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森の魔女見習いは、光の少年に恋をした  作者: 國村城太郎
第九章 はじまりの魔女

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第40話 四色の巨人

 ——帝城の深部で、四色の巨兵が目覚める。

 恋を奪う者すべてが敵——魔女二人、封鎖された迷宮に挑む。



 ——

 現在の技術でつくられた城の地下へ向かい、明らかに遺跡の遺構らしき場所にくる。この下にトキはいる。そう確信してナナは床板を吹っ飛ばして、地下へ降りていく。

 

「むちゃするわねえ。外壁と違って、普通の床板はずっと脆いけれどね」

 

「この方が早いでしょ、道なりだと迷路みたいだったじゃない? 早くトキに会いたいもの」

 

「すごいね……『恋』ってこういう力なの?」

 

 そういうレアの言葉に、ナナが顔を真っ赤にする。

 

「そ、そうよ、『恋』の力で絶対に私はトキを取り戻すの」

 

 そんな話をしながら、どんどん地下へ進んで行った二人は、ついに簡単には破れない、遺跡の基部らしき場所にたどりつく。

 

 ここからは道を探すしかない、そう悟った二人は魔力を集中して、風と炎の声を聞く。

 

「たぶんこっちね、一カ所だけ下に風が抜けられそうな所を感じる」

 

 扉らしきものをくぐって、螺旋階段のようになった通路を降りていく。

 

 そして、二人は大きな広場に降り立った。

 

 そのとたん周りからの敵意に、思わず二人は、背中合わせになる。

 

 その周りには、四十体ほどの禍々しく巨大な獣が待ち構えていた。


「あれは、前に空船の上で闘った化け物……あんなに沢山」

 

「どうしたの? 自信ない?」

 

 挑発するような口調だが、もうこれが照れ隠しの心配なのは、ナナにはよくわかっていた。

 

 背中合わせで、周りを見回しつつ二人で話す。

 

「赤いのだけは面倒かな、風と相性悪いし」

 

「そうね私も青いのはちょっと面倒だと思うわね、火は水で消されちゃう」

 

「まぁ、私がトキに会う邪魔をするなら、全部やっちゃうわよ」

 

「いいわね、やっちゃおう」

 

 そう軽口をたたきながら、二人は魔力を集中する。それぞれの鎧が、翠と紅に光り輝くと、放たれたように二つの光が鎧兵(ギガント)に向かっていった。



 群がる四色の鎧兵(ギガント)と相対する二色の魔女、ナナは金の鎧兵(ギガント)を、レアは緑の鎧兵(ギガント)を、それぞれ相性のいい鎧兵(ギガント)を狙い攻撃をあてる。

 

 ナナの風が金鎧兵(ギガント)の四肢を切り飛ばし、レアの炎が緑の鎧兵(ギガント)を炎上させた。


 だが、相手はただの獣ではない。

 中身は皇帝を守るべく訓練された近衛騎士たち。

 

 彼等はすぐに連携してナナには赤、レアには青の鎧兵(ギガント)が矢面にたつように動く。

 

 ナナが風の刃を放つと赤の鎧兵(ギガント)が割って入って炎で風を燃やして消し、よこから緑の鎧兵(ギガント)が殴りかかってくる。ナナの風の防壁が歪み、ナナもろとも吹き飛ばされる。地面に亀裂が走った。

 

 レアが炎を放つと、青の鎧兵(ギガント)がその火を激流で消し去ると、金の鎧兵(ギガント)が掴みかかる。

 ギリギリで避けつつその手を蹴ってとんだレアが受け身をとりつつも、地面に突っ込んだ。

 

 逆にナナには、赤の鎧兵(ギガント)の炎が迫り、ナナはギリギリで風の盾をつくって避けた。しかしそこに待ち構えていたように別の鎧兵(ギガント)の攻撃が集中する。


「くっ、きついわね、これは」

  

 同じくレアにも青の鎧兵(ギガント)が向かってきている。

 

「っんとーに面倒な相手ね」


 

 不利な態勢になったナナは一旦、天井付近に飛んで逃れる。

 

