魂が繋ぐ出会い
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タカヒロはバスを降りた。祖父が通っていた<青葉台高校>の正門を通り過ぎ坂をゆっくり下っていく
[下野楽器]
駅前にある大きな楽器屋とは違い間口の狭い入口に今時珍しい手動ドアの店だった
タカヒロがゆっくりドアを開ける
「すいません。先日ギターを修理してもらった者です。」
「はい、あっ!君ね 」30代後半ぐらいの店主が奥から出てくる
「覚えていてくれたんですか?」
「ははは、君みたいな若いお客さんは珍しいからね。なんせ駅前にあの馬鹿でかい店が出来てからお客さんそのものが減ったしね、うちは親父バンドの人か昔っからの連中ぐらいしか来ないからねぇ。君みたいな若いお客さんは嬉しいから覚えてるんだよ」店主は微笑みながらタカヒロにそう言った
「あの楽譜を探してるんですが、どこ行ってもなくて。
THE BEATLESのHey Judeの楽譜ってありますか?」
「メジャーなLet It Beとかならあったはずなんだけどな 。あー、
ちょっと待ってて。二階のリペアマンに聞いてくるよ。」
「父さーんあのさ.....」
狭い店内の階段を話ながら店主は上っていく
5分ほどして店主はリペアマンと下りて来た
「こんにちは。 君、 この前のギブソンの修理の?
あのギターかなり年季が入ってたね 、あれはオークション?それか
君のかい?」
「いえ、祖父のものです。」
「じいさんの?
あのギター身に覚えがあるんだよ
・・・ボディのとこの傷に。 」
「え?
もしかしてじいちゃんの同級生の方ですか?
そこの高校の?
僕、山村隆宏っていいます
祖父は山村 隆です」
「隆、隆の孫か!! そうかそうか、 そうか ~」
そのリペアマンはタカヒロの頭を撫でる
「隆は元気か?」
隆の現状を少し話してみた
「隆と一緒の軽音部にいたんだよ。 下野 幸助って名前だよ」
体格がガッチリしていてロマンスグレーの長髪を後ろで束ねた男は
祖父の会話に出て来たドラムの人だったって事をタカヒロは思い出した
「じいちゃんが言ったんですよ、もし今でもあるならここの楽器屋に出してくれって。」
「そうなのか~~嬉しいよな。アイツとはさ、アイツがこの街に帰って来てからは度々会ってたんだ。
俺がこの楽器屋を始めてからもアイツはよく来てたよ。その愛用のギブソンを持ってな。
しかし、いつ頃からかパッタリ顔を見せなくなってしまってな。・・・
いろいろありすぎたんだろう。
俺らが君ぐらいの時の文化祭でな・・」
「その話、じいちゃんから聞きました。あの、ギターに火を点けた話も、それから・・広沢律子さんの事も」
「そうか~りっちゃんの事もか・・りっちゃんは隆が好きだったもんな。俺らは気付いてた。
隆が火を点けた時な、りっちゃんが濡れたTシャツをギターに被せ火を素早く消した事があったんだ。
直前に俺らはいろいろあって俺は悩んだ。
りっちゃんはさ、俺に水を被れと言った。」
「聞きました。濡れたTシャツで火を消したって事。律子さんが機転を利かせたんですよね。」
「いや、違う。隆の行動を分かってたりっちゃんはさ俺に気合を入れるように言ったけど違う。
最初から濡れたTシャツで消す事を頭で計算してたんだ。
俺が約束守れなくて悔やんでる気持ちも酌んでな、俺にも隆の尻拭いって言ったら言葉悪いけど
最後まで仲間ならって思いをさ、気持ちで出したというか・・ 舞台で隆が恥をかかないようにとかみんなの事をりっちゃんはいつも考えていた
あの時は衝撃が走ったよ。隆にもりっちゃんにもな」遠くを見ながらタカヒロに話す下野だった
「そうそう、楽譜を探してたんだって?」
「そうなんです。僕も今軽音部でビートルズやってるんです。文化祭のセットリストを考えながら楽譜を探してるんですけど・・なかなかないですね。」
「そうだな、見た通りこんな古ぼけた楽器屋だしな、揃えも悪い。大手の楽器屋にないとなると
厳しいな。」
「・・ですよね」
「だが、あるんだなこれが!」目の前にバンと楽譜を出して見せた
「古い店だからこそある!って事を若い奴らに教えたいよ~」笑いながら下野は言った
「少々黄ばんでいますのはこれがかなり古いからであります!」兵隊のように敬礼をしながらおどけてタカヒロに言う
「わー!ありがとうございます。ほんとに・・少し・・黄色いですね」楽譜を見ながら遠慮がちに言ってみる
「幾らですか?」財布をリュックから出すタカヒロ
「いらないよ。タカヒロくん?だっけ。おじさんは嬉しいんだ。昔の友達の孫がさ~こうやって同じように音楽好きでいてくれて、しかも同じビートルズをやってる。SOULが良い!気に入ったよ!君のココがな」下野はタカヒロの胸あたりを軽く拳でつついた
そして右拳を出して見た。タカヒロは無意識に同じように右拳を下野にくっつけた
「おじさん。ありがとう。出会えて嬉しいですよ」
「・・・・・・」下野の目は涙で潤んだ。50年前の隆と目の前のタカヒロが重なった瞬間だった
「隆に宜しくと言っててくれないか?俺はまた・・待ってると。」
「分かりました。」
「あ、それから・・文化祭だっけな、どこの高校なの?フライヤーあるなら店の前で宣伝しといてやるよ。
それと、、おじさんも行っていいかな?」
「もちろんですよ!是非!!また出来上がったら持ってきます!宣伝お願いします!
では、失礼します」
下野の息子も目を細めながら二人の様子を見守っていたのだった。
タカヒロが帰ろうとした時の事だった
ブロロロロ~~
大きな音をたてた一台のバイクが店前に止まった。
タカヒロが目をやるとバイクを降り、ヘルメットを脱ぐ人がドア越しに手を振っていた
「あ、来たよ。父さん、いつものあの子」
「タカヒロくん、丁度良かった。君に紹介しておきたい人が来たよ」
「え?誰ですか?」タカヒロがもう一度外を見た。
ヘルメットを脱いだのは男性ではなかった。
250ccバイクでやって来た目の前の人は170センチはある長身の、
女性だった。




