三度目の正直とは言いますが、なんだってこんな子しかいな、…あ、もうヒロインが残念過ぎる。
あいあい、あいあんくろー。なんてよく意味の分からない挨拶をしてみた。さて、久しぶりもしくは初めまして、毎度お馴染み 中身はお腰の曲がった還暦婆ちゃん、見た目は麗しのぴっちぴち男子高校生こと、高野 彬史くんだよ☆
いやぁ、長らく間があったから僕自身ちょーっと記憶やキャラが曖昧になってるけど、気にしないでね。
前回のあらすじ。前々回のヤンデレヒロイン(笑)だった残念な美少女代表 天織 綾女さんが精神病棟行きになり、束の間の休息に突如現れた新しいヤンデレヒロイン(笑)!その名も姫押しハンパじゃない、姫城 桜姫さん!
そして僕達2年3組に担任、辿郷 真先生(隠しキャラだが既婚者)にロックオンしちゃった姫城さん。
………あー、うん、疲れた。初っぱなから婆ちゃんにはこのテンション高すぎたわぁ。というわけなので気になる現代っ子は、うぃきさんで【残念 美少女 ヤンデレ】で検索なー。
え、でない?じゃあしーらない。
まあ、結局のところですな、我らが辿郷先生は無事育児休暇に入り、実家がある他県に1年過ごすことになった。事情が事情だし、仕方ないよね。
姫城さんは姫城さんで、相変わらずぶっ飛んだ思考してまして、見かねた学園長が親を呼び出しいざこざ。なんか辿郷先生の隠し撮りとか私物とか、挙げ句 家にまで侵入していたets,ets……とかで…先日、姫城さんも親の意見の元 無事精神病棟というより少年院行きになりましたとさ。
めでたしめでたし。そのうち精神病棟行きにもなるんじゃないか、って学園内では噂されていたり。
とりあえず、一言にまとめると
「あー、ほんと去年は濃かったわぁ」
そう、これは全て去年の話なのだ。
いやはや、光陰矢の如く、とはよく言ったものだよ。この言葉を考えた古人に賞賛の意を贈るよ。
さて。そんな恐怖の1年間(僕ではなくいとこの大翔とか辿郷先生とかその他)を過ごしていた中、なんと、僕こと高野 彬史君に念願の彼女が出来ました!
しかも普通に良い子なんだよね。そして普通に可愛い。
ん?元女なのに平気かって?心配ご無用、僕は至ってノンケです。
微?女性恐怖症になったいとこの高野 大翔には悪いがリア充満喫なう。
「高野くん、待った?」
「松浦さん。ううん、僕も今来たところだよ」
「そっか…よかった」
僕の目の前でホッ、と息をつく彼女こそ、僕のいろんな意味で人生初彼女、松浦 由佳さん。
彼女は1年生の時のクラスメイトで、それなりの仲だった。可愛いなーとは思っていたけど、まさか先週彼女から告白されるとは思ってもいなかった。
なぜOKしたかというと、告白してきた彼女があまりにも可愛かったから。不純?男は今も昔も不純な生き物さ。それに彼女は仲がよかったけど、どこか懐かしいというか、こうなんか分からないけど昔から知ってるような感じがしてたのもあって、かな?
と言いますが…、彼女の名前もなーんか気になるんだよねぇ…。
まあ…、1番の理由は告白してきた松浦さんが、前世で旦那だったジイさんと被って見えたからかも知れない。
ああ、これこそ不純な動機さね。ジイさんは今も元気だろうか。あの人は頑固者だったが、昔から手先が器用で好んで刺繍をする人だった。よく花や鳥を刺繍しては自慢気に見せてきたもんだ。
「――…ぅのくん、高野くん?大丈夫?」
「え、あっ、うん。ごめ、大丈夫」
「…そう?」
いけないいけない。せっかくの放課後デートという青春謳歌中に、僕はなにを考えていたのだ。そもそもあんなごま塩頭なジイさんが、こんな焦げ茶のボブな可愛らしい女子高生と被って見えたとか全国の女子高生に確実に殺られる。
「ね、あそこの雑貨屋に行ってみない?」
「あそこに雑貨屋なんてあったんだ。いいよ、行こうか」
はやく!と繋いだ手を引っ張る松浦さんに、頬が上がる。あー僕の彼女ちょー可愛い!
「んん?」
雑貨屋は今時の女子高生が来店するにしては落ち着いた雰囲気の店で、妙齢の熟年夫婦が好みそうな夫婦茶碗やら、対になった湯飲みやらそういった物が多い。噂のジイさんが好みそうな代物ばっかじゃん。
ちょ、松浦さん趣味意外と渋いんだね!
「これ可愛いね、高野くん好きそう」
そう言って彼女が手に乗せているのは薄緑色の下地に山吹の花が描かれた湯飲み。しかも夫婦茶碗ならぬ夫婦湯飲みの片割れ。
僕の好みドンピシャ。
「ホントだ。でも松浦さんはこっちの方が好きそうだよね」
そう口にして僕が手に取ったのは乳白色の少し大きめの湯飲み。湯飲みには2羽のメジロが梅の木に止まった絵が描かれている。
なんか趣味嗜好がジジイに似ているから、出来心で口にしてしまった。
ちょっと言ってみただけなんだ。
「なんかジイさんと来てるみたい」
あっ、と口を押さえる。ち、ちんもくが痛い。どうしよう…!?
