理解者
バタバタと走りながら病室に入って来るタカ。少し息を切らしながら
「じいちゃん もう尿採った? そろそろ検査の時間だよ」
「なんなんだ?挨拶もねえのか今日は。」
「あっ、 おはよーう! じいちゃん」
「おはよーう!じゃねえだろ。もう昼前だ。どした?もう学校が始まったのか?」
「あっ、昼か。いや学校はまだ休み。で尿は?採った?」
「 おめぇは女房か。わかってら。
何を急かしやがる…おい、 タカヒロ これ、ほら。」
祖父は財布から一万を出してタカヒロに渡した
「なんだょー じいちゃん。 お金なんていらないよ。直しなよ。」
「ばかやろう!子供は遠慮しちゃいけねぇんだよ。昔から、そう言うだろ!
あのさ、おめえよ また文化祭にアレやんだろ?
スタジオ代とか結構いるだろうよ…
おめえには
夢を大事にしてもらいてぇんだ。
」
「じいちゃん。じゃ、遠慮なく貰うね。 いつもありがと。
俺 諦めないよ!」
「おう。 それはそうと晃弘はいつ頃、帰って来るって?」
「ああ、父さん達ね 6月の末には帰って来るって。」
「そうかー。我が息子ながら、てえしたもんだな。肌の色や目ん玉の色が違っても関係なく話せるんだからなー。 あいつは良く勉強したからな。
タカヒロは俺に似たんだかなー?」
「アハハ、だねー。ぎっちょも同じだー。
あっ やべ?今何時だっけ?
じいちゃん早く検査行きなよ!」
タカヒロは祖父が大好きだった。
海外勤務の父親と それに同行した母には付いて行かずに祖父の傍に残った。 家族だから という義務ではなく、唯一の理解者である 祖父が好きだったからだ。
乱暴で、ぶっきらぼうな語り口の祖父は 時に人を近づけない。
がしかし 人情味溢れる人柄はまた 嫌われる事もなかった。
似すぎては反発しあい、そして互いに求めあってはくっつく。
磁石の様な二人だった。