オルトロス 後編の前編【ゲルニカ】
同志が拳をテーブルに叩きつける。
残っていた客達が何事かと振り向くが、同志の目には入っていない。
俺は酒場へと戻り、宿で見た内容をそのまま伝えた。
話を聞いた同志が怒り狂うのは当然である。
俺の腹も煮えくり返っている。
だが、こういう時こそ冷静さが必要とされる。
「ダスティ、これはどっちの仕業だ?」
気まずそうな顔で俯いているダスティに聞く。
ゲルニカか、ルドルフか。
それとも両方か?
俺達の仲間に手を出した以上、相応の礼をしてやらないといけない。
ウルカに傷一つでもあれば絶対に許しはしない。
俺の表情から怒りの強さを知ったのか、ダスティはたじろぎながら答える。
「ル‥‥ルドルフさんじゃ無ぇと思う。
あの人は、こんな足が付くような下手は打たない」
そういえば、影武者であるこいつも、魔剣を手に入れるよりも秘密の保持を優先していた。
奴の格言は「情報の共有は最小限に」だったか?
その言葉からも分かるように、ルドルフという男は相当に慎重な人物のようだ。
そんな奴が今回のように人質を取って俺達を呼び出すなんて行動を取るとは思えない。
「ならゲルニカか」
消去法では、そうなる。
首領は二人しかいないのだから、ルドルフでなければゲルニカしかいない。
ダスティは頷く。
「あの人なら、やるかもしれない。
だとしたら‥‥」
ダスティは顔を青くする。
よほどゲルニカが怖いらしい。
「あの人はヤバい。マジでヤバいぞ‥‥!」
人攫い野郎なんだから外道に決まっている。
何を今更言ってるんだコイツは。
同志が不快そうな顔で鼻を鳴らす。
ダスティは恐縮したように肩をすくめた。
もう一つ、聞いておきたい事がある。
「そいつの部下に、悪魔を倒せるような猛者はいるか?」
下位とは言え、『フロストデビル』はレベル50の悪魔だ。
その辺りのチンピラが勝てるような相手ではない。
だが、ウルカを攫った奴は、それを倒している。
「ゲルニカさんなら楽勝だ。戦ってるところは見た事ねぇが、相当に強いって話だぜ」
ゲルニカってのはそんなに強いのか?
まあ100人以上の荒くれ者を纏める立場だ。
それなりの実力が無いとやっていけないのだろう。
しかし、わざわざ首領が出張ってくるか?
普通は部下に任せるだろう。
「他にはいないのか?」
俺の問いに、ダスティは顎に手を当てて考えている。
「商品となる魔獣を狩ってくる奴らがいる。そいつらなら悪魔も倒せるかもしれない。
マンティコアを捕獲した事もある腕利き達だ」
マンティコアという言葉に俺も同志も反応する。
「‥‥マンティコア?」
「ああ、移送中に逃げ出しちまったがな。
せっかく子爵様が高値で買い取ってくれると言ってたのによ」
勿体無ぇと呟くダスティを睨みつける。
あの騒動の原因はオルトロスだったのか。
その所為でウルカは殺された。
生き返った今も、オルトロスによって攫われている。
因縁だなぁ‥‥ウルカ。
中央区というのは富裕層がいる石壁の向こう側にあるエリアのようだ。
暗い夜道を、同志とダスティを引き連れて歩く。
ダスティは最初「殺されるぅ!」と喚いていたが、同志が「絶対に守ってやる」と背中を叩いて無理やり納得させた。
こいつがこれだけ怯えているところを見ると、ゲルニカという男は相当に危険な人物のようだ。
俺も同志も戦闘においては他の追随を許さない能力があるが、頭の方には難がある。
ウルカという人質を取られている今、相手が頭脳戦を仕掛けてきた場合は、厳しい対応を迫られる事になるだろう。
