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ある人外さんのお話  作者: 狐月鏡
第2章 女の子と水色ドラゴンとのお話
14/17

第13話

時系列でいうと11話の前で、10.5話となります。

思いっきり書くの忘れてたので13話となってしまいましたorz


昼が少し過ぎた時間、ルイはギルドを探すためにキョロキョロとあたりを見回しながら歩いていた。ひとりでギルドに行くのは初めてであり、無事つけるか不安な気持ちからギルドの建物を見逃さないように気をつけているのだ。


ソフィアに言われたとおりに歩き数分、無事に着くことが出来た。ルイはギルドの木製の扉を開け、中を見渡すが、少し人が少ないように感じられる。きっと朝のピークが過ぎたのだろう。まあそれを見越してこの時間に来たのだが。


ルイは空いているカウンターを見つけ、受付の人に声を掛ける。


「こんにちは!」

「こんにち…あ!」


少し驚いた顔でこちらを見ているその人は、この前ルイがギルドに来た時に賑やかだった人だった。


「ルイさんですよね?」

「あ、はい」


急に名前を聞いた受付の人は「ちょっと待ってて下さい!」と奥の方へ走っていき、ルイが首をかしげていると、たくさんの職員と一緒に出てきた。


「お待たせしました!」

「えっと…なんなんですかこの人たち」

「あ、…気にしないでください!」


カウンターの少し奥で並んでいる職員たちは、全員もれなくルイを見ていた。


「あれが男?」

「女の子にしか見えないわ…」

「やばいな…」


(…あー。なるほど)


「すいません。あなたのことを友達に話したらぜひ見たいって聞かなくて…」

「あー大丈夫ですよ。なんかもう慣れました」


受付の人は申し訳なさそうに頭を下げる。友達思いな人だ。


(おれはこの髪の毛と目の色のせいで友達あんまりできなかったからなぁ…あ。この世界でこれはどう受け止められるんだろうか。後でソフィアに聞いてみよう。)


「おほん…それで、今回はどのようなご要件ですか?」


少し自分の中で考え事に走っていると、受付の人が少し大きめな音で咳をした。人前で考え事は良くなかったな。


「えーっと、魔物とかの資料があるところってどこですか?」

「はい。あちらにある階段を登ってもらうと突き当たりに資料室と書いてある扉がありますのでそこになります」

「ありがとうございます」


ルイは受付から離れ、言われた通りに進んでいく。

受付の人の友達たちは、ルイが受付の人と話している間にギルドマスターに怒られ、しぶしぶ戻っていっていた。




(ほー。結構沢山あるなぁ)


資料室と呼ばれた部屋はまるで図書館のように本がびっしりと詰まっており、本棚に近づきよく見てみるときちんと整理整頓されていることがわかった。他に人がいるのかときょろきょろと見回してみたが、どうやら誰もいないようだ。


(さーてと。とりあえず龍がどういう立ち位置なのかだな)


ルイは本棚に書いてある見出しを参考に魔物が載っている本を探す。しばらく物色していると、よさげな本を見つけた。タイトルは『龍』。なんかシンプルで、龍について詳しく書いてありそうなタイトルだ。そばにあった椅子に座り、早速読み始める。


(えーっとなになに?)


ーーここから本の内容ーー


さて、龍と聞いて思い浮かぶのはどのようなことだろうか。伝説?幻?神の使い?いるはずのないもの?

私は実際に現存し、私達人族と同じように考え、行動する存在だと思うのです。龍は滅多に人前には出ず、どこかにある龍たちの集落に住んでいると言われています。しかし、人族の物語によく龍が出てきているということは、ただ集落にいるだけでなく、出てくる時を見計らい、その存在を誇示しているのではないでしょうか?伝説にも人族と協力している龍がいます。それは人族と同等か、それ以上の知能を持っていると言えるのではないでしょうか?伝説などにも、元となる出来事があるはずです。きっと龍は実際に存在し、私達と同じように日々生きているのだと思います。龍はもっと身近な存在で、伝説の中だけでなく、静かに私達を見守ってくれているのではないでしょうか。


よく似たものに、竜というものがいます。こちらは実際に存在が確認されており、私達の生活に深く関わっています。龍との違いはまず知能の高さでしょう。基本的に竜は知能は高いが人族ほどではなく、言語を少し理解する程度です。そして竜は龍の子孫だと言われていて、伝説上で語られる龍は寿命が何万年とあるとされていますが、竜は数百年しかありません。これは祖先である龍の血が薄れてきたからだと思われます。それから体の色について。龍と竜はどちらも自然に則した色をしているのですが、ここに共通点があるのも龍の血が関係しているのではないかと考えます。


そこで私は、龍の血が流れているということは竜について調べれば龍のことがわかるのではないかと考えました。早速、私はある調査を行ないました……


ーーここまでーー


ルイは途中まで読むと天井に顔を向け、手で額に乗せ、ため息をついた。


(龍ってすごいレア…っていうか存在が確かめられてないんかい…)


そのまま本を読み続ける気が失せ、本を本棚に戻すと、今度は魔物全般について書いてある本を探し始めた。


(これでいいかなー)


