大人の為の子供相談室 クリスマス
ミカリン:リア充爆発しろ!
タケジー:ちょちょちょ、出だしから何ですか、いきなりっ。
ミカリン:始まらねぇよ? 第十一回なんて始まらねぇっ。
タケジー:はいはい、何となくわかりましたから進行の邪魔しない。というワケで何となく第十一回目となる『大人の為の子供相談室』を始めます(ぱちぱちぱちぱち)
ミカリン:ちっ。
タケジー:舌打ちしない。というか、まだ本日のテーマも言っていない内から、何だってそんなに不機嫌なんですか? ひょっとして家で家族から自立しろとか言われましたか?
ミカリン:言われてないよっ。というか、こう見えて私は一人暮らしだよ!
タケジー:あれ、そうだったんですか。てっきり自宅で半ニートな生活をしているものとばかり思っていましたけど(ぷぷっ)
ミカリン:そこはまぁ……ホラ、自宅でダラダラしてると色々うるさいし、趣味に没頭するにも都合が悪いじゃない。というか、そんな話じゃなくてっ。
タケジー:そうですよね。今回のテーマの話でしたよね。
ミカリン:そう、いや待て。やっぱり進めるな!
タケジー:今回のお葉書はこちら、京都にお住まいの『桂離宮で逢引を』さんからいただきました。えーと『クリスマスと言えばケーキですが、どうしてクリスマスにケーキなんでしょうか? 別に何でお祝いしても良いとは思うんですが、ケーキが外せないのには何か理由があるんでしょうか?』とのことですが――
ミカリン:却下します。
タケジー:いや、却下って……。
ミカリン:そんなつまらない質問を期待されていると思っているの? いやされてないね。
タケジー:いやいや、素朴な感じで悪くない質問だと思いますけど。
ミカリン:はい先生(ビシッ!)
タケジー:……何ですか、ミカリン。
ミカリン:クリスマスがカップルの日になってしまったのは何でなんですか! 胸糞悪いので中止にすべきだと思います。ついでにタケちゃんも死ね!
タケジー:いや、ついでに殺さないで下さいよ。まぁ後半はともかく、前半のそれは少し疑問ですよねぇ。海外ではクリスマスって家族と過ごす日だって聞きましたし。ちょっと特殊らしいですね、日本のクリスマスは。
ミカリン:ではお答えしましょう。
タケジー:質問したのミカリンじゃないですか!
ミカリン:ちなみにだけど、タケちゃんにとってのクリスマスって、子供の頃からカップルの日ってイメージだった?
タケジー:そうですねぇ。子供の時にはプレゼントを買って貰える日って感じでしたけど、中学生くらいの頃には今のイメージで固まっていたような気がします。
ミカリン:まぁ八十年代生まれのタケちゃんなら、違和感がなくて当然かな。
タケジー:どういう意味です?
ミカリン:私らの親の世代だとさ――つまり六十年代七十年代の感覚ってことなんだけど、クリスマスってのは子供のためのイベントっていうイメージの方が圧倒的に強いのよね。家族とケーキを食べてプレゼントを枕元に置く、これが一般的なクリスマスのイメージ。
タケジー:今でも子供にとってはそういう日だと思いますけどね。
ミカリン:ところが、八十年代を経て九十年代に入ると、途端にクリスマスはカップルの為の聖夜――もとい性夜に早変わり。品のないイベント行事に成り下がっちゃうワケよ。
タケジー:表現に棘があるのは気になりますけど……どうしてそんなに変化したんでしょうか。生活習慣が変わってきたから、とか?
ミカリン:まぁ、一番の原因はハッキリしてるんだよね。
タケジー:何です?
ミカリン:バブルよ。
タケジー:まさかの時代背景ですね。本当ですか?
ミカリン:経済の好調によって少しくらい高くても必要がなくても、気味が悪いくらい何でも売れた時代だもの。企業やマスコミにとっても美味すぎるビジネスチャンスでしょ?
タケジー:まぁ確かに。でも、クリスマスをカップルの日にするっていうのはちょっと抽象的すぎやしませんか? そもそも何を売りたかったとか、そういうのはないんですか? 例えばその、バレンタインデーみたいな。
ミカリン:もちろんあるに決まってるでしょ。ただ、確かにターゲットの購買目標が広範囲に及ぶから、明確にこれが発端だというのは難しいかもね。でも一応、最初に仕掛けただろうと言われている業界はあるの。
タケジー:へぇ、何です?
ミカリン:ホテル業界よ。
タケジー:あー……でも、年末のホテルってむしろ混んでる印象があるんですけど。
ミカリン:それこそバブル以降の習慣ね。かつては、この時期のホテルって客がいなくてガラガラだったらしいの。そこで若いカップルを呼び込んでイチャイチャしてもらおうと売り出したら、これが大当たり。してやったりってやつよ。
タケジー:なるほどー。
ミカリン:ちなみにタケちゃんは予約してるの? 爆発しろ。
タケジー:いえ、ホテルとかわざわざ予約できるほど余裕ないですし。家でケーキを食べて過ごそうかと。
ミカリン:へぇ、案外質素なんだ。爆発しろ。
タケジー:いや、爆発しませんよ?
ミカリン:まぁとにかくよ、それだけイカレた時代の名残りってことだね、今のクリスマスってヤツは。即刻中止すべきだね、うん。
タケジー:さすがに中止は、若者はともかく子供が可哀想なのでは?
ミカリン:サンタ服も今じゃカップルのコスプレに利用される体たらく。お爺さん泣いてるぞ!
タケジー:あれはあれで、なかなか良いものだとは思いますけど。
ミカリン:けっ、ミニスカなら何でもいいんだろ、男はよ!
タケジー:もう何て言うか、今日はいつも以上にやさぐれてますね。せっかくいただいた最初のご質問には一ミリも答えていないってどういうことなんですか。
ミカリン:ケーキ食べる理由なら簡単だよ。
タケジー:え、そうなんですか?
ミカリン:誕生日に食べるものと言えば?
タケジー:そりゃケーキですけど……クリスマスの話ですよ?
ミカリン:タケちゃん、クリスマスって何の日?
タケジー:そりゃキリストの――あ、なるほど、キリストの誕生日を祝うからケーキなんですね。
ミカリン:ちなみにだけど、誕生日にケーキを食べるのはギリシャ神話が始まりだって説が有力らしいよ。月の女神であるアルテミスの誕生日に捧げられたケーキに、 女神が地上に投げかける月の光をシンボルとして火を灯したロウソクが飾られたとか何とか、つまりケーキとロウソクが合わさって初めて『誕生日ケーキ』と言えるワケよね。
タケジー:何と言いますか、誕生日とクリスマスって別のものという印象がありましたけど、考えてみれば本来は似て当然のものなんですよね。
ミカリン:ハッ!
タケジー:ど、どうしました?
ミカリン:まさか、誕生日にもカップルがイチャつくのは、クリスマスからの逆輸入なのではっ。
タケジー:いえ、カップルはいつだって理由をつけてイチャつくものです。
ミカリン:…………クリスマスを冒涜しているタケちゃんは今年のケーキに二千十二本立てて祝うこと。非リアとの約束だぞっ。破ったら呪うからな!
タケジー:ミカリンも良い人見つけてくださいよ。主に私と彼女の安全の為に(はふぅ)