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役者

 グリフォンだけでなくドラゴンまで狩ってしまったってことで、街は連日、お祭り騒ぎである。

 確かドラゴンの件は秘密にされていたはずだが、今や街中で知らぬ者はいないだろう。

 倒した後なら構わないのか、目撃者が多数いる為に隠し切れなかったのか。

 いずれにせよ、冒険者からだけでなく街の住民からも、その偉業へ対する喝采が赤の勇者達へ送られた。


 実際に倒したのは俺なのだが、勿論そいつを言い出すわけにもいかず、賑やかな通りを横目にエール酒を呷る日々を過ごしている。

 目的は完全に果たした後なので、とっととデイビスへ戻ればいいのだが、同志が祭りに参加してはしゃぎまくってるので無駄に数日を費やしてしまった。

 まあ、戦闘ばかり続いた後だ、こうやってのんびり日常を過ごすのも悪くない。

 

 ちなみに、あの時ドラゴンの首を切り落としたオリハルコンの大剣は大勢の目につき、あまりに知られ過ぎてしまった。

 今後、フレア達が活動する際にあの剣が無いと色々と問題になりそうなので、奴らにくれてやった。

 正直勿体無い事をしたと思う。

 少年が発狂しそうな程に歓喜していたのを思い出す。

 その礼に貰ったのは竜の鱗2枚。

 鱗は一枚で盾にでも使えそうな程に大きく、二枚もあれば防具に加工できるらしいが、生憎加工の仕方が分からない。

 今やアイテムボックスの肥やしだ。

 いずれ機会があれば格好良い装備を作ってみたいと思っている。




 そんなある日。

 俺がいつものように薄暗い宿のラウンジで、表通りの賑やかな声を肴にエール酒を飲んでいると、薄汚れた格好の男性客が入って来た。

 疲れた顔をした旅人風の男で、泥で汚れたケープを脱ぎながらカウンターにいる従業員に話しかけている。

 話が終わると、脱いだケープを脇に抱えたまま、俺の後ろにある席へ背中合わせになるように座った。

 ラウンジには俺以外にも客が何人かいるが、空いている席は結構ある。

 何か意図的なものを感じて警戒してしまう。

 男のもとへ従業員がエール酒を届けると、男は礼を言って一口啜った。


 危険察知が発動していないので敵ではないだろう。

 後ろに座ったのは偶然か。

 気を取り直して俺が酒杯を掴んだ時、後ろから声を掛けられた。


「ボス」


 小声だが、はっきりと聞き取る事ができた。

 俺は無言で持っていた杯をテーブルへ戻す。

 後ろにいる男が何者か分かった。

 オルトロスの構成員、俺の部下だろう。


「振り返らず、そのまま聞いてください」


 そこまで話したところで、従業員が男へ料理を届けにやってきた。

 カウンターとは反対向きに座っている男からは見えないだろうが、足音で察したらしい。

 俺との会話を一旦区切り、料理を並べる従業員に陽気な声で話しかけている。

 エール酒を飲みながら従業員が立ち去るのをのんびりと待つ。

 彼がカウンターへ戻っていったのを見計らってから言葉を掛けた。


「内密の話なら部屋で聞くが?」


「いえ、ボスとレインさん以外には接触を知られたくないのです」


 俺と同志以外って、部下AとBの事か。

 他に誰もいないよな。

 今は‥‥二階の部屋にいるか。


「それで?」


「冒険者ギルドに不審な動きがあります」


 チラリと周囲を窺うも、他の客達は自分の前にある料理以外に興味を持っていないようだ。

 従業員もカウンターの奥にいる。


「具体的に言え」


「名の知れた冒険者達が集まっているようです。ジオーラではなくデイビスに」


 デイビスの街はジオーラとアビコーラの中間地点にある。

 その為、冒険者や商人が立ち寄る事も少なくない。

 が、あくまで通過点の一つとして利用しているだけであり、あんな汚くて治安の悪い所に長居はしたくないはず。

 活動拠点にするなら、すぐ傍に大都市ジオーラがある。


「なるほど、不審な話だ」


 わざわざデイビスに冒険者が集まるって事は、何か理由があるのだろう。

 冒険者としての仕事を行う上で必要な理由が。

 俺にとっては好ましくない内容だろうがな。

 

