った。すべての魔物が普通の人なら楽に葬ることができるほどの強さを持つ魔物である。が、相手が悪かった。会ったのは月希であり、そこらの魔物は鼻歌混じりに葬れる強さを持っている。なのでその魔物達は月希の足を止めることも出来ずあの世へ送られることとなった。


しばらく歩いていると整備された道が見えてきた。左右に向かって道が伸びている。少し迷っていると旅をしている風の男が右から歩いてきた。月希はその人に近づき声をかける。


「すいません。街はどっちですか?」

「街は私が来た方だよ。いま出発したところだからね。」

「ありがとうございます。」


旅人は手をひらひら振ってまた歩いていった。月希は旅人を見届けてから旅人が来た方向に向かって歩き始める。この世界に来て初めて話をして少しテンションが上がっている月希であった。



――――――――――――



度々休憩を挟みながらあるいて5時間ほど、道路に馬車や歩いている人が増えてくる。そのまま歩いていると、街が見えてきた。魔物から街を守るためなのか城壁がぐるりと街を囲んでいる。


商業都市ミンガイル。

その名の通り商業が盛んな街だ。世界中の商人がここに集まってきて街の中は常に新しいもので溢れているらしい。大陸の真ん中にあり、各街へ向かう中継点としてもよく使われる街である。


月希は周りの馬車や人たちを観察する。

馬車を引いている馬は地球の馬とそう変わらない。ところどころに武装している人がいる。商人の護衛だろうか。


冒険者とかっていう職業あるのかな?


そんなことを考えていると門の前の行列についた。しかし前の方が少し騒がしく、何かあったようだ。月希は前にいる冒険者と思われる武装している男に声をかける。


「すいません。何かあったんですか?」

「え?ああどっかの馬鹿貴族がアホやってんだよ」


この世界でもテンプレ通り馬鹿な貴族がいるらしい。月希はそんな人物が起こした出来事に興味が湧き見物することにした。人垣をかき分けて近づいてみると、声が聞こえてくる。


「それは私が買い取ってやると言っているんだ。下賎な平民が持っていていいものではない。」

「この子はものじゃない!私の友達なの!絶対渡さない!!」


金髪のさらさらした髪を一つにまとめた蒼眼の少女と見ただけで高値とわかる服を着たまるまる太った男が言い合いをしているようだ。きっと太っている男の方が噂の馬鹿貴族であろう。対する少女は平民と思われる普通の服を着ており、月希と同い年くらいの気の強い美少女と言える少女だ。唯一普通と違う点は、色の尻尾のようなものがあるものを抱きかかえている点だろう。


「はやくよこせ!」

「きゃっ」


貴族が女の子を突き飛ばす。その拍子に女の子が抱きかかえていたものが宙に放り出された。

それは…


「ドラゴン?」


水色の小さなドラゴンだった。

ルイのように背中から翼が生えてきているのものではなく、前足が翼になっているようなドラゴンだ。ルイが飛龍だとすればこの水色ドラゴンは翼竜と言えるだろう。


「カリーナ!!」


ドラゴンの名前はカリーナというらしい。

女の子と友達ということは人間と共存しているドラゴンもいるということだ。月希もドラゴンの姿で堂々と街に来れるようになるのだろうか。まあ大分先の話だろうが。月希がまじまじとそのドラゴンを見ていると、目が合ったような気がした。すると、宙を舞っていたドラゴンが一生懸命羽ばたきこちらへ滑空してきた。まだうまく飛べないらしくすごいスピードで滑空している。

その結果…


「ブフッ!」


月希の顔に張り付いた。その小さい体はプルプルと震えている。よほど怖かったのだろう。月希はドラゴンを顔から引き剥がし腕で抱きかかえた。少しひんやりしていてぷにぷにしていることから、まだ幼体だろう。目が合って助けを求めたということは同じドラゴンということを本能的に理解したのだろうか。まあ今はそんなことを考えている時ではなく、関わってしまったドラゴンと少女を助けるのが先決だ。


「おい、そこのお前!それをよこせ!」


馬鹿貴族は何か吠えている。が、月希はそれを無視し女の子のところへ向かった。


「大丈夫?とりあえずここから離れよう。この子も怖がっていたし。」

「う、うん。」


女の子は戸惑いながらも頷いた。それを見た月希は女の子に近づき…


「よっこいしょ」


そういってタツヤはそのままドラゴンと一緒に女の子も抱え…


「え?ちょっとなにやって…きゃああああ!!」


跳んだ。

3mほど軽くとび、野次馬で作られていた人垣を超えて、近くにあった森の中に入っていった。月希はドラゴンなので3mほど跳ぶのは余裕なのだが、女の子の場合は違ったようだ。走っている間もずっと叫び声をあげていた。


なんか貴族が怒鳴っていたような気がしたが聞かなかったことにする。

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