若葉の頃<4>
下野が河本を呼び止める
「河もん、マック行かねぇ? 」
「珍しいね~ 寄り道して大丈夫かよ?」
「たまにはいいんだよ。
なんちゅうか 俺ら学生は自由なようでそうじゃねえな。 監獄の中の昼休みにグランドで自由に過ごしながらもサイレンと号令一つで手枷、足枷がまた付けられるようなさ、家でも学校でもな。
俺な、お前に隆のギターの事を聞くまでアイツに嫉妬してたって言うか、、。アイツの親父さんは政治家だろ?この町の奴らはみんなへーこらしてさペコペコバッタ。
アイツがある日 新品のギターを抱えて来た時には
やっぱ金持ちはいいなって。お強請りすりゃなんでも手に入る
だからアイツはあんなに態度がでかいってね。
だけどアイツのギターは悔しいけどココに響く 」
下野は自分の左胸を拳で叩きながら言う
「ハングリーな何かが打つんだよ。けどお坊っちゃまじゃねえか
何が分かるんだって!一人僻んでる俺がいた
まさか新聞配達?朝暗い内からアイツが?
俺は今までアイツが吐いてきた言葉を思い返してた
全て理に適ってやがる
誤解してた。」
河本も口を開く
「それがタカなんだ。 小学校から同じだった 。
中学で俺は陸上部でアイツは帰宅部だった
まあアイツは毎日ギターを弾いていたな
河川敷や駅前とか
人が集まろうが関係なくて。
次第に俺らはすれ違ったな
同じ高校に来てた事も知らなくてある日、 メンバー募集の紙を手にやってきたのがアイツで、それが再会みたいな感じだったかな
あんな無愛想なくせに なんか優しさがある
目に見えた優しい優しさじゃないぞ。わかるか?
昔、こんな事あったんだ。
モルタルの古い壁に女の子が知らないでもたれてたんだ。女の子の背中は真っ白になった。そしたらアイツ
<お前はどこもたれてんだよ!>って偉そうに言いながら、ごく普通に背中を手で払ってあげてた
エレベーターではさ、スタスタ先に行ったかと思えばドアが閉まらないように自然に押さえてたりとあいつの優しさはずるいぜ? 惚れるぞ!」
笑いながら話す
偉そうに言う癖に何故か女にモテやがる いつもおいしいとこ持ってくんだ。、、、
「そうなのかよ。らしいと言えばらしいな。
なんでも真剣にやるしな。 」
「ただ口が悪いなー 」
「ただ口が悪いな~」
二人は同時に同じ所をつく
「文化祭、成功させような。」
「おう!」 。
_____ちょうど同じ頃
隆が家に帰り着くと玄関に恰幅のある白髪混じりの男性がいた
「では 何卒宜しくお願いします」
その男性は隆を見るとにこやかに会釈して玄関扉を開けて 帰って行った
隆は思った
<またかよ。今回は岐阜の松風か? 栃木の蔵だいこか?或いは北海道の白い恋人?・・>
幼い頃から幾度と見たこの光景
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母さん お菓子食べたい!、、
隆それはだめよ。 箱に入ってるものは勝手に開けてはだめよ
母さんが後で買ってあげるわよ
やだやだー!
菓子箱に触れるだけで父親に怒鳴られた _______________
中学生になり世の中の仕組みとやらを勉強するようになってから なぜ怒鳴られたのかを理解した隆だった
隆はいつものように
「ただいま父さん、 母さん。」 挨拶をきちんとするものの、自分の部屋に直行した
むしゃくしゃとした気持ちの根源は分かっていた
そんな時に決まって見るビデオはギタリスト特集だった
隆はJIMI HENDRIXのギターがたまらなく好きだった
胸の中の苛立ちを綺麗に剥離する術はそれしかなかったのだ
大人ならアルコールに頼っていたところだ
朝に、母親が言ってた言葉を思い出す
<文化祭の日ね、 父さんも見に行くらしいわ>
父親が息子の為だけに来ることはないと大人に近づくにつれ分かっていた隆
<ああ・・・。三年で最後だし良いものにするから。・・・・父さんもびっくりするようなね。>
作り笑いをしてみた隆だった