コンビニにトラックが来る
「こんにちは。いら…」
俺は入口を確認すると、彼女が来ていた。
「お前!また来てれたのか?」
「うん。喉が乾いて、お腹も空いたしね」
「そうか。俺のオススメは…」
すると、また入口が鳴った。
誰だと見ていると、いつも食品を届けてくれるトラック運転手だった。
「お疲れ様です」
彼女にここにいろと指で指示すると、俺は男性の元に行く。
青色コンテナの中に商品を入れており、並べるのが俺の仕事だった。
「おう。相変わらずだな」
腕を叩かれ、俺は表情を緩める。
昭和の香りがするような、兄貴分タイブで、情報を教えてくれたり、商品の何が売れているのか知りたがったりと、互いに情報交換をしていた。
俺は上機嫌に遊ぶライオンみたいに、男性に言う。
「この間、計ったら、また伸びました」
「そうか。若いうちはいっぱい食べて、いっぱい動け。いいな」
「分かりました」
俺が素直に答えると、男性はちらりと彼女を見てくる。
「お前の彼女か?」
「そうです」
三つ編みして、妖精みたいなふわりとした、ワンピース姿。
俺は取られてはならないと、密かにガードする。
しかし男性に読まれたらしく、苦笑する。
「取らないよ。俺、奥さんと子どもがいるし」
「そうですか」
「お前、まだ若いな。彼女を助けようとするのもいいけど、ほどほどにな」
俺の頭を小突くと、男性は振り向く。
「まだ、あるんだ。よろしく頼む」
「はい!!」
サーカスの座長に懐いたライオンみたいに、俺は荷物を取りに行く。
彼女はコンビニの中におり、ちらりと見たが、商品を見ているらしかった。
「お前、これ運べ」
と言われ、荷物を受け取る。
俺は自然に受け取りつつ、聞いてみる。
「トラックでどこから来たんですか?」
「それはな…。こそこそ」
寄れと手で誘われ、男性に近づくと、小さな声で教えてくれる。
「そんなに遠くから来ているんですか?」
驚いて男性を見れば、ぷっと笑い出す。
「お前な、俺達が毎日、何km走っていると思う? トラック運転手をなめるのよ」
「なめてません」
俺は尊敬の眼差しを向けると、
「早く中に運べ。悪くなるぞ」
「は、はい」
俺は素早く移動すると、店内いた彼女が、カゴを持って近づいて来た。
「何、買うんだ?」
「あのね、サラダスパゲッティと、サイダーとミルクティーと、ベイクドチーズケーキかな」
「そうか。もう会計を済ませたのか?」
「まだ。あなたにやってもらおうと思って」
彼女が白い肌を赤く染めると、目を伏せる。
俺も優しげな顔になると、男性に言われる。
「若いな。俺もそんな時期があったっけ」
「何、言っているんですか? まだ若いじゃないですか」
「それはそうだ。負ける気がしない」
ははっと男性は笑うと、俺の彼女を見て、1000円渡してする。
「これで何か買え。成長期なんだから、遠慮するな」
「でも…」
「いいから。…あ、新しくお客さんが来たぞ。早く商品を並べろ」
そう言うと、男性は振り返り、行こうとする。
「もう行くんですか?」
「ああ。トラック運転手は時間厳守だからな」
「厳しいんですね」
「まあな。俺はいいから、彼女と何か買え」
そう言うと、手を上げ、行ってしまった。
彼女は恐る俺に聞いてくる。
「目つきの鋭い人だね。うちのライオンさんに負けていないや」
「そうか? それなら嬉しい。俺の憧れの人だから」
駐車場を見れば、トラックがバックして出て行くところだった。
俺は手を振ると、彼女に1000円札を見せる。
「どうする? 何か買うか?」
「うーん、、どうしよう。アイスでも買おうか?」
「おう」
俺は答えると、彼女にアイスを選ばせる。
「どれがいいか、考えとけ」
その間に、荷物を並べたり、バックヤードに持って行ったりする。
「お会計、お願いします」
彼女の鈴のような柔らかい声。
俺はすぐさまレジに向かうと、彼女の買う商品のバーコードを通していく。
会計金額が出ると、彼女はICカードで支払うのだった。
「ありがとうございました」
俺は丁寧に頭を下げた後、彼女に聞く。
「トラック運転手、かっこよかっただろう?」
「うん。何でもこなしそうな、賢そうな人だったね」
2人でふふと笑うと、俺は彼女に言う。
「気をつけて帰れよ。分かったか?」
「うん。ありがとうね」
1人だけオーラの違う彼女。
白いだけ不安だが、俺はまだ仕事があるので、彼女を見送るだけにとどめた。




