みにくいアヒルの子
奈菜は自分の容姿に自信がなかった。奈菜は祖母からもらったお金で全身整形し、渋谷のキャバクラ・スワンのNO1嬢になった。ある日なじみの客が連れて来たのは、幼馴染の亮介だった。亮介は奈菜がいじめられていた時、かばってくれた子で、目立たない朴訥とした少年だった。亮介は奈菜に気がつかず、乙きょうへ研修に来て同僚に連れられてきたという。亮介は「なな」と言う名前に興味を示し、好きだった子の名前と同じで、バレンタインデーにチョコレートをもらってお返しに手作りの詩集を渡そうと思っていたが、渡せなかったという。どんな子だったと奈菜が聞くと「可愛い子だった」と亮介は答えた。奈菜はトイレで涙を流し、自分は白鳥でなくて良かったのだと思う。その後店を辞め全財産で元の姿になるよう手術をした。故郷の湖のほとりで、亮介は詩集を奈菜に手渡した。
奈菜は亮介と腕を組んで故郷の山に向かって立っていた。三年ぶりの故郷でした。
遡ること半年前のことでした。
「ななちゃんご指名だよ。」
渋谷のキャバクラ「スワン」、NO1ホステスのななにお声がかかりました。三年前の奈菜がそこにいました。
「ほんと、ななちゃんうらやましい。」
「なんでそんなにきれいなの?」
女の子の声をしり目にさっそうと客席に向かうなな。
私やっと白鳥になれたわ。
田舎の高校を出て東京に出て来たけど、いまどきいい仕事があるわけでもありません。
ななは少しぽっちゃり気味の、顔もいたって普通の女の子で垢抜けない少女でした。笑えば色白の顔につややかな黒髪が似合うと思える子なのですが、自分に自信が無くて、人とうまく話せないのです。
家庭の事情で、おばあちゃんに育てられた奈菜はおばあちゃん子でした。余計に人見知りが強くなっていました。
奈菜はおばあちゃんから東京に出る時、選別に沢山お金をもらいました。両親が残してくれた貯金と、おばあちゃんが奈菜のために少しずつ、年金から積み立てたお金です。
でも一人暮らしをしてもいい仕事はなく、その日限りのアルバイト探す撒き日でした。貰ったお金もどんどん減っていきます。
街を歩いていても、スカウトマンでさえ声をかけてくれません。あまりにも飾り気がなく、高校生か中学生に見えてしまったのでしょう。
たまに声をかけられれて話しをすると、緊張して口をとんがらせてしまうのです。
「なにこの子、アヒルの子か?」
「子供はこんなところ来ちゃだめだよ!」
そこで奈菜は決意をしたのです
わたし、白鳥になるわ!
奈菜は全財産を整形手術に使ったのです。全身美容にもお金をかけました、三か月後、奈菜は自ら渋谷のNO1キャバクラへ面接に行きました。
お店の人たちは奈菜の美しさに驚嘆したのです。透き通るような白い肌、カラスの濡れ羽のような黒髪、ぽっちゃりとした体型はふくよかな胸を残してくれました。
顔や体のバランスを、少し変えただけですが、それで奈菜はNO1になったのです。スワンの白鳥、それはななになった奈菜でした。奈菜は話し方にも自信がついてきました。
私ははくちょうなんだ。
ある日の夜、店に予約のお客さんたちが来ました。
「先輩、僕はこういうところ初めてで苦手ですよぉ」
その声にななは聞き覚えがありました。
亮介君、なんで?