「デイビスへ戻る前に、リューイって村へ寄って下さい。詳しい話はそこで」


「村の位置は?」


「デイビスの北東、ジオーラ寄りですね。地図を渡します」


 俺が前を向いたまま後ろへ手を伸ばすと、掌に何かが乗せられる。

 手を戻して確認すると折りたたまれた紙切れがあった。


「村へ着いたら?」


「山鳥亭って宿へ。貸切にしておきます」


 リューイ村の山鳥亭ね。

 少し遠いが、事情が事情なだけに仕方ないだろう。

 紙切れを開いて村の位置を把握しておく。


「それと、到着したらで結構ですので従者の二人とは別れて下さい。帰りの馬はこちらで用意します」


 やけに二人を警戒しているな。

 この旅の間はずっと世話になってるし、無茶な命令にも嫌な顔一つせずに応えてくれている。

 いやまあ、嫌な顔をする時はあるけどね、裏切り者とは思いたくない。


 一応理由も知りたいところだ。

 俺の疑問が伝わったのか、男はそれに答える。


「向こうさんにボス達の動きが筒抜けなので。一番近くにいるあいつらが怪しいって事ですよ」


「そうか‥‥」


 筒抜けなのか?

 軽く返事したが、考えれば結構深刻な問題だ。

 フレア達と接触している事もバレてるのだろうか?

 俺や同志はともかく、あいつらにとっちゃ相当マズい事態じゃないのか。


 そんなことを考えていた時、二階へ続く階段から部下AとBが降りてくるのが見えた。

 男も気付いたのか口を閉ざす。

 AとBは俺を見つけると礼をしてから近寄って脇に立ち、デイビスへ帰る段取りを伝えてきた。

 後ろの男は、こいつらが来てから何も喋らない。

 しばらくして料理を食べ終わったのか席を立ち、料金を払って宿を出て行った。


 出て行った男と入れ替わりに、へべれけに酔った同志が入って来た。

 どっかで聴いた事のある唄を大声で歌っている。

 俺達に気付くと、よたつきながら近付き、突然、俺の頭にチョップを仕掛けてきた。

 意味が分からない。

 やった本人だけ、一人腹を抱えて笑い転げている。

 周囲の客から放たれる白い視線が痛い。

 部下AとBはいつの間にか距離を置いて他人の振りをしている。

 俺は周囲に頭を下げながら同志の腕を引っ張って二階の部屋へ戻った。


「おい、明日帰るぞ酔っ払い」






 


 





「リューイの村ですか?」


 アビコーラを出発して三日。

 そろそろデイビスの街が見えてくるという頃、あの男に言われたとおり、リューイの村へ寄る事を伝えた。

 当たり前だが部下AもBも首を捻っている。


「行くのは構いませんが、デイビスを通り過ぎますよ。一度戻りませんか?」


 部下Aが答える。

 多分、面倒臭いんだろう。

 ちょっぴり表情に出ている。

 

「何しに行くんだよ?」


 同志も乗り心地の悪い馬車の旅はお嫌いらしい。

 部下と一緒になって反対してくる。


 ちなみに同志には例の男の話は伝えてある。

 伝えてあるのに、この発言。

 すっかりお忘れのようである。


「いいから行け。命令だ」


 それを強引に黙らせて村へと向かわせる。

 同志だけがギャイギャイと煩かったので、魔法で眠らせてやった。

 三回も抵抗しやがったのには驚いたが。



 



 デイビスの街を通り過ぎて数時間。街道から脇道へ外れてさらに一時間。

 周囲を森林で覆われた細道を通り抜けたところに、その村はあった。


 村は木の柵で囲われており、道沿いにいくつもの木造家屋が連なっている。

 村の中央には大きな鐘が取り付けられた教会らしき建物も見える。

 勿論、教会も木造である。

 鋭角的な形状をした教会の姿は、平屋ばかりの村の中で一際異彩を放っている。

 村自体はそれほど大きくなく、少し高い所に立てば全体を見渡せてしまうだろう。

 柵の外側には畑が村を囲むように作られているが、見た限りでは作物らしきものは何も無い。すでに収穫済みなのだろうか。良く見ると掘り返した跡が沢山あるので、まあ、そうなのだろう。


