信じられな〜いDAY
未熟者の執筆です。
可笑しかったらすいません。
「はあ〜・・・」
何やら誰やらのため息が聞こえる。
「健太〜〜、どうした〜、そんな顔してさ〜。」
「だって、今日は、例のあの日なんだぜ・・・?」
健太は机の上に顔を接触しながら親友の春樹の方を見ている。
「ああ〜、『信じられな〜い』日か?」
熱演中の春樹。 だが、聞こえるボリュームは、半径2、3mくらいだ。
「そうだよ、その『信じられな〜い』日だよ。 全く・・・。」
そう、今日は、天国と地獄を味わう一日『バレンタインデー』である。
世の男は、この1日のためにアピールをするものもいる。
「そうか〜? 俺にとっちゃあ、幸せな1日だぜ。」
「頼むから威張らないでくれ・・・。 悲しくなる・・・。」
さらに落ち込む健太。
「そ〜いや〜、あの、ちょ〜可愛ゆい怜奈ちゃんは誰に渡すのかな〜・・・?」
「・・・! 怜奈ちゃん!? お前、怜奈ちゃんが誰に渡したのか知ってんのか!? おい!答えろ!」
健太は、春樹の胸ぐらをピストン運動のように動かしている。
「苦ぢい・・・苦ぢい・・・。 ただの仮説だってば・・・。」
春樹のうめき声が流れてから、健太のピストン運動は徐々に弱まっていった。
「そう、そうだったのか・・・。 な〜んだ、 あははは・・・。」
「全く・・・。 お前は、ホンット怜奈ちゃんの話になると、猪みたいに興奮し出すから・・・。 今年の干支が猪だからって、猪になんじゃねえよ!」
「んなもんになるか!」
二人は、話の趣旨が徐々に脱線した話題へと入っていった。
そうこうと、絶え間ない話をしていると、
「おい、健太、あの女子たち、健太を呼んでねえか?」
春樹の目先には、教室のドアの前に何人かの女子が、健太の方を見て、何やらアイコンタクトを送っている。
「やっと、健太の魅力に気がついたんだな。 うんうん、見た目は、こうだが、中身もああだが。」
「それ、誉め言葉になってねえって。」
健太は、もう少しまともな事言えと思っているような表情をしている。
「でも、健太が呼ばれてるのにはあ、変わりないって! 行ってこい! 心のの友よ。」
健太の頬は徐々に緩くなってゆく。
「ほ、ホントに俺・・・!? まさか…。 でも、もし、ホントだったら、ついに、俺の魅力が通じ始め・・・。」
健太が答えようとした矢先、
「ああ、俺だったみたい。ちょっくら、行ってくるわ。」
「ってお〜い! 何だよそれ! 俺のひと時の有頂天気分返せ〜〜!」
健太がそう言い終えたが、春樹はいつの間にか複数の女子を教室から遠ざけて、自分だけの世界へと足を踏み入れていった。
「・・・。」
唖然とそれを見送る健太。
「だよな・・・。 そんなに上手くいくかっての。」
落胆した健太。 その背中が妙にこの世の果ての終わりのような感じを帯びたモノだった―――
「あ〜あ〜、今年も没だったな〜・・・。 まあ、いつもの事だけど、やっぱ悲しいな〜・・・。」
帰り支度をしながらぶつぶつと言う健太。
「春樹は春樹で先に帰っちゃうし。 今日は一人で下校か・・・。」
周囲を見回わたすと、チョコを貰ってテンションHIGHの男子と、その逆の男子が目に入ってくる。
「ったく、どこの大統領だよ、こんな、変な日を作ったのは・・・。 マジで悲しいぜ・・・。」
健太は、帰り支度を済ませ、カバンを持って教室を後にした―――――。
ちなみに、バレンタインデーを作ったのは、大統領ではありません。
「誰だろう・・・?」
昇降口まで着てみると、誰かが下駄箱で何やらこそこそしている。
靴に履き替えて、すぐにそこへ行くと・・・、
