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光の下で

「ねぇ、タカ。私たち 本、、本を一度も開いてないんだけど?」律子は笑いながら言う


「あーごめん ごめん、あっタメ口で喋ってしまったね」


「いいのよぅ〜私達は友達じゃない?ね!

さっ!本を開いて見て。

_________________________


、、基本的にはカントリー ミュージシャンだけどジャズやブルースからの影響も受けてたんだよね。

チェット ・アトキンス好きだったわ


後イギリスのスティーウ゛・ハウとか」




「シンディキャッツだよね?  確かSteave HowのギターってGretschがほとんどだったよね?

ほらほらあった。ここに写ってる」



「そうそう!タカ詳しいわね!若いのに?」

二人はページを捲る度に語りあった。


「じいちゃんの影響なんだよね。レコードが沢山あるんだ。

だけど、どれもこれも埃はかかってるし乱雑に置かれてるし。でもさ、それも宝探しみたいで僕はいっつもその部屋に入ってそれらを眺めてた。」


「あらあら。そういった事を聞くとおじいさんとタカの性格が正反対だって事がわかるわね!

タカは几帳面に本とかレコード、あ、今はCDね、そういったものをきちんと並べるタイプ。

でも、おじいさんは大好きなものは手元に大事に置いて、興味がなくなったらポーンって掘り出すタイプなのかしら?」

律子は楽しそうに話す




「そう言えばおじいさん、、、おじいさんが入院されてるって言ってたわね。具合はどうなの?

病人の私が聞くのも変だけど、、、」



「じいちゃんは肝臓を悪くして。数値がやばかったんだ。

ろくに食べもしないで呑んでばっかりだからね。

僕が、僕が生まれる前ね、ばあさんが家を出てったらしいんだ。もう30年くらい?前の話だけどね、 それから酒ばっか。

じいちゃんは若い時から音楽やってて、 もちろん仕事は別にしてたんだけど趣味?趣味が過ぎて、家に帰って来ては部屋に閉じこもって作曲やらバンドのプロデュースとか。中途半端に事を進める事が嫌いで、家庭も省みずみたいなとこがあったって。


父さんも叔父さんも学生の時はクラブとか塾じゃん、

結局、ばあちゃんはいつも一人でご飯を食べてた。ばあちゃんは寂しかっんだろうって。

ある日、置き手紙があって家を出たんだって。


父さんから聞いたんだけど。

それから何年かして連絡がついた時には、ばあさんには新しい家庭があったんだって。40才くらいだったのかなあ?」






「そうだったの。・・・そうね40代って言うとちょうど人生の折り返しというか、タカにはまだまだわからないと思うけれど

このままでいいのか?とかやり残した事はなかったか?とか うーん、体がまだ、まだ今なんかよりは元気でパワフルなのね。だから今まで歩んで来た道の道標を振り返り探してみるの。

目の前にまた、道標を見つけてしまうとね、間違った事でも そんな事関係なくてね


逃げ道かも知れない事もある。だけど幸せを求めるのが普通の人間であり人であり。


…なんかごめんなさいね。話しすぎてしまったわね。

なんだか疲れちゃった。」


律子は穏やかに笑顔で話しながら


「そろそろ帰りましょうか。タカありがとう、明日も話せる?」


「うん!大丈夫?無理しないで。また明日!じゃ本は今日りっちゃんが持って帰って!」



律子はタカの話を聞きながら、自分の脳裏に焼きついているものがフラッシュバックするかのような感覚を覚えた。目眩に似た、そう・・・けしていい感覚でもなく。


けれどもそのやっかいな目眩に似たそれを律子は確かめたくなった


祖父の傍で付き添う若い男の子。普通なら息子であり妻の役目であっただろう。複雑な環境にありながら

屈託ない笑顔で話すタカ。

タカともっと話をしたいと心から思ったのだ。



・・・それだけではない。ずっと心の奥で燻っていた男の事を律子は思い出してしまったのだ

何故、思い出したのか それすらわからないままに、、、。




疲れた様子の律子を気遣いながらタカはそっと立ち上がる。

光が射すまだまだ明るいうちに二人は中テラスの庭で別れた。








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