そうヒヤヒヤしていたら、松浦さんは実に楽しそうに、懐かしむように、口に手を当て笑い出した。
…………ん?その笑う際に左手を口に、右手で肘を掴む癖、は、まさか
「……ぶふ、ふ、ふふっ、ふふふ、やっと、か」
「ま、まつうらさん?」
「やっと、私のこと……ううん、俺のことを見てくれたってわけ?」
あ、コイツもしかしなくてもジジイだわ。
「もーさぁ、なんで婆さんは気づいてくんないわけぇ?俺は婆さんと出会ったあんとき気付いたっていうのにさぁ?」
「まって、待って。僕の彼女が、松浦さんがまさかのジジイ?え、うそ、あんな清純系彼女が頑固一徹ジジイの生まれ変わり?」
信じない、僕は信じないぞ!?あんな可愛い笑顔をしていた数秒前の彼女が、前世が男でしかも自分の旦那だったジジイとか!!
「てかさー、婆さん。アンタなんだって男なんかに…しかも顔が良いからモテやがって…処理する身にもなれってんだ」
え、なに?やっぱ一応隠しキャラだったから特典的なアレ?
いやいやいやいや、それよりジジイがなんか物騒な言葉を言わなかったか?ショリがどうとか……ん?
「…………うん、待って待とうか松浦さん。今なんつった?」
「あん?そのままに決まってんだろうが、後処理だよ。後処理」
「それは、なんの…?」
聞きたいようなー、聞きたくないようなー。頭の中でなーんか嫌な音が鳴っているように感じながら聞いてみた。
嫌だなー、なんかコイツぶっ飛んでんじゃねー?
「お前に近付く害虫駆除」
はい、あうとぉーーーーー!!!!!
ダメだー!!コイツはやべぇぞー!!
待ってよジイさんあんな性格してた?それ以前に松浦さんがジイさんで、僕の前世がジイさんの嫁で……ああああ、頭の中が混乱してきた!!
てか今気づいたら僕の好みドンピシャするわけだよ!節々にジジイ臭してたわけだよ!!
そりゃ中身が僕と同じ還暦過ぎた前旦那だったからねぇ!!!
そして今さらだけど松浦由佳って前世の私の名前じゃないか!!!!ばかかっ!自分は馬鹿なのか!!
「なあ――ううん、私はもう松浦由佳なんだし、あんな野蛮な喋り方しないよね?」
ジジイ――…彼女がまた例の癖をしながら、僕が知っている松浦さんが、静かに言う。
「ねえ、私、ずーいぶん昔に言ったよね?『離しはしない』って?なのに1人で勝手に離れちゃうし、長い時間を掛けてやっと見つけたと思ったら男になってるし、しかも私以外の奴にベタベタされてるし。もう皆本当に目障り。でもね、私も交友関係でとやかく言うほど心狭くないもの、だから私に気付いてくれるまでこのままでもいいかなぁ、なんて思ったの」
…………ああ、なんということか。これは今まで影で「イケメンざまぁwwww」やら「たにんのふこー、あっまー」とかふざけていた罰なのか。
「でもね、どれだけ害虫駆除をしようが湧いて出てくるから害虫って呼ばれる害虫の後がたたなくって。だから我慢できずに告白したの?どう?昔にした『私』の告白思い出したよね?今時ないもの、あんな告白」
ええ、もちろん一瞬思い出しましたとも。ラブレターに堂々と墨字で果たし状とか書かれたら………。むしろ昔もないわ。
「好きよ、好き。昔から変わらず私は好きなの。好き好き好きううん、違う愛してる。ああ、ずっと逢いたかった。逢いたかった他の女に邪魔されたとしても、両手足の爪を剥がれようと、本当に逢いたかった私の心臓を抉って悪魔にやってもいいって思えるくらい逢いたかった。愛してる。私、あなたを愛してる。愛してる愛してる愛してる愛してる。なのに、あなたには害虫が寄ってきちゃうんだもん。だから愛を囁く前に片付けたなきゃでしょ?嗚呼、やっと、やっとよ?待ちに待ち望んだわ。」
うっとりとした顔で僕の手を握る 頭ひとつ背が低い彼女。
握られた拍子に、彼女の好みそうだった乳白色の湯飲みが手からこぼれ落ちる。
あ、やべ。そう思う前に僕の視界は彼女でいっぱいになる。
――――がちゃんっっっ!!
足元に落ち割れた湯飲みの音で視界がクリアになる。が、やっぱり映るのは彼女の顔。
「もう2度と離しはしない―――――……ねえ、彬史(由佳)?」
急募 まともなヒロイン。
もうヒロインが残念過ぎる。
。
おまけ
あれから気付いたら、
「由佳ちゃん、ご飯よそってくれるかしら?」
「はいっ、お義母さん」
中身還暦ジイさん、見た目ぴっちぴち女子高生(ヤンデレ ※ここ重要)が我が家に住み着いていました。
「末永く宜しくお願いします、彬史」
あ、これ確実に逃げ場ないわ。
そう確信しながら僕は渡された夫婦茶碗を受け取った。
おまけ 〜了〜
長らくお待たせしました!
ヒロインが残念過ぎるシリーズ、これにて完結しました(*ノ▽ノ)
ありがとうございました!!
・・・・・・ここだけの話、実はこのシリーズの題名、全部文字数一緒って気付いてくれた人いるかなぁ(*゜д゜*)