「あ、健太君、今帰り?」
「れ、怜奈ちゃん・・・?」
そこにいたのは紛れもなく、あの怜奈であった。
「あ、うん、今帰りッス。」
怜奈とは、過去何回か、喋ったことはあったものの、でも、今は、やけに心臓が脳と戦争してるような激しい鼓動をしている。
「そう。 じゃあ、今日は何の日か知ってる?」
それを聞いた健太はふと、今日はバレンデーという事を思い出した。
でも、健太は、そこで、期待してしまいそうになりつつも、まず、あり得ないあり得ない、と自ら言い聞かせるように、冷静を保った。
「ザビエルが生まれた日。」
健太は、超真顔。のつもり。
「・・っぷ。 やだ〜、健太君面白い事言うんだね〜。」
怜奈は、口を覆いかぶせながら笑い続けている。
「あ〜い、とぅいまてぇ〜ん。」
「・・・。」
怜奈の笑いが一瞬にして吹き飛んでしまった―――――
「健太君ってさ〜、毎年チョコ貰ってる?」
怜奈が覗き込むように質問を促してくる。
その表情に照れを隠せれないためか、無意識に目を逸らしてしまう。
「毎年、没です・・・。」
「うそ〜!? 意外。」
怜奈は、目を丸くして健太を見つめている。
「何で意外なの?」
「だってさ〜、そんなに面白い人だったら、人気があっても可笑しくないと思うよ。」
「そうかな〜? 面白いからって、人気が出るとは・・・。」
実際、健太は自分が面白いなんてこれぽっちも思ってない。
「だって、私が好きなんだもん…。」
怜奈の頬は真っ赤だ。
「はい、これバレンタインチョコ。 健太君に上げるね。」
「・・・え・え・え・え・え・え・え・え!?」
突然の出来事に健太の頭はパニクっている。
「これは、夢なのだろうか、それとも・・・。」
健太は思いっきり、頬を引っ張った。
「夢じゃないよ。」
隣からささやく女神の声。
健太は、ようやく今の置かれている自分の立場に気づいた。
「ありがとう。 おいしそうだね。」
健太の手には、ピンクのふろしき包みがされている、可愛らしいモノがある。」
「だって、昨日、3,4時間かけて作ったんだよ〜!? でも、美味しいかは、分からないけど・・・。」
でも、彼女の目には、達成感というやり遂げた表情が生き生きとして輝いている。
「絶対美味しいって! ってか、怜奈ちゃんから、チョコもらえるなんて、ホンット信じられないよ・・・。」
そうこう言っていると、天から白い結晶が降り注いできた。
「雪・・・?」
手に優しくふわふわと残る感触。 まさしく雪だ。
「ホント・・・。」
その光景は、まるで更なるプレゼントであるかのようにも思えた。
「どおりで寒いわけだ・・・。」
今日は天気予報では、雪とは言ってなかったはずなんだが・・・と健太は首を傾げている。
「それより、一緒に帰ろっか。」
「そうだね。」
健太がそう言い終えると、怜奈は傘を取り出して広げた。
「じゃあ、中に入って。」
「え? 入るの? 恥ずくない・・・?」
健太の顔がどんどん赤くなってゆく。
「私も恥ずかしいんだからね…。 でも、せっかくだから一緒に入ってこうよ・・・」
怜奈は、もじもじとしている。
「お、おう、分かった。」
健太は、重い足を1歩進めた。
「せっかくだから、手も繋いでいこ?」
怜奈は、意外と積極的の女の子のようだ。
「うん。」
その手のぬくもりは、この寒さの中とは対象的なモノだった。
この雪によって奏でられる物語は、人々を幸せにする。
健太と怜奈もまさにその一人と言えよう。
今日は、とことん寒い一日だ。
でも、健太の心の中は、暖かい。
そう、この寒さ・・・いや、南極をも押しのける程…。
−−−END−−−