友達
タカヒロは祖父を急かすと急いで昨日と同じ時間に三階の中テラスに向かった。
そこには
明るい陽射しに照らされた律子の姿があった。
タカヒロはハッとした。
『昨日はわからなかったけど、えらく綺麗な人だ。』
真っ白な髪の毛が大半だったが太陽に照らされ、それはまるで金髪のように映った。
色白の肌に彫りの深い顔立ちはまるで北欧の人のようだと。
「若い時はモテたんだろうな」左目の下のほくろが印象的だった
昨日の人?だよな?
マジマジと遠目から眺めていると律子が気付いた。
「あら!来てたの?気付かなくてごめんなさいね」
「こ、こんにちは!なんだか見惚れてしまいました!」
「あら、お上手だ事!なんにも出ないわよ!
それはそうと 名前を聞いてなかったわよね。失礼しちゃったわ。
私は広沢 律子と言います。あなたは?」
「山村 隆宏です タカヒロって呼んで下さい!」
「タカヒロ君ね。じゃあ私は りっちゃんって呼んでくれる?」
タカヒロは戸惑った。『祖父と同い年くらいの女性に向かって <ちゃん付け>なんて』
「あー 困っているんでしょ?
シャイなのね。 学生時代にね 同じようにバンド仲間にりっちゃんって呼ばれてたのよ! あー でも一人だけ絶対呼んでくれない人がいたの。
りつこ!なんて偉そうに呼ぶのよ。
それはそれで嬉しかったけどね ・・・
あっ、だから りっちゃんでいいからね」
「わかりました!り、、、っちゃんですね! りっちゃん! じゃ、俺はやっぱタカって呼んで下さい」
「タカ?…タカ…」 律子は遠い記憶の片隅の、そして完成しないままのパズルの最後の1ピースが思いがけない所から見つかったような、
そんな思いが頭いっぱいに渦巻いた。
一瞬、時間が止まったような律子の様子に「どうしました?タカって呼び捨てでいいですから!」
「わ、わかった。タカね。
なんだかおかしいわね。タカと話しているとタイムスリップしたように自分が年老いた おばあさんだって事を忘れるような、今そんな不思議な感覚だったわ。
では遠慮なく?タカ!
タカ、あそこのベンチに座りましょうか。」
律子とタカは 端から見れば祖母と見舞いに来たその孫
しかし律子はタカとなんら変わりないその辺の友達同士、或いは同級生のような関係。そんな気持ちにさえなっていた