 それを見てレアも飛び上がり、ナナに掴まるようにして宙でとまった。


「ちなみに前はどうやって倒したのさ?」

 

 肩で息をしながらレアが尋ねる。

 

「あの時は、一体だけだったしね。あいつら私たちほど魔力がないから、魔玉をつかって動いてるのよ、やつらの身体の魔力の発生源を感じてみて」

 

「う、うん、やってみる……ふーん、なるほど、腕輪とか首輪と指輪とか、魔玉から魔力を取ってるのか、じゃあ時間稼ぎができればいいのか」

 

「でもあの数じゃ相当時間かかるわね、それに早くトキを助けに行きたいのに」

 

「ひとりずつじゃきついから、二人一緒に行動しましょ、で自分の苦手属性が来たら、相手に任す。二人で並んで動きながら闘うの、息を合わせて、出来る?」

 

「出来るわよ、きっと。だって私たち、ともだちだもの」

 

 そう言うと二人は地面に戻る。

 

 そして並んで走り始める。

 

 鎧兵(ギガント)は、攻撃を振り下ろす速度は早いけれど、移動自体は巨体が邪魔をしてそれほど早くない。

 

 風と炎が入り交じり、広場を走っていき、その中で少しずつ攻撃を当てていった。 



 そうして闘いが続く中、突然レアの声があがった。

 

「あ、ずっるーい」

 

「え?どうしたの?」

 

「あいつら、魔力が減ったら魔玉を入れ替えてる」

 

「じゃあ、時間稼いでもダメってことじゃない?」

 

「そうなるわね、一応少しずつ倒していってはいるけれど、きりがないわね」



 その頃、遺跡の最深部では……

 

「さぁ、『鍵』よ、その扉をあけるのだ」

 

 皇帝がそう命じる。

 

「ハイ」と生気のない声で答えたトキは言うなりに遺跡の基部にある魔方陣に手を置く。

 

 魔方陣にぼおっと光が灯る、起動したようだ、だがすぐには何もおきない。

 

「どうなってるんだ? 光るだけで何も起こらないぞ?」

 

 そう皇帝がいぶかしがる。

 

「どうも、触るだけで開くようにはなってないようです。古代文字で何か出てきましたね。解読してみます」

 

「いそげよ」

  

 その時、トキが抑揚のない声で話し出した。

 

「いけない、ここにはおそろしいものが、ひらいてはいけない」

 

 皇帝がまた腕を振り上げてトキを殴り飛ばす。


「イタっ」——トキが痛みに声を反射的にあげる。


 その瞬間、魔力の波動が大きな揺れをたてて、トキとナナの間に繋がった道を遡っていった。しかし魔力を見える人間はここには誰もおらず気付かれることはなかった。

 

「『鍵』が話す必要はない、お前はただ言われたとおり封印を開ければいいのだ」


 そう言うと皇帝は側仕えが持ってきて、差し出した移動式の椅子に腰をかけて、科学者の解読を待ち始めた。



「トキが、痛がってる……」

 

 突然、そう言ったナナがポロリと涙をこぼした。

 

「何よ急に?」

 

「トキの痛みが伝わってきたの、何かあったんだわ、こんなとこでモタモタしてらんないわ。いくわよ」

 

 そういうナナは、感情のままに、脚元に激しい風の魔力を込めて、脚力をあげて飛び出す。

 

 それにレアの動きが追いつけない。

 

 ここまで、息を合わせていた、ナナとレアの足並みが乱れる。

 

 それぞれが別の方向に飛び出してしまった。 

 一人孤立したナナに、赤い鎧兵(ギガント)が掴みかかり、ナナの片足がその手に捕まれる。

 ナナを捉えた赤い鎧兵(ギガント)は、手に炎を出しながら、ナナを振り回す。

 

「うああっ!」

 

 ナナが悲鳴をあげた瞬間に、急に脚元の熱が失われたような気がした。

 

 その時、空中から水流が龍のようにうねりながら飛んできて、ナナを掴んでる鎧兵(ギガント)をその水の牙で襲いかかった。

 

「うふふ、だいぶ苦戦してるじゃない?」

 

 清水が流れる渓流のように流麗な声が広間に響いた。


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