「絶対に守ってくれよ! アンタ達の下に付いたんだからな! 頼むぞ!」
ダスティが同志の服の袖を掴んで、何度も懇願している。
同志は、煩く喚くダスティに律儀に相槌を打っていた。
ここいらで覚悟を確認しておいた方がいいだろう。
俺は足を止めて、ダスティの前に立つ。
そんな俺を見て、同志は何も言わず、同じように立ち止まる。
「ダスティ、再確認だ」
怪訝そうな顔で俺を見るダスティ。
「何があっても俺らを裏切るな」
ダスティの目を見てそう告げる。
「裏切らない限りは絶対に助けてやる。だが‥‥」
目を逸らそうとしたダスティの顔を掴んで、無理やり正面を向かせる。
「そうでない場合は‥‥分かるな?」
ダスティが顔を上下にぶんぶんと振る。
これは勝負だ。
俺とゲルニカ。
ダスティにとって、どちらの方が恐ろしいかを競うゲーム。
門の手前まで来た。
篝火の前で談笑していた門兵が俺達に気付き、立ち上がる。
ダスティがそこへ近づき、何回か言葉を交わすと門兵の一人が合図を送る。
ルドルフの影武者なだけあって門兵とも顔馴染みらしい。
石壁に嵌められた木造の門がゆっくりと開いていく。
門を抜けたすぐそこに、老齢の執事らしき男がランタンを手に立っていた。
ステータスを確認してみたが、レベルも1。職業も『執事』と怪しいところは何もない。
執事はダスティを見つけると、慌てたように駆け寄って来る。
俺達が目当ての人物である事を確認し終えると子爵邸まで案内すると言ってくれた。
気のせいか執事の顔色が悪い。
歩き方もぎこちなく、何も無いところで躓いたりしている。
同志と顔を見合わせる。
執事に声を掛けるが、彼は何でも無いと作り笑いを浮かべた。
何も無い‥‥わけが無い。
万一の事態に備え、ダスティに『シールド』を掛けてやる。
これで一度だけなら、どんな攻撃も防いでくれるはずだ。
子爵邸は中央区のさらに中央にある大きな洋館だった。
いくつもの窓から明かりが漏れている。
執事に案内されるまま、門を潜り、屋敷の中へ足を踏み入れる。
広い玄関を抜け、吹き抜けになっている煌びやかな廊下を歩く。
警戒しつつ進むが、今のところ危険察知は発動しない。
廊下の途中にある、いくつもの部屋の一つ。
その前でで執事が足を止める。
彼はノックもせずに、その重厚な扉を開けた。
執事はドアノブを手にした体勢のまま頭を下げ、俺達に部屋へ入るよう促す
執事が頭を下げた際、その首に首輪のような物が付けられている事に気付いたが口には出さない。
同志も気付いたようだが、チラリと俺の方を見ただけだった。
首輪の中央に嵌められた金属片。あれは恐らくマジックプレートだ。
同志が部屋の中へ入る。
ダスティは腰が引けていたが、首根っこを掴んで引き摺っていく。
部屋は書斎のようだ。
壁沿いに背の高い本棚が並んでいる。
中央には小さなテーブルが一つ置かれており、その左右に革張りのソファがある。
部屋の中には誰もいない。
代わりにテーブルの上にメモと、首輪が3つ置かれていた。
『魔剣を置いて、首輪を付けろ』
執事を睨む。
彼は滝のような汗をかきながら、俺達に言われた通りにするよう告げた。
ウルカと引き換えでなければ渡すつもりは無い。
が、その交渉をする相手すらいない。
この執事は奴らの仲間というよりは、脅迫されている被害者だろう。
こいつに何を言っても仕方がない。
今はウルカの身の安全を優先しよう。
フラガラッハを取り出し、テーブルの上に置く。
そして首輪を手に取る。
金属でできた首輪の中央に埋め込まれているのは、どう見てもマジックプレートだ。