 俺と同志は馬車から降りると、言われた通り部下AとBに帰還命令を出す。

 二人は「なぜ急に?」と訝しんだようだが、帰りたい気持ちが勝ったのか素直に従ってくれた。

 森林の奥へ消えていく二人を見送ると、フード付きの外套を羽織り、村の中へと足を踏み入れる。


 村の中には人が結構沢山いた。

 こういった場所では力仕事が多いのか、男も女もやけにガタイの良い奴らが多い。

 それに高齢者が全然いない。若い奴らばっかりだ。

 観光がてらに村の様子を見て回っていると教会の鐘が鳴った。

 歩いていた村人達がその音を聞き、一瞬だけ立ち止まる。

 しかし、その後、何事もなかったかのように動き出す。


「同志、あからさまに怪しいんだが」


 雑貨屋の店員は全身に刀傷のある筋骨隆々の男。

 農耕馬に餌をやっているのは底冷えのする威圧感を放つ隻眼の女。

 井戸に水を汲みに来た男は右手を一切使わず、左手だけで桶を引き上げている。


「どう考えても罠だろ。知っていて受けたんじゃないのか?」


 逆に冷たい視線を送られてしまった。

 同志は薄々感付いていたらしい。


 村人の格好をしているが、こいつらみんな冒険者だろう。

 さっき鳴った鐘の音は俺達の到着を知らせる合図かもしれない。

 要するに、この村へ寄るよう伝えた男に嵌められたって事だ。


 俺だって罠の可能性を考えなかったわけじゃない。

 ただ、そんな事をする必要性を思いつかなかったのだ。

 わざわざ呼び出さなくても、オルトロスの拠点はデイビスにあるのだから、襲おうと思えばいつでも襲える。

 デイビスにだって冒険者ギルドはあるのだ。

 第一、俺らと部下A、Bとを引き離す理由が無い。


 あ、デイビスに真偽を確かめに行かれると困るからか。

 冒険者がデイビスではなく、リューイの村に集まっているとバレたら作戦は失敗だからな。

 部下を信じるなってのは、そういう事か。納得いった。

 AとBを信用していれば、もっと早くに気付けたかもしれない。

 すまぬ。


「せっかく舞台を整えてくれたんだ。受けなきゃ悪いぜ」


 同志はそう笑って俺の背中を叩く。

 少しばかり落ち込みそうだった俺も、それで気を取り直した。

 

 そうだな。

 今更悔やんでも遅い、なら‥‥とことんまでやったろうじゃねぇか。


 こうなると部下達を帰したのは都合が良い。

 たとえこれが罠であろうと、俺達二人だけならいくらでも切り抜けられる。

 どうやら村にいるのは住民に扮した冒険者達のようだし、派手にやっちまうのもアリだな。

 それに部下A、Bが敵のスパイじゃないなら、フレア達の事も漏れていないはず。

 憂いも無い。


 適当に歩いていると、村の中央寄りに教会を除いて唯一の二階建ての建物があった。

 左右を民家に挟まれた少し大きめの古屋で、看板には『山鳥亭』と書かれている。

 どうやら、ここが目的の場所のようだ。


 入る前に周囲を見渡す。

 何人かがこちらを窺っていたが、俺と目が合いそうになると、そそくさとその場を離れる。

 『人物鑑定』で確認すると、職業欄には『戦士』『魔術師』『神官』等々、出るわ出るわ罠である証拠がわんさかと。

 この村の住民が戦闘民族か何かでも無い限り、クロと判断して間違いないだろう。


 冒険者ギルドは俺達の強さを充分に知っている。

 知った上で勝機ありと考えているのなら、油断はできない。


 いっそこのまま帰ってやろうか。

 そんな考えが脳裏を過ぎる。

 入念に準備された全て無視して帰って寝る。

 最高じゃん!