奈菜の常連客が連れて来たのは、小学校から高校まで一緒の亮介でした。朴訥で小柄で女の子には縁のない男の子、でも人の好い性格だったので皆から愛されていたのです。
そばにいると安心できる子、そういう子クラスにいますよね、おとなしいけどいじめられない、いじめっ子も話しかけてくるような子。
いじめられていた奈菜にも亮介は優しくしてくれました。
「ちびアヒル!白ガーコ!」
小柄で色白な奈菜はそう言われては、いじめられていました。
ある日見かねた亮介は
「もうやめてあげて!」
小さな体に似合わない大きな声で、亮介がいじめっ子と奈菜のあいだに入って奈菜をかばってくれたことがありました。
普段おとなしい亮介でしたから、いじめっこもびっくりしたのでしょう、すぐに奈菜をからかうのをやめました。
「ありがとう。」
「だいじょうぶかい?」
バレンタインデーで最初にチョコレートをあげたのも亮介でした。その時の亮介のあの真っ赤な顔。
「ええ?んん、あ。ありがとう。」
その亮介君がなんで?
「よお、ななちゃん、今日は会社の会社の後輩、亮介を紹介するよ。」
ご指名の常連客は亮介とななを引き合わせることにしました。
やばい!ばれる!いや、分かんないか。
「初めましてえ、ななです!」
しょうがない、いつも通りにやるしかない。
「は、はい。」
よかった気づいてない!
「渋谷は良く来るんですか?」
亮介、都会に来て染まっちゃったのかなあ、不安だわ。
「いえ、僕は地方で就職して東京には研修で来てるんです。今日は会社の宴会で。」
変わんない!亮ちゃん。
「あのお、ななさんって言うのですか?」
「え?そう、いや、お店の名前ですよ、もちろん(笑)」
「そうですか?そうですよね。」
やばい、まずい!気づかれたか。
「幼なじみの子と同じ名前だったもので。」
そうよね、私自分の名前好きだったから字だけ変えただけだものね。
「へえ、その子どんな子だったの?」
いじわるかな?
「幼なじみだった子で、みんなからいじわるされてた子だったよ。」
え、、、、、。
「その子可愛いかった?』
「うん、小柄で丸顔で笑うと可愛いんだよ。僕、初めて女の子からバレンタインデーにチョコレートもらったのはその子からだったんだよ。」
亮ちゃん覚えていてくれる。
「へえモテたのね、告白しなかったの?」
やばいやばい。
「僕は女の子には好かれない、いい男じゃないし。その子真面目で良い子だったし、きっと嫌われる。」
「その子今どうしてるの?」
「ある日、東京へ行っちゃったんだ、、東京へ行くという話は聞いてたけど、いきなりだったんだ。東京へ行く前にプレゼントあげようと思ってたんだ。子供のころチョコレートもらった場所でね。F県に亜陀多良山ってあるでしょ、その山が見える河原だったんだよ。」
プレゼント、そうだったんだ!
「で何あげようとしたの?」
「僕、詩を書いたんだ、それをお手製の本にしたんだよ。一度だけ奈菜ちゃんは僕の詩をほめてくれたことあるんだよ。それをあげようと思ったんだ。」
だめ、泣きそう。
「その子のこと、本当に好きだったのね。」
「うん、だって小さな白い小鳥さんみたいだったんだ、かわいかったよ。」
「あっちょっとトイレに行って来るね。」
ななは席を立った、トイレに入ると戸を閉めた。あふれ出てくる涙に奈菜は息が止まりそうでした。
私は白鳥じゃない、でも白鳥じゃなくても幸せだったんだ。
それから三か月、なながしたこと、それは元の奈菜に戻ることでした。稼いだお金で元の体に戻したのです。そして、故郷に帰ったのです。
「奈菜ちゃんこれ子供の頃のバレンタインデーのお返し、遅くなってごめんなさい。」
亮介が奈菜に渡したのは、お手製の詩集でした。
亜陀多良山が見える川のほとりには、白いアヒルが泳いでました。
奈菜はしずかに亮介の腕をとりました。
アンデルセンの童話みにくいアヒルの子ではありません。昔の映画で「女性は愛すると美しいものだ」というセリフがキーワードになっている作品がありました。現代の、大人向きの童話にその意味を活かしてみようと思ったのです。タイトルは色々迷ったのです。「アヒルのままで」「白鳥にならない」とか。でもやはりみにくいアヒルの子で行こうかと思ったのです。それは私自身と重なるところがあるからです。
お読みいただきありがとうございました。




