第3話 壊滅的な運動神経
腕相撲をして、お弁当を食べて少し時間が残っていたので雑談をすることにした。
「負け犬さん〜今どんな気持ちですか〜?」
「うるさいです。たった一回勝ったぐらいであまり調子にならないでください」
「二人共喧嘩はやめてね?」
毎回毎回なんで、喧嘩になるんだ…ここは一つ場を和ませるために話題を変えないと。
「二人はさ、なんか趣味とかないの?」
「勉強」
「運動」
コイツら即答かよ…
そうだった、忘れてた…この二人は一つのことに特化してたんだった。
「い、いやもうちょっと、ほら何かあるでしょ?本を読むとかカフェ巡りとか…」
「ウチは運動以外はないね〜」
「私も勉強以外はこれといって趣味はないですね。今まで勉強以外は無意味だと思ってたので…だけど、高校に入ってこの考えは少し…変わりました…」
真衣は話してる途中に顔を赤くしチラッと、俺の方を見て一瞬で顔を逸らした。その様子を由紀が見てニヤリと笑った。
「ねぇねぇ変わって何が〜?教えてよ〜」
「うるさいです。貴女に教える筋合いはないです」
「はぁ!それ何?ムカつくんだけど」
「まぁまぁ由紀、真衣も教えたくないだろうからあまり詮索はしない方が良い」
「ちぇ〜」
「ありがとうございます。壮馬くん…」
まだ顔が赤い真衣に感謝されながら俺は時計を見て、そろそろ戻る時間だと気付く。
「そろそろ昼休み終わるし教室戻ろっか」
「そうだね〜」
「そうですね」
俺達は昼休みが終わるのがほんの数分だった為、教室に戻ることとした。
次は体育だ。
教室に戻ると、すでに人はかなり少なかった。
「次は体育だから皆早く動いてよ〜!」
由紀の発言力は流石と言うべきか由紀が言った瞬間、クラスに残っていた人全員が教室から出て行った。
由紀はなんというかこういうときは役に立つよな…普段は役に立たないけど。
俺達は着替え終え、グラウンドに出た。
「今日の体育ってなんだっけ?」
「今日はサッカーです。まず基礎練習で途中ゲームらしいです」
「なんで氷結が言うんだよ!それを言うのは私の役目!!」
「私は貴女と違って記憶力が良いので覚えられるんですよ」
「それぐらいウチだって覚えられるよ!!」
由紀は真衣に煽られ、手を上げそうになった。
だが、さすがに直前でやめた。
「そういえば前から思っていましたが一人称"ウチ"はやめた方が良いですよ。目上の人に失礼ですし口調的に軽く見られそうです」
「うるさいなぁ。氷結は自分の意見を押しつけないでよね」
「一人称は人それぞれだしな〜俺は俺だし真衣は私。由紀はウチ以外に個性があって良いんじゃないか?」
「そうですかね?個性は尊重しますが私は陽光のウチ呼びは到底認められません」
「ウチはウチなの!それで良いでしょ!」
なんやかんや二人は喧嘩していたが体育の授業が始まった。
「今日はサッカーの授業三回目だったよな?じゃあ準備運動を各自でして、ペアを作って基礎練習を開始して〜あとは白上任せるぞ〜」
「はい!」
俺の学校の体育教師は基本的にやる気はないがちゃんと授業をするので誰も文句を言わないが、すぐに人任せにする。
「1・2・3!」
サッカーはそこまで得意じゃない。
ペア次第では迷惑かけそうだな…
俺は授業体操をしながらそう考えていた。
「よし!じゃあ準備体操終わりです!ペアを作ってください!」
俺がペアを探そうとした瞬間、由紀と真衣がすぐさま俺の隣に来て俺の腕を掴んだ。
「氷結!あんたは運動苦手なんだから他と組んでよ!」
「いえ、私は壮馬くんがペアとして一番合っていると思ったので壮馬くんを選んだのです」
「アンタの運動神経で壮馬と釣り合うなんて思ってんの!?絶対無理だから諦めなよ!」
「なんでそう決めつけるんですか?」
「アンタの運動神経が壊滅的に駄目だからに決まってるでしょ!!」
「お前ら〜どうした?ペアが決められないのか?じゃんけんで決めろよ〜」
由紀と真衣が揉めていると体育教師が面倒くさそうにしながら近付いてきて、じゃんけんで決めろと言われた。
その言葉を聞いて二人はお互いの顔を見合って頷いた。
「「最初はグー!じゃんけん!ポン!!」」
「壮馬〜パスいくよ〜!」
「分かった〜」
じゃんけんの結果は由紀の勝利で終わった。途中真衣は「三本勝負!」と嘆いていたがそれは無効された。
氷結女王のキャラ崩壊だと思った。
ちなみに負けた真衣は先生とペアだ。
「は〜い!お前ら注目〜今からパスの基本を教えるからな〜朝日!軽くいくからちゃんとトラップしろよ!」
「は、はい!」
「ほい!」
先生が真衣に向かってゆっくりボールを蹴った。そのボールを真衣はトラップしたら良いだけだ。
だが、トラップできれば良かったが…
「うぎゃっ!」
「だ、大丈夫か?そんな強く蹴ってはないんだが…」
「だ、大丈夫です」
噂通り、真衣の運動神経は壊滅的だった。
真衣は先生から蹴られたボールを足で止めようとしたがボールを止めようとした瞬間、真衣は転んだ。ワザとという訳ではなく、本気で転んだ。
そんな光景を見たクラス連中は笑いを堪えきれなくなり、もう笑っている奴もいた。
その時。
「アンタ達何笑ってるの?氷結…いや、朝日さんは自分なりに頑張ったのよ?それを笑うなんて人として失格よ」
その言葉を聞いたクラス連中は一瞬で言葉を失い、俯いた。
「そ、そうだ!白上の言う通りだ。人の失敗を笑ってはイカン。そこら辺は弁えるように!」
「陽光…」
「アンタを笑ったりいじめたりするのはウチだけよ」
なんだ。良い所あるんじゃん…
その後のゲームが開始された。
「壮馬!パス!!」
「お、おう!」
俺は由紀にパスを出した。
すると由紀は華麗に全員を抜き――
最後は余裕があったのかわざわざボールを浮かしてオーバーヘッドシュートを決めていた。
いや、人外過ぎるだろ…
休憩時間となり真衣が俺の所に近付いてきた。
「壮馬くん…私さっき皆に笑われたけど、壮馬くんは笑わなかったよね…?」
「当たり前だ。これは由紀と一緒だが、真衣は一生懸命頑張ったんだ。それを笑うなんて俺は死んでも嫌だね」
「あ、ありがとう…あと、陽光には感謝だね…」
俺の言葉を聞いた真衣は顔を赤くし俺の肩に頭を乗せた。
ちなみに真衣が俺の肩に頭を乗せるのは、いつもの癖みたいなものだ。最近は治してると聞いていたが、やはり癖っていうのは、そんな簡単に治るものじゃない。
だが、今はそんなことを言うつもりはない。
「あとでちゃんとお礼言っておけよ?喧嘩腰じゃなくて、普通に謝るように」
「う、うん…」




