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第6話:愚か者の強硬手段と、逆鱗に触れた皇帝

 夜会の屈辱から数日。

 エリオット王子たちは、帝都の外れにあるボロ宿に潜伏していた。


「……リリアーナさえ手に入れば、精霊は戻り、私の評価も元通りになるのだ。

 力ずくでも連れ戻すぞ」


 エリオットは、王国から隠密に連れてきた「影の騎士団」に命じた。

 彼らはリリアーナが一人で薬草園にいる隙を狙い、麻痺毒の矢を放とうとする。

 だが、その矢が彼女の肌に触れることはなかった。


「――私の庭で、私の愛し子に何をしている?」


 冷気が辺りを支配する。

 リリアーナの背後に現れたのは、影よりも暗い殺気を纏ったジークハルトだった。

 彼が軽く指を振るだけで、潜んでいた騎士たちは、

 自分たちが放とうとした毒よりも強力な「重圧プレッシャー」に押し潰され、

 地面にめり込んでいく。


「あ、陛下。あの、この方たちが急に……」

「リリアーナ、下がっていなさい。ここからは、王としての仕事ではない。

 一人の男としての……復讐だ」


 ジークハルトの瞳が深紅に輝く。

 彼は、物陰で震えていたエリオットの首根っこを、魔法の手で掴み上げた。


「ひいっ! あ、あがっ……放せ! 私は一国の王子だぞ! 国際問題にする気か!」

「国際問題? 結構だ。我が国の至宝を傷つけようとしたのだ。

 王国ごと更地にしてやってもいいのだぞ?」


 ジークハルトの周囲で、完全に回復した聖樹の魔力が渦巻く。

 その余波だけで、王国の騎士たちが持っていた武器が粉々に砕け散った。


「待ってください、陛下!」


 リリアーナがそっとジークハルトの腕に触れる。


「……殺すほどの価値もありません。彼らには、もっとふさわしい末路があります」


 リリアーナは、震えるエリオットの目の前に、

 一粒の「真っ黒な丸薬」を転がした。


「それは何だ……!? 助けてくれるのか!?」

「いいえ。それは、あなたが今まで私に押し付けてきた、

 『悪意』を凝縮したものです。これを飲めば、

 少しは他人の痛みがわかるようになるかもしれませんね」

「ふざけるな! 誰がそんなものを……!」

「飲まぬなら、今ここで首を跳ねるが?」


 ジークハルトの氷のような声に、エリオットは悲鳴を上げながら、

 その丸薬を飲み込んだ。

 その瞬間、エリオットの全身に激痛が走る。

 それは、リリアーナが長年耐えてきた「国の汚れ」の、ほんの一部。

 だが、甘やかされて育った王子には、それだけで地獄の苦しみだった。


「あああああ! 痛い、熱い! 誰か、シェリル、助けてくれええ!」


 エリオットは醜くのたうち回り、衛兵たちによって、

 「犯罪者」として引きずられていった。

 その様子を冷ややかに見つめていたジークハルトは、リリアーナを抱き寄せ、

 その耳元で低く囁く。


「……リリアーナ。もう二度と、私の目の届かないところへは行かせない。

 今日から君の寝所は、私の隣だ」

「え……っ!? 陛下、それは……」


 赤くなるリリアーナを無視して、皇帝は彼女を横抱きにすると、

 広大な皇宮へと戻っていった。

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