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ごっ

 問題です。

 5月の第2日曜日は、何の日でしょうか。





「おはよう、母さん」


 穏やかな声と、額に感じたやわらかな感触で目が覚めた。


「……お、はよ、氷雨ちゃん」


 寝惚けたまま、反射的に返事を返すと、腋の下に手を入れられて、体を起こされる。


「朝ごはん、出来てるよ」


 そのまま、半ば抱っこされるような形で居間まで連れて行かれた。

 テーブルの上では、目玉焼きの乗ったトーストとコンソメスープが湯気を立てている。

 私を椅子に座らせた後、氷雨ちゃんは冷蔵庫の扉を開けながら問いかけてきた。


「牛乳とオレンジジュース、どっちがいい? コーヒーとか紅茶がよかったら、沸かすけど」


 私は、瞬きを3回してから返事を返す。


「……牛乳がいいな」


 氷雨ちゃんは「了解」と答えると、牛乳をコップに注いで私の前に置いた。

 目が合うと、ニッコリと笑って付け加える。


「デザートに、苺もあるからね」

「ありが……」


 唇に指を添えられた為、続きの言葉は口に出せなかった。


「それは、今日の母さんが言うべき台詞じゃないよ」


 そして、軽く頭を下げて、氷雨ちゃんは言った。



「いつも、本当にありがとう、母さん」



 問題です。

 5月の第2日曜日は、何の日でしょうか。

 正解は――……『母の日』です。





「あーん」


 目の前に差し出された苺。


「……」


 視線で抗議しても、氷雨ちゃんは微笑むばかりだ。


「……」


 溜息を吐いて、口を開いた。

 次の瞬間、口内に入れられた苺を噛むと、甘酸っぱい味が舌の上に広がって。

 目の前の氷雨ちゃんが浮かべた嬉しそうな表情を見て、自分の顔が苺よりも赤いのだろうと悟った。

 ――……もう一度、溜息を吐く。




 ああ。

『母の日』なんて言ったって。

 結局、貴女には敵わない。




「食べ終わったら、歯を磨こうね。磨いてあげるから」

「結構です」

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