 企画した奴の泣き顔が目に浮かぶようだ。


「おら、行くぞ」


 なんてことを考えていたのだが、同志が扉を開けてしまった。

 残念。

 まあ、俺も本気で帰ろうとは思ってなかったしね。

 気持ちを切り替えて建物の中へ入る。


 宿の内部は至って普通の造りだ。

 入ってすぐの左手にカウンターがあり、ガタイの良い受付の男がいる。

 右手には食事をするための広間があって、そこにテーブルと椅子が並べられていた。

 窓際にあるテーブルには若い男が座っている。

 ガタイはあまり良くない。

 こちらに気付いたテーブル席の男は、大声を出して俺達を呼んだ。


 おい、普通はな、下っ端が首領を座ったまま呼び寄せるなんて真似しねーんだよ。

 もうちょっとマシなエクストラ使え。

 カウンターの男が怒気に似た何かをその男へ向けたが気付かない振りをする。

 まずは相手の出方を窺おうと男のテーブルへ近寄る。


「待ってたぜ首領。ま、座れ」


 コイツ、やる気ねーだろ。

 もし、本当に部下だったとしてもぶん殴りたいわ。


 と、思ってたら同志がぶん殴った。

 鼻っ面に思いっきり拳に打ち込まれた男はもんどりうってぶっ倒れる。

 突然の事だったので、俺も反応できずポカンとアホ面のまま同志を眺めていた。

 同志は倒れたそいつの髪を掴んで引き起こすと、鼻血まみれの顔面をテーブルへ叩きつける。

 男が何か悲鳴みたいなのを上げているが、お構いなしに三度、四度と打ち付ける。

 七度目にしてテーブルが壊れ、ようやく同志も掴んでいた髪の毛を離す。


「てめぇ、さっきから誰にクチ聞ぃてんだッ! あぁ!?」


 顔を抑えてうずくまったままの男の横腹を蹴り上げながら同志が怒鳴る。

 そこで気付く。

 同志はわざとキレた振りをしているのだと。

 ここまで舐めた態度を取られて怒らないと、俺達が罠と気付いている事がバレてしまう。

 そう、バレている事がバレてしまう。ちとややこしい。

 とにかく、同志にしては、なかなかの機転である。


 が、やり過ぎると、それはそれで向こうさんの予定が狂ってしまうだろう。

 ここいらで止めておくか。


「同志、そのくらいでいいだろ」


 同志の肩に手をやり、そこまでにしとけと押し留める。

 驚くほど素直に従う同志。

 やはり演技だったようだ。

 ちょっとだけ「これ本気じゃね?」と疑った俺を許せ。


 テーブルが壊れたので、別の席に座り直す。

 鼻を鳴らして同志も俺の隣へと腰掛け、足をテーブルの上に行儀良く乗せた。

 顔中を血まみれにした男は、よたよたと立ち上がり、俺達と対面するよう反対側の席に座る。


 おい、まずは首領への非礼を詫びなきゃいかんだろ。

 あと下っ端が勝手に座んな。

 誰だよ、こいつ選んだ奴。


「す‥‥すんませんでした。勘弁して貰えませんか?」


 同志が険しい顔で睨んだため、男はようやく謝罪を口にした。

 少し遅れたが一応は謝ったし良しとしようか。

 再び同志の出番がなくて助かった。

 俺はとっとと話を進めようと男へ切り出す。


「話を聞こうか、簡潔にな」


「俺はドギーって言います」


 知らんわ。

 名前なんて聞いてねーよ。

 要件を言え、要件を。


 苛々していると、受付にいた男がワインの瓶とグラスを二つ持ってやって来た。

 俺と同志の前にグラスを並べ、そこへワインを注ぐ。

 血まみれの男がニコニコした顔でそれを勧める。

 

「俺の奢りです、グイっといっちゃって下さい」


 奢りって何だよ、当たり前だろ!

 首領にカネを払わせる気か!

 何とかしろコイツ!

 気付かない振りする方が難しいわ!


