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Let it be

「りっちゃん!迎えに来たよ!久しぶりだね!」



「タカ!タカヒロくん。久しぶりね!

会いたかったわ! 」

タカヒロは嬉しさのあまり律子に抱き着く。

横で見ていた隆は少し驚いた


「大胆だな、タカヒロ、、」

「 何言ってんだよ

じいちゃん!すごく会いたかったんだよ。

そんな時は普通にハグするじゃん!  ね!」


律子に同意を求めるタカヒロ



「そうよ。今の若い子はそうよね!

退屈な入院生活をタカヒロくんのおかげで楽しく過ごせたのよ。

本当に有難う。

あなたがタカのお孫さんだなんて本当に夢のような不思議な出会いだと今でも思うわ。 」



「有難う・・・だなんてりっちゃん・・

じいちゃんとりっちゃんはこうしてまた逢える運を持ってたんだよ。

人の気持ちって 真っすぐだと叶うもんなんだね。

僕こそ なんか有難う。」


なぜかタカヒロは涙を浮かべる。


つられて律子も泣き顔になる。





「さっ律子 家まで送るよ。

<Hello Goodbye>まで。」



「なぜ店の名前を? 」



「神様のご褒美なんだよ。 りっちゃん!

さっ行こうよ。」


三人はタクシーに乗り込み律子の店に向かった

_____________________________


入口には娘の佐紀子と孫の美奈がいた



「お帰りなさい お母さん」

「お帰りなさい おばあちゃん」



タクシーから荷物を下ろすタカヒロに美奈は声を掛けた


「タカヒロくん 久しぶりね!」


「美奈ちゃん!ウッス! アールグレイとケーキ。 今日は僕がねっ!」

「うん!」



知り合い、、?いつから、??隆と律子は顔を見合わせる


三人は先に下に下りた



「ようこそ <Hello Goodbye>へ。」律子は右手を体の横につけ指の先を丁寧に揃え、隆を招き入れた



「凄いな律子。店を持ってんだな。」 隆は感心しながら地下への階段をゆっくりと下りる


壁一面に埋まったいくつものフライヤーを眺めながら

ふと立ち止まる



「これは・・・・律子、 この写真まだ持ってたのか? 」隆と律子が写った二人の写真だった


「ええ。大事な大事な写真だもの。タカと初めて、、最初で最後の写真かしら。


私の夢が今叶ったわ。

タカ、私はこんな風にあなたを此処に連れてきて こんな時代もあったわねって笑いながらこの写真を眺める事だった。


店の経営が苦しい時もあった。何度店を畳もうかと思ったことか・・

だけど私はいつか・・・ 今日みたいなこの場面を頭に描いていたのよ。


私の青春時代はタカなしには語れなかった。


タカが大好きで大好き仕方なかった。 今もそう。

いづれ大人になり年老いて、そしたら思い出になる日も来るでしょ?

だけど思い出にしたくない。


そう思い続け・・・・

今日まで来たの。」



隆の目は真っ赤に充血していた。


赤い目で隆は写真の上の額縁にも目をやった



「あのTシャツ・・あれも置いていたのか?」


「そうよ。あの時のものよ。

なぜ額縁に入れているかわかる?


当時の全ての匂いを閉じ込めておきたかった。

私がいづれこの世を去る時に私はその晩に、額からアレを出す。


もし、タカと会えないまま、その日が来てしまっても私はそのTシャツの匂いを嗅ぎあなたを思い、胸に抱き

そしてその時に全てにさよならをしようと・・思ってた。


あなたは音楽をずっと続けているだろう。もしかしたら偶然にお店に来てくれるかもしれない。

いろんな思いを抱きながらこんなにも年月が過ぎてしまったわ


ようこそ・・・タカ・・」鼻の奥がツーンとし、涙を押さえきれない律子だった。


「タカ。ギター弾いて。さ、中に入ってちょうだい。」


「律子・・悪い。今は入れねえ。」

隆はそう言うと来た階段を戻り地上に出た。


律子は追いかけなかった。隆の気持ちが分かったからだ。


律子は口ずさむ 「there will be answer Let it be....」





   どんなに離れ離れになっても きっとまた逢える

   ささやきかける言葉   Let it be




「りっちゃん、紅茶入ったよ。こっちに座っ・・あれ、じいちゃんは?」


「タカ?また戻ってくるでしょ。さ!紅茶飲みましょうか。」


タカヒロは扉の方を見ていた。律子はなんら変わりなかった。


マイセンの器に入れられたオレンジ色の紅茶をタカヒロはゆっくりと口に運んだ。







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