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第9話:神医皇妃の誕生と、愚か者への最終通告

 帝都の広場には、国中の、

 そして近隣諸国から集まった人々で埋め尽くされていた。

 今日は、リリアーナの皇妃戴冠式と、

 ジークハルト陛下との結婚式が同時に行われる日だ。


「……見て。空が、あんなに綺麗」


 リリアーナが呟くと、ジークハルトが彼女の手に指を絡めた。

 彼女が歩くたびに、精霊たちが虹色の光の粒を降らせ、

 聖樹の葉が祝福の歌を奏でる。


「魔力ゼロの無能」と呼ばれた少女は、

 今や大陸全土から「世界を癒やす神医皇妃」として崇められていた。

 一方、帝国の最下層にある監獄の窓から、その光を虚ろな目で見つめる男がいた。

 元・第一王子のエリオットだ。

 彼は第6話でリリアーナから与えられた、

 自らの悪意を凝縮した「黒い丸薬」の副作用に苦しんでいた。


「あ、ああ……痛い……リリアーナ、助けてくれ……」


 彼の肌には、かつて自分がリリアーナに浴びせた罵詈雑言が、

 「呪詛の文字」となって浮かび上がっていた。

 食事をしようとすれば石の味がし、水を飲もうとすれば泥の味がする。

 かつてリリアーナが「処方箋」を書き、影で彼のために浄化していた恩恵を、

 彼は自分の手で焼き捨てたのだ。

 そこへ、一人の老いた看守が皮肉げに告げる。


「おい、お前の妹と父親はどうなったか知ってるか? 

 帝国の門前払いを食らった後、野垂れ死ぬ寸前で、

 自分たちがかつて見捨てた貧民街の住人たちに捕まったらしいぞ」

「ひっ……!?」

「お前らがリリアーナ様に押し付けていた『国のツケ』だ。お前らだけで、

 一生かけて支払うんだな」


 エリオットはガチガチと歯を鳴らして震えることしかできなかった。

 もう、誰も彼を助けない。精霊すら、彼を「いないもの」として扱っていた。

 再び、光溢れる大聖堂。

 ジークハルトは、何千人もの前でリリアーナの腰を抱き寄せ、高らかに宣言した。


「今日、この日、私は世界に誓おう。リリアーナこそが、

 私とこの帝国の唯一の光であり、守るべき魂であることを! 

 彼女に不敬を働く者は、この私が決して許さぬ!」


 会場を揺らすような大歓声。

 リリアーナは少し照れたように笑い、

 ジークハルトの胸にそっと寄り添った。


「陛下……いえ、ジーク。私、なんだか夢を見ているみたいです」

「夢ではない。……リリアーナ、ここからが君の、

 そして私たちの本当の物語だ」


 二人の唇が重なる。

 その瞬間、帝国の全土に「浄化」の光が広がり、

 人々の病や疲れを癒やしていく。

 それは、リリアーナが世界に贈った、最高に幸せな『処方箋』だった。

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