 突然、ピシリと音がした。

 瓶を持つ受付の二の腕が細かく震えている。

 見ると、ワインの瓶にうっすらヒビが入っていた。

 どうやら、かなりお怒りらしい。

 だが、目の前に座っている男は全く気付いていないようだ。


 受付の男が一礼して立ち去ると、血塗れの男は再びワインを勧めてきた。

 「いいから話を続けろ」と言っても「飲んでください」の一点張りだ。

 こうもしつこいと毒でも入ってるんじゃないのかと疑ってしまう。

 けれど、飲まないと同じように何度も勧めてくるだろう。

 グラスを手に持つ。

 危険察知が発動した。


 入っとるがな、毒。


 さて、どうしたものか?

 飲んで倒れた振りをするべきだろうか。

 それとも、飲まずに話を進めるべきか。


 なんて悩んでいる間に同志がグラスを空にした。

 ステータスを確認すると、バッチリ『毒』状態になっている。

 体力が結構な勢いで減っている。

 普通の人間なら一分かからずにお陀仏になる減りようだ。

 もっとも、同志の桁違いの体力の前では微々たるものだが。

 しかもこいつ、寝ると全快するしな。


 俺も同志に倣ってグラスを呷る。

 一気に飲み干すと、テーブルにグラスを静かに置く。


「で、話は何だ?」


 目の前の男が明らかな狼狽を見せている。

 まあ、こんな猛毒を飲ませても倒れないのだから当然だろう。

 生憎だが、俺には『状態異常無効』スキルが付いている。

 毒なんざ効きゃしない。


 さて、向こうさんはどう出る?

 ごまかすか、別の手で来るか?


「おい、ちゃんと毒入れたのか!」


 なんと大声で叫びやがった。


 はい終了。

 はい終了。


 もうどうしようもねぇわ。


 受付の男は怒り心頭といった表情でカウンターに拳を叩きつける。

 そして奥にある扉を力任せに開いて怒鳴った。


「お前ら出て来い!」


 すると、扉の向こうから「え、マジで?」「なにやってんだよ」などといった言葉が飛び交う。

 しかもなかなか出てこない。

 悲壮な顔をした受付の男が再び拳をカウンターに叩きつける。

 ここまでくると、流石の俺でも同情せざるを得ない。

 ハラハラした顔でこちらを窺う大根役者を無視し、同志に解毒薬を渡して、少し待つ。


 しばらくして、十数人の若い男達が奥の扉から出てきた。

 全員が十代半ばから後半といった少年達だ。

 少年といっても、顔や腕に蛇の刺青をしたガラの悪そうな連中である。

 全員が同じ蛇の刺青を入れているから、何かのグループなのだろう。

 剣やナイフを持っているが、鎧の類は身につけていない。

 一言で表せばチンピラ。

 どう考えても俺達を倒せるような奴らじゃない。

 逆に不審が募る。


 そういえば、いつの間にか受付の男がいなくなっている。

 逃げる為の時間稼ぎか?

 良く分からない。


「ドギー、ヘマしてんじゃねーよ」


 少年達の一人が血塗れの大根役者を笑う。


「うっせぇ! 最初からこうしてれば良かったんだよ!」


 仲間が来て気が大きくなったのか、大根役者は胸元からナイフと単行本くらいの大きさがあるマジックプレートを取り出し俺達へと見せ付ける。

 少年達は笑いながら俺達を取り囲み、甲高い声で煽ってくる。


「同志、こいつらは本命じゃなさそうだぜ」


「ああ、使い捨ての駒だな」


「毒が効くか試すだけの駒か? なら別の奴でも良さそうだが?」


「だから誰でも良かったんだろ」


 ああ、納得。

 それで倒されても構わないチンピラにやらせたのか。

 けどまあ、向こうも効けばラッキー程度の認識だろう。

 本気で倒せるとは思ってないはず。

 なら、次はどんな手で来る?


「おい、こいつら動かねぇぜ?」


「あれぇ? ビビっちゃったかなー?」


「平気平気、俺、すっげぇ優しいよ。ベッドの上なら」


 ゲラゲラと少年達の下品な笑い声が室内に響く。

 調子に乗った一人がテーブルに置かれていた毒入りワインを掴み、俺の頭にぶっかけた。

 爆笑が巻き起こる。




 うん。

 とりあえず、このクソガキどもシメとくか。







スナック感覚で読める小説が書きたい

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