どんな魔法が込められているかは分からないが、好意的なものであるはずが無い。
舌打ちしながらもそれを首にはめる。
相手の言いなりになるのは腹立たしいが、ウルカの居所が分からないうちは強攻策も取れない。
俺達全員が首輪を付けたのを確認すると、執事は再び付いて来るよう告げた。
同志が忌々しげにテーブルを蹴り倒す。
それをダスティが必死に宥めていた。
首輪をつけた以上は、相手の機嫌を損ねる行為は慎んで欲しいらしい。
効くか。こんな劣等魔術。
だがウルカには有効だ。彼女のワンピースも首周りは保護していない。
標的をウルカに合わせられたら危険だ。
ダスティの言う通り、従順な振りをして機会を窺うのが得策である。
吹き抜けの廊下の突き当たりにある扉の前まで案内される。
執事が扉を軽く叩き、声を掛けると、扉の向こうから男の声が返って来た。
メイド服を着た女性が扉を開けて、中から出てくる。
俺達に入るよう伝えると、扉の脇へと立ち控えた。
執事も中へは入らないようだ。メイドのすぐ傍で頭を下げたまま動かない。
正念場だな。
俺は深呼吸をして乱れた息を整えると、部屋の中へ足を踏み入れる。
長方形のテーブルが中央に置かれた広い部屋だった。
おそらく食堂だろう。
高い天井からは真鍮で造られたシャンデリアが下げられている。
左の壁にはメイド服を着た女性達、右の壁には明らかにオルトロスの構成員と思われるガラの悪い男達が並んでいる。メイドの首には俺達のものと同じ首輪が付けられている。
構成員達はダスティの顔を見て、驚いたように互いに顔を見合わせている。
ああ、こいつがルドルフの影武者って事は知らないのか。
ルドルフ本人が来たと思ったのかもしれない。首輪を付けて。
屋敷の主である子爵が座るであろう上座の席には、派手な柄シャツを着た髪の長い優男が腰を降ろしていた。
その顔は浅黒く、髪の間から長く尖った耳が突き出ている。
油断無く俺達を見据え、マジックプレートの発動体らしき金属片を手にしている。
(ダークエルフ‥‥!?)
俺も同志も驚きを隠せない。
魔物を除けば人間以外の種族を見たのは初めてだ。
この世界には亜人はいないと思い込んでいた。
ダスティだけは知っていたのか、ダークエルフに向かってオドオドしながらも一礼をする。
こいつが礼を取るって事は、あのダークエルフがゲルニカなのか?
人物鑑定で確認を取る。
【名前】 ゲルニカ
【Lv】 2
【種族】 人間 【職業】 盗賊頭
【HP】 22/22
【MP】 0/0
ゲルニカだった。
こいつが‥‥この男が間違いなくゲルニカだ。
名前も偽名ですら無かった。
ダークエルフと言えば、色々なゲームで優秀な魔術師やアサシンとして活躍する種族。
ダスティの話でも、ゲルニカはとんでもなく強いとの事だった。
案の定、他の奴らよりもレベルがずば抜けて高――
低いわ!
人間じゃねぇか!!
何なんだゲルニカって野郎は。
レベルは低いし、ダークエルフの格好をしているが人間。
良く分からない男である。
同志の方を見るが、こいつは気付いていないようだ。
ゲルニカは俺達が部屋へ入った事を確認すると、席に着くよう促した。
壁際にいたメイド達が、俺達を席へと誘導する。
長方形のテーブルの先端だ。丁度ゲルニカが座る席の反対側になる。
俺が真ん中に座り、同志が右、ダスティが左の席に着く。
ゲルニカとテーブルを挟んで睨み合う。
こいつがゲルニカだという事は分かった。
だが、分からない事もある。
ここはヒクサルト子爵って奴の邸宅のはずだ。
その子爵本人はどこにいる?
