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第5話:豪華な社交界と、ゴミを見るような再会

 帝国の夜会。

 それは救世主となったリリアーナを、貴族たちにお披露目する場でもあった。


「リリアーナ、緊張しなくていい。私の隣にいるだけでいいんだ」


 ジークハルト陛下に贈られたのは、

 精霊の涙で織られたという伝説の絹で作られた、真珠色のドレス。

 魔力ゼロだったはずの彼女が、

 今や帝国の魔力の中心である「聖樹の寵愛」を一身に受け、

 内側から発光するような美しさを放っている。


 そんな中、会場の空気が凍りついた。

 ボロボロの正装で現れたのは、王国の使節団――エリオット王子、

 そして妹のシェリルだ。


「……リリアーナ! やはりここにいたのか!」


 エリオットは、かつて捨てた婚約者を見るなり駆け寄ってきた。

 だが、その目は再会の喜びではなく、すがりつくような卑屈な光を宿している。


「いいか、リリアーナ。今すぐ王国に戻れ。国は今、窮地にあるんだ!

 精霊は暴れ、食べ物は腐り、民は飢えている。

 お前の『処方箋』があれば治るんだろう? 早くしろ!」


 横ではシェリルが、リリアーナの美しいドレスを忌々しげに睨みつけていた。


「そうよ、お姉様! 自分が贅沢するために帝国に逃げるなんて最低だわ。

 そのドレスも、私に譲りなさいよ。聖女である、

 私の方が似合うに決まってる……」


 リリアーナは、静かに二人を見つめた。

 以前なら、その言葉に怯えていただろう。

 けれど今は、彼らの後ろで悲鳴を上げている「澱んだ精霊」たちの姿が、

 はっきりと見える。


「エリオット殿下、シェリル。今の私に、その資格はありません。

 私は『無能』として、あなたたちがこの手で国外へ追い出した身ですから」

「それは……! その、一時的な気の迷いだ! 公爵家も、

 お前を許すと言っている!」

「いいえ。私はもう、帝国の人間です」


 リリアーナが凛とした声で拒絶した瞬間、ジークハルトが彼女の腰を引き寄せ、

 エリオットを射貫くような視線で睨みつけた。


「我が妃となる女性に対して、随分と無礼な言い草だな。弱小国の王子よ」

「き、妃……!? こんな魔力ゼロの女をか!?」

「魔力ゼロ? 貴様の目は飾りか。彼女は聖樹を蘇らせ、私の呪いを解いた。

 この大陸で唯一の『神医』だ」


 ジークハルトが指先をパチンと鳴らす。

 すると、エリオットとシェリルの周囲に、

 リリアーナが今まで抑えていた「彼ら自身の身勝手な欲望」を糧にする、

 黒い精霊が群がった。


「うわあああ! 何だこれ、離れろ! 臭い、汚い!」

「お姉様、助けて! 助けなさいよ!」


 二人が醜く床をのたうち回る中、

 リリアーナはそっとジークハルトの腕に手を添えた。


「陛下、もうよろしいですよ。彼らには、自分たちがまいた種の味が、

 一番の『処方箋』になるでしょうから」


 帝国貴族たちの冷ややかな嘲笑が、王国の使節団を包む。

 かつてパーティ会場でリリアーナを笑った者たちと、

 立場が完全に逆転した瞬間だった。

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