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祖父と孫

少年は祖父の病室に戻ってベッド脇のパイプ椅子に座り、さっきの本をワクワクした気持ちで読み始めた。

その雑誌は月刊の音楽雑誌だった。全国のライブハウスや楽器店、スタジオ情報、メンバー募集等、音楽好きなら誰もが知る有名な雑誌だった。

今月号はRicken backerの楽器特集でTHE BEATLESと有名な世界のギタリスト特集でもあった。


30分くらい経った頃 祖父が戻って来た。


「タカヒロ 何読んでるんだ、、


また くだらねえもの読みやがって。


勉強してるのかお前は?」


いつもの言い草と気にも止めないタカヒロ


「じいちゃん これ見てくれよ!今月のRicken backer特集!カッコイイなー!」



「何がリッケンバッカーだ、、、   おい 見せてみろ。」


小さな子供の様にタカヒロから雑誌を取り上げた


「俺のGIBSON'59には敵わねぇよ。、、」


ぶっきらぼうに答える祖父の本心はタカヒロだけは家族の誰よりも理解していた。

「…じいちゃん 退院したらもう一回弾きなよ。」




「うるせえよ。俺はもう音楽は辞めたんだ。くだらねえ。」


祖父はベッドに腰をかけ少しふて腐れたようにスリッパを脱ぎ散らかすとバタンと寝転がった。

模様のない真っ白な天井を見ながらボソッと呟く。


「何かを手に入れるには何かが犠牲になり

、、俺の前から消えちまう。」


そう言うと、自分の右手を枕にしタカヒロに背を向けた。




広い背中が


小さく見えた瞬間だった。



「タカヒロ 今日はもういい 帰れ。 」  少しの沈黙の後 祖父は小さな声でタカヒロに言う



「…ありがとな」



タカヒロは祖父の脱ぎ散らかしたスリッパをきちんと揃えると


「じゃ また明日。」





「おう。」

視線を合わさない挨拶も

タカヒロは慣れていた。


きちんと整えられ四角く折り畳まれている白いシーツが置かれた空きベッドが三つ



次々と退院していく四人部屋の窓際で男は一人静かに目を閉じてみる








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