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冷めた紅茶

20分ほど走っただろうか

ゆっくりとブレーキを踏む美奈



「おつかれさま〜!」

ヘルメットをゆっくりと脱ぐ


自身もヘルメットを脱ぐ



「ここだよ!目的地!」


バイクを降りた目の前には地下へ降りる階段があった


入り口付近の看板には


<Hello Goodbye>

と木製の看板が掲げられていた


「あっ!BEATLESの曲じゃん!」

一気にテンションが上がるタカヒロだった


「お店なの? 」


「そうだよー 昼間はカフェで夜はライブハウスになんの。」


「へえー」


美奈はまた先にスタスタと進み地下への階段を降りて行った


コーヒー豆と洋酒が混ざったような不思議な匂いがしたが、けして悪い匂いでもなく


タカヒロはなぜかワクワクしたのだ



木製の重いドアを開けると静かにJazzが流れていた

ウッドタイプの丸テーブルが六つ程ある

けして広いとは言えない店内の長めのカウンターには男性が一人グラスを拭いていた


「お帰り!」 男性はグラスを拭く手もそのままに視線をまたグラスの方に移した


  お帰り?

  いらっしゃい じゃなくて?


キョトンとしてると美奈がタカヒロに声を掛ける


「コーヒー飲める?」

「あっ無理・・・ 紅茶なら」


「私と同じだねタカヒロくん!

アールグレイでいいよね? 」


「あ、あー 紅茶ならなんでも、、いい 」



「お父さんアールグレイと紅茶のシフォンケーキ! 」



「あいよ。」



「おとうさん?

お父さんなの? 」



「タカヒロくんの驚いた顔、今日二回目かもね!


あのさ、私の両親がやってるの。昼間はお母さんで夜はお父さん。


おばあちゃんがオーナーなんだけどね! 」


「りっちゃんが! 」



「あーだから店の名前BEATLESの曲なんだね」



「そうそう!良く知ってるね!

おばあちゃんが最初やっていたんだけどね父さんに任せたの。五年くらい前かなあ。」




「素敵な店だよね!」


「でしょー !ケーキも手作りなんだよ!」 少し誇らし気に美奈は言う


「で、タカヒロくんおばあちゃんに逢いたかっんでしょ?」



「そうなんだ。いつ戻るの? 」



「わかんない。」


「わかんないの?何泊とか予定あるよね?」



「ないよー。でも、今回はお母さんと一緒だからそんなに長くはないと思うんだー。

いつもはさ、ガラガラと旅行鞄を引いてプイって行ってしまうの。自由人なんだ おばあちゃん


連絡、取ろうか?」


「うーん。いい。いいや。」タカヒロは少しだけ考えてそう答えた。

祖父隆の言う<運命>と言う言葉が頭から離れないでいたのだ


じいちゃんとりっちゃんの運命・・か・・薄暗い店内の中のサイフォンのブクブクを見ながらいろいろ考えていた


「はい。お待たせ~紅茶とケーキだよ。」美奈のお父さんの柔らかい声で我に返った

「あ、ありがとうございます!」

「あーバイク先に車庫入れてくるね。先食べててね、タカヒロくん」  「では、お先に。」


「タカヒロくんって言うんだ。美奈とは付き合い長いの?」いきなりの質問だった


「あっ、自分、山村隆宏って言います。すみません挨拶遅れてしまって・・さっき、さっきなんです。

下野楽器で会って・・でも、あのなんか繋がりがあったみたいな・・その・・」


説明が上手く出来ないでいた


「あそ。ごゆっくりね~」自分で聞いた割には興味をあんまり示さない父親だった

タカヒロは背中に変な汗をかいてしまっていた

幸か不幸か、あんまり話好きではないらしい父親に密かにホッとしていたのだ


美奈が戻って来た。カウンターで父親となにやら話していた

再びタカヒロの方を見る父親にタカヒロは軽く笑顔で返すのだった


「お待たせ!

あのさ、タカヒロくん***総合病院に美山さんて人居た?私はたまにしかお見舞い行かなかったから、よくわかんないんだけど。

その人ねさっき店に来たらしいんだー。」


「美山さんってりっちゃんの階の看護士さんで・・・・その・・」

「どしたの?なんで店にわざわざ来たんだろ?なんかお父さんが言うには自分の無責任な仕事のせいで

おばあちゃんに迷惑をかけたって、謝りに来たんだって。


でさ、ここの住所をある人に伝えたいって」







「そうだったんだ。・・うん実はさ、こんな事があったんだ_______________________

___________________________________

                      」

タカヒロは先日の出来事を掻い摘む事無くゆっくりと美奈に話始めた。

律子との事もゆっくりゆっくりと。飲みかけの冷めた紅茶とフォークが刺さったままのタカヒロのケーキ・・

店内には美奈とタカヒロの二人しか居なくなっていた

__________________


美奈は少し涙ぐんだ

「美奈ちゃんもなんか僕と似てるね。なんかさ、切な過ぎるだろ?50年って長くない?

僕ならどうしてただろ・・とかいろいろ考えたよ。・・したらさー涙が出てくるよね。」


「ね、タカヒロくん・・こっち来て」美奈は徐に席を立つと入り口の階段のところに向かった

入口から店に入るまでの地下の階段の壁には沢山のフライヤーが所狭しとビッチリと貼られていた


「ここ、見て」美奈が指差した先の壁をタカヒロは近付いて見る


「・・・・・・これって・・」言葉を失うタカヒロだった




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