ルイは少し奥にあった、『魔物図鑑』という名の分厚い本を手に取り、また先ほどのところに座ると、そのまま読み始める。



―――――――――



「ふわぁぁぁ…」


本を置き、立ち上がると大きなあくびが出た。窓を見るともう空がオレンジ色だ。


「そろそろ帰るか」


ルイは本を元に戻すと資料室を出る。いままでの間本を読み続けたのだが、ほとんど覚えてしまった。さすが龍の頭脳とでも言うのだろうか。ちなみに、『龍』と『竜』の総称が『ドラゴン』らしい。


ギルドを出て宿に向かうが、時は既に日が傾いているのに、道は昼と同じくらいの人だかりだ。

結果、行きと道の表情が変わり、帰り道がわからなくなってしまった。

とりあえず何も考えずにふらふらと歩いていると、後ろからたくさんの足音が。こっそり後ろを見てみると、ごつそうな男達が5,6人いる。まあそんなことも普通にあるだろうとまた前を向き直り歩き始めたのだが、右に曲がっても、左に曲がっても足音は消えない。


どうしようかと悩みながら適当に歩いていると、後ろの先頭にいた男がルイの肩を叩いてきた。ルイは即座にバックステップで距離を取り、戦闘態勢とった。


「なんでしょうか…?」

「いや…怪しいものじゃないぜ?」

「怪しくなかったら自分から怪しくないなんて言いません」


男は頭を掻きながら「やっちまったなー」とか言っている。仲間の男達からも文句を言われており、ルイは蚊帳の外になってしまった。


「用がないなら行っていいですか?」

「ちょちょっと待ってくれ。あんた、道に迷ってんだろ?」


ギクッ!


「…い、いやぁそんなことないよ?えっと…ほら。散歩してただけだし?」

「ほんとに散歩ならそんなに慌てねぇだろ…」

「うぅ…」

「で?帰るところはどこだ?」

「……妖精の家っていう宿」

「おお、そこか。なら送ってってやるよ」


男がそう言うと、仲間の男達もうんうんと頷いている。ルイはしぶしぶ送ってもらうことにした。


「…金とか要求しませんよね?」

「しねぇよ!」



―――――――――




案内してもらい、妖精の家の前に着く。それまでの間には、世間話程度で特に何もしてこなかった。悪い人達じゃなかったのかと心の中で驚いていると、宿の扉が開きマスターが出てきて、男達を発見すると小さく驚きの顔をつくった。


「あらー!いつもご苦労さんね!」


元気に挨拶しているマスター小走りで近づき、小声で尋ねる。


「マスター。知り合い?」

「あら。ルイちゃんは知らないのねん。この人たちはね、この街の治安を守る警護隊なのよん。こんな格好だから誤解されることも多いんだけどね」


どうやら本当にいい人たちだったようだ。


「では俺達はこのへんで!」

「ご苦労さま。…ほらルイもお礼!」

「あ、ありがとうございました…」


ルイが急いでお礼をいい、「お仕事頑張ってください!」と言うと、男達全員、顔を赤らめてしまった。


男達はマスターに会釈しながらこの場を離れていく。ルイについて行っていたのは、可愛い子が変な人に絡まれないようにするという警護隊の仕事なのよんとマスターが教えてくれた。



「可愛い子だったな」

「やっぱああいう子にお礼されるから仕事が続くんだよなぁ」

「「「「「それはわかる」」」」」


ルイを無事宿まで送り届けた男達は少し雑談しながら夜の街にパトロールへ戻っていった。



―――――――――



「おそい!!」


宿に入るとソフィアがむくれていた。口調は怒っているが、少し心配の色が見える。


「ごめんごめん。つい本に夢中になっちゃって」

「それでこんな時間?どうせ道に迷ったとかじゃないの?」

「…おっしゃる通りです……」


日はもう完全に落ちている。こんな時間になっても帰ってこなかったら、なにか起きたと思っても仕方が無いだろう。もうあまり遅くに帰ってこないようにしよう!と心に誓ったルイであった。

まあそのためにきちんと道を覚えなければいけないのだが。


「見た目思いっきり女の子なんだから気をつけなさいよ!」

「はーい」


さっき男達が思いっきり照れていたが、ルイは男だ。これは忘れてはいけない。


「あ、そうそう。ソフィアはさ、この髪の毛と目の色ってどう思う?」


ルイはギルドの時考えていたことを聞いてみた。地球にいた時は髪を染めているだのカラコンだの不良だだの悪口をさんざん言われ、あまり人付き合いが良くない方だったのだ。


「え?別にどうってことないわよ?目も髪の色も同じ色(・・・・・・・・・)で綺麗だと思うし…ほんとなんで男なのよ」

「え?目と髪が同じ色?」

「うん同じよ?」


ルイは驚き、急いでトイレにある鏡を見ると、銀髪銀目のルイが映っていた。

地球にいた頃とか龍だった頃は目は金色だったのになんでだろう…

そんな疑問を残しながらも、ルイとソフィアはおやすみとそれぞれの部屋に戻っていった。


「まあわからないものはわからないか…異世界だしね」


ルイは窓枠に腰掛け、そう独りごちると上を見上げる。空には満天の星空がいつものように輝いていた。


(この世界の星空って地球のと比べて綺麗だよなぁ)


ルイはそっと目を閉じる。するとあたりに風が回り始め、一番強くなったところでふっと風が収まった。そしてもう、そこにはルイの姿は見えなかった。

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