部屋を見回すが、それらしい人物は見当たらなかった。
そういえば執事には首輪が付けられていた。
メイド達の顔色も優れない。
ちょっとキナ臭くなってきたぞ。
部下らしき男が扉を開けて入ってくる。
その手に握られているのはフラガラッハだ。
ゲルニカのすぐ傍まで来ると、持っていた剣を渡す。
ゲルニカは受け取った剣を感心したような顔で眺める。
「本物のようだな。ユニコーンの杖といい、どこで手に入れた?」
「ウルカを返すのが先だろ」
問いには答えず、こちらの要求を伝える。
ゲルニカは少し眉を顰めたが、特に気分を悪くした様子も無い。
いやらしくニタリと笑い、首元を手刀でとんとんと叩く。
「わかっているだろうが、お前らが付けた首輪には爆破魔法のプレートが付いている」
やはりそうか‥‥。
鋭く奴を睨むと、奴は気味悪く笑いテーブルの上にある金属片を手に取った。
「反抗的だな、少しは立場というものを教えてやるよ」
次の瞬間、壁に控えていたメイドの一人が壁と天井に血糊を撒き散らしながら崩れ落ちる。
周囲にいたメイド達の絶叫が耳をつんざく。
こちらが何か言おうと口を開く前に、ゲルニカが気勢を制した。
「おっと、動くなよ。今のはお前たちに対する警告だ。
部下の報告では大層腕が立つようだが、忘れてもらっては困るぜ。こっちにはあの宿にいた娘が人質としているんだからなぁ!
もちろん、あの小娘にも同じ首輪を付けている。妙な真似をしたら分かってるよな?」
なるほど‥‥。
ダスティが言うとおりのクソ野郎だ。
同志が怒りに肩を震わせ立ち上がろうとしたのを、力ずくで押さえ込む。
ここで反応を見せるのは得策ではない。
人質が有効に機能していると思われてしまう。
だから、取る行動はその逆だ。
「なら‥‥こっちの報告は聞いているか?」
俺は首のなくなったメイドに向けて片手を挙げ、蘇生魔法を唱えた。
奴の目の前で光が収束し、メイドの首が修復される。
メイドが生き返るのを見てゲルニカが驚愕する。
「人質が何だって?」
椅子の背凭れにふんぞり返って足を組む。
ゲルニカってのは、ちょっとでも弱みを見せれば付け込んで来るタイプだ。
強気に出るのが正解だろう。
死者の蘇生が出来るのであれば、人質なんて意味を成さない。
ゲルニカが少しだけ焦りの色を見せたが、すぐにいやらしい笑みに戻る。
「忘れたかな? お前達の首にも――」
「これ邪魔だな」
俺は首輪を引き千切る。
慌てたゲルニカが首輪を爆発させたが、勿論全く効きはしない。
それを見て、同志も同じように首輪を壊した。無論爆発なんて無視だ。
ダスティの首輪も爆発したが『シールド』の魔法を掛けてあるので、奴にも怪我は無い。
全員無傷だ。
「な‥‥なな‥‥!?」
今度こそゲルニカは完全に狼狽した。
奴の持ち札は、この瞬間に全て崩れた。
元よりダークエルフの威を借る小物だ。
こいつへの脅威なんてものは存在しない。
あとはぶちのめすだけであるが、まずはウルカを取り戻しておきたい。
「もういいか?」
同志が聞いてくる。
かなり堪えていたのだろう。握り締めた拳が小刻みに震えていた。
正直なところ、ここでゲルニカをやってしまっても構わない。
ウルカの居所は部下どもから聞き出せば良い。
奴の出方次第ってところか。
「ウルカを連れて来い。
俺の連れは気が短くてな。抑えるのもそろそろ限界だ」
「‥‥嫌だと言ったら?」
「そりゃ楽しい事になるさ」
テーブルに片肘を突き、奴のようにニヤニヤと笑ってやる。
ゲルニカは悲壮な顔をしたまま動かない。
今更奴に出来ることなんて何も無い。
どう足掻くか見届けてやろう。
だが妙だ。
奴の部下が動こうともしない。
ゲルニカを信用しているのだろうか?
ダスティもブルブルと震えている。
こんな奴の何が怖いのか。
もしかして、ダークエルフの姿をしているからか?
中身がレベル2のおっさんだと知らないのか?
