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第9話お泊りイベント

 雑談していると、外はいつの間にか本降りになっていた。

 ……そういえば、今日は夕方から雨予報だったか。


「雨か…二人、大丈夫か?」

「ん〜ウチはまぁ…」

「私も一応は…」

「いや、この雨は危ないだろ。今日は泊まってけよ。母さんには俺が言うからさ」

「えっ、でも…」

「気にしないでくれ。風邪でもひいたら困るだろ」

「ありがと!壮馬!」

「ありがとうございます…」


 二人の顔が一気に明るくなる。

 ――が、その空気に水を差す視線が一つ。

(この二人がお泊まり?

 ……そんなの、私が許さない)


「お兄!」


 バンッ、と机を叩いて、美咲が抱きついてくる。


「二人は私の部屋でいいんじゃない?その方が安心でしょ?」

「お、確かに…二人もそれでいいか?」

「あ、うん!」

「私も問題ありません」

(絶対何かされる…)

(でも断れない…)


 そんな不安をよそに、時間はあっという間に過ぎていった。


「二人とも、連絡は済ませてあるわよ〜。さ、ご飯にしましょ」

「助かります!」

「ありがとうございます!」

「今日は自信作のハンバーグよ!」

「母さんいつも言ってるじゃん」

「毎日成長してるのよ!」

(似てる…)

(完全に親子ですね…)

「……うまっ!これマジで美味しい!」

「本当に美味しいです…ですが陽光、食事中は静かに」

「うるさいな!丸くなったと思ったらすぐにこうなんだから!」


 また始まった。

 ――が、母さんが割って入る。


「ねぇねぇ、壮馬って学校でどう?」

「とても優しいです」

「頼りになります!」


 母さんはホッと胸を撫で下ろした。

 ……いや、そんなに心配されてたのか俺。


「お母さん、そんなに不安だったの?」

「だって聞きづらいのよ〜」

「いや自分から聞けよ…」

「あはは…面白いお母さんですね」


 和やかに食事は進み、やがて風呂の時間に。

 ――そして案の定。


「私は一人で入ります。陽光は美咲ちゃんと」

「はぁ!?なんでよ!アンタが行きなさいよ!」

「私は真衣お姉ちゃんがいいな〜」

「はい決定!いってらっしゃい!」

「えっ、ちょっ…」


 真衣はそのまま連行された。

 美咲はなぜかニヤニヤしている。


「由紀、なんかあったのか?」

「さぁね」


 一方その頃、風呂。


「あの…なんで私なんですか?」

「簡単だよ。お兄と一番お似合いなの、真衣お姉ちゃんが」

「えっ…」

「それに――その方が面白いし」

「後半が本音ですよね!?」


 くすくす笑いながら、美咲は距離を詰める。


「ちょ、何して――」

「へぇ…」

「ちょっ…やめ…」

「案外余裕ないんだね〜」

「や、やめてください…!」


 しばらくして。


「ちょっとやりすぎたかも」

「……もう…」


 そのまま二人は髪を洗い始める。


「それ何ですか?」

「これ?シャンプーヘッド!目に入るの嫌でさ〜」

「ふふ…可愛いところもあるんですね」

「褒め言葉として受け取っとく」


(……悪い子じゃないのかも)

 湯船に浸かりながら。


「美咲ちゃんは、壮馬くんのどこが好きなの?」

「全部!」

「即答…」

「性格、口調、ちょっとスケベなとこも全部!それからそれから…」

「ちょっ…」


 しばらく経っても美咲の語りは止まらなかった。

 ――気づけば一時間。


「はぁ…お風呂に入ったはずなのに疲れました…」

「やっぱり美咲ちゃんすごかった?」

「いえ、すごいというか歪んだ愛を実感しました…」


 真衣は重い肩を下ろすように話す。


「じゃあウチはお風呂行ってくるね〜」

「あっちょ…はぁ…」

「どうした?そんなげっそりした顔して」

「壮馬くん…いつもご苦労様だね…美咲ちゃんと居ると大変じゃない?」


 真衣はまるで徹夜をしたような顔で俺に話しかけてくる。


「そうだな…まぁ大変なこともあるけど、やっぱり妹だからなんやかんや許しちゃうんだよな」

「妹はブラコン…兄はシスコン…」

「真衣。俺へのその認識は即刻消してくれ」

「ふふ、やっぱり壮馬くんとが一番気が休まるな…」

「敬語抜けてるぞ?」

「あっ…やっぱり癖は抜けないね」


 俺達は二人で笑った。


「じゃあ、皆おやすみ」

「おやすみ〜!」

「おやすみなさい」

「お兄おやすみ!おやすみのぎゅ〜して〜」

「はぁ…仕方ないな…ほらっ」

「やった!ぎゅ〜」


 俺が手を広げると嬉しそうに美咲が胸に飛びついて、頬をすりすり…いつも通りだ。


「はぁ…明日学校だけど、どう登校しようか…まぁ朝考えればいっか…」


 俺は重くなった瞼を閉じ、深い眠りに着く。


「では、皆さんおやすみなさい。また、翌朝」

「おやすみ氷結」

「おやすみ〜!真衣お姉ちゃん!由紀お姉ちゃん!」


 布団につき、全員の呼吸音だけと外の雨が窓を叩く音のみ。

(なんやかんやお泊りは初めてですね…壮馬くんは今何してるんでしょうか…もう寝たのでしょうか…それとも別のことをしてるんでしょうか…)

(お泊りは初めてじゃないけど、壮馬の家は初めてだな〜今何してるんだろう…)

(お兄は今何してるんだろう…)

(少し気になりますね…ちょっとだけ行ってみますか…)

 真衣がそっと布団から抜け出す。

――その瞬間、

 別の布団も、同時に揺れた。


「あ、あれ?氷結も…?」

「お姉ちゃん達も?」

「ふ、二人共…い、いえ私はトイレです。そ、そんな夜這いみたいなことはしません」


 真衣はトイレと偽り、部屋から出ると、速攻壮馬のいる部屋に入る。

 壮馬にバレぬ為、息を潜めて壮馬に近付く。

(……可愛い。こ、こんなの我慢できないよ…)

 真衣は壮馬の布団に入り、壮馬の隣に横になった。

(ん…すごく眠くなってきた…もういいや、このまま寝ちゃおう…)

 真衣は瞼を閉じ、壮馬の横で眠りに落ちた。


「ねぇねぇ美咲ちゃん?」

「どうしたの?由紀お姉ちゃん」

「氷結遅くない…?」

「そうだね…はっ!まさか…」


 美咲は由紀に状況を伝え、急いで隣の部屋に行く。

 そして、扉を開くと幸せそうに寝てる真衣を呆れながら見て、同じ布団に入った。


「氷結だけずるいよ…」

「お兄の隣は私なのに…」


 由紀と美咲は瞼を閉じ、深い眠りに落ちた。


――翌朝。


「んん…よく眠れ……は?」


 右に真衣。

 左に美咲、由紀。

 何があった…?


「と、とりあえずここから出ないと…」

「んん…」


 だが、そんな俺の考えは甘く、寝返りを打った真衣が腕を掴む。

 振り解けない…ここは待つしかない。

 つまり、ここでの俺の選択は真衣が起きるまで待つだった。

 その後、真衣が起きたのは一時間後だったのだ。

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