二日目 二人きりの放課後
サブタイトルがX日目となっているのは通常でいう第一話、第二話…みたいなものなので小説中での時間の経過を表すものではありません。
始業式後、明、亮太、直樹の三人は所属するサッカー部の練習もなかったので早々に下校していた。
「今日学校早かったし暇だな。午後遊びに行かない?」
「俺は今日はパス。新しく入った塾の説明会があるから。」直樹が答える。
「俺は可愛い女の子がいればいいぜ?サキちゃんなんてどうだ?今日予定空いてないの?」
「朝から亮太は沙紀の話ばっかりだな。アイツ誘うぐらいなら今日はやめるか。」
そんな会話を続けながら結局三人は帰り道に少しだけゲームセンターによってから帰った。
「ただいま。腹減った、何か食べるものない?」明は家に着くと母親に向かって言った。
「分かった、今お菓子部屋に持っていくから。それよりあんたの部屋でサキちゃんだいぶ待ってるのよ。」
明の母親、幸子が言った。
「なんで沙紀が来てるんだよ。」
「なんでってそりゃあんた…自分で約束したんじゃない。サキちゃんがテニスの大会で入賞したらサキちゃんが欲しがってたもの買ってあげるって。普段はお互い時間があんまりないから時間がある始業式の日に買いに行くって言ってたんじゃない?」
そこでようやく明は約束を思い出した。確かに少し前にそんな約束をした覚えがある。
明は急いで階段を駆け上がり自分の部屋に向かった。
「サキ、ごめ…」
明がそこまで言いかかったところで顔面に何かが飛んできた。
「遅い、いったい何してたらこんな時間になるのよ。」沙紀が頬を膨らませている。
「何ってちょっとゲーセンに…それよりジャンプ投げるな。ジャンプの角の殺傷能力洒落にならねぇからな。」
「まあまあ二人とも。お菓子食べて少し落ち着いて。」幸子がお菓子と飲み物を持ってきてくれたらしい。
「おばさん、ありがとう。」
「いいのよ。どうせこのアホ息子はサキちゃんくらいしか女の子連れてこないんだから。」
そう言うと幸子はお菓子を置いて階段を降りていって姿を消した。
「で、お前何を欲しいって言ってたんだっけ?」
「駅の近くに新しくおしゃれな雑貨屋できたじゃん?あそこで前に可愛いテディベア見つけたんだよね。今一番欲しいのはそれかな。」
「テディベアか…まあ金は足りるかな。じゃあさっそく買いに行くか。」
そうして二人は家を出た。