この世界のダークエルフってのは恐怖の代名詞なのかもしれないな。
「し‥‥死体が無くても蘇生が出来るかな?」
ようやく何か思いついたのか、ゲルニカは再び虚勢を張ってふんぞり返った。
「あの女の居場所が分からなければ、どうしようもあるまい」
「返す気は無いんだな?」
「聞こえなかったか、蘇生魔法が使えても死体がなけ――」
「やれ、同志」
テーブルを蹴って同志が立ち上がる。
ゲルニカが慌てるが、手遅れだ。
「やめておけ! 俺はダークエルフだぞ!
ダークエルフなんだぞ、分かってるのか!!
死ぬぞ、お前! おい止まれ、止まれぇぇぇ!!」
同志はゆっくりとゲルニカへ近づき、後頭部を掴むと、その顔面をテーブルに叩き付けた。
激しい音を立てて木製のテーブルが壊れ、上に置いてあったプレートや燭台が床へと落ちる。
間髪入れず今度は後ろにあった壁に叩きつける。
ゲルニカの情けない悲鳴が周囲に響く。
その際、血まみれのゲルニカの顔から、長い耳が取れた。
やっぱ付け耳か。
俺は立ち上がると、ゲルニカの元へ近寄る。
取れた部分を確認すると、当然の事だが人間の耳があった。
落ちた耳を拾って奴の部下達へと見せ付ける。
部下達は驚いた表情でゲルニカと付け耳を眺めていた。
ゲルニカは血に染まったまま白目を剥いている。
同志が手を離すと、床の上に崩れ落ちた。
仰向けに倒れたゲルニカの口腔へ足を踏み降ろすと、くぐもった声と嫌な音がして血と歯が飛び散る。
うわ、痛そう‥‥。
人攫いに身を堕とさなきゃ、こんな目には遭わなかったものを。
「て‥‥てめぇら!」
壁に控えていた部下達がようやく我に返り、剣を抜いて向かってきた。
ステータスを確認すると、レベルが30以上あるのが4人もいた。
そういや、魔獣を捕まえてくる腕利きがいるって話だった。
称号には『悪魔殺し』とある。
こいつらがウルカを攫った連中か。
ゲルニカは同志へ譲ったから、俺はこいつらを貰おう。
俺は男達へ向かって歩き出した。
骨格が変わるくらいに殴りつけた部下達は動かない。
血溜まりに重なるように横たわっている。
二人程残ってはいるが、床に座り込んで震えていた。
すでに抵抗する意志はなさそうだ。
俺は床に落ちているフラガラッハをアイテムボックスへ仕舞うと、ゲルニカに目を向ける。
こいつは馬鹿だったから比較的簡単に倒せたけど、問題はルドルフか。
それにヒクサルト子爵って奴の事も気になる。
だが、まずはウルカだ。
メイドの一人に声を掛ける。
「俺達の仲間はどこにいる?」
メイドはハッと顔を挙げて、ゲルニカと部下達を流し見る。
そしておずおずと俺に近寄る。
「地下牢です。ご案内致します」
そういって、俺達を先導しようとした。
だが、それより早く、入り口の扉が激しく開いた。
「ゲルニカァァッ!!」
扉を蹴飛ばして男が入ってくる。
黒いベストの上に緋色のスーツを着て、同じ色の帽子を被った背の高い男である。
後方に大勢の男達を引き従えている。
思わずダスティを振り返る。同志も同じようにダスティの顔を見た。
なるほど、良く似ている。
それの意味するところは一つしかない。
顔こそダスティと似ているが、その貫禄は段違いだ。
離れた場所からでも周囲に漂う威圧感を感じ取ることができる。
しかし、タイミングが悪い。
せめてウルカを取り戻してから来てくれれば良かったのに。
ルドルフは部屋の状況と倒れたゲルニカを見て目を怒らせた。
「馬鹿野郎がっ! 勝手な事ばかりしやがって!!」
ってことは、今回の件はゲルニカの独断か。
ダスティの読み通りだな。
「‥‥お前がフォルか」
ルドルフは次に俺達の方へ顔を向け、その口を開いた。
「覚悟は出来てるんだろうな」