柿の木
秋のお昼時。
少年が三人、塀によじ登り柿を盗んで食べていた。
そこへ柿の木の家の主、太郎が来た。
三八、とん平、まつ吉の三人だ。
太郎「こーらー!!」
三八「あ!やばい見つかった!」
とん平「逃げろー!!」
まつ吉「走れ!」
しかし、その家の隣の家の番犬が吠えた。
ワンワン!!
三八「うわ!?」
とん平「ひえ!!」
まつ吉「いたた・・・」
三人は驚き、転んでしまった。
太郎が三人を見下ろしている。
「「ご、ごめんなさい〜!!」」
太郎は三人を並列させると竹刀でお尻を一度だけペシンっと叩いた。
もちろんある程度力は抜いているが風が冷たい今はより痛みが増した。
三八「いってぇ!!」
とん平「うわぁん!!」
まつ吉「痛いよぉ!!」
家に入れ、と太郎は言う。
三人は何をされるのか怯えていたが・・・。
通された部屋は畳部屋で大きなまん丸いちゃぶ台がある。
太郎「そこで座って待ってなさい」
そう言われて数分待つと太郎がまた現れた。
手にはお盆。柿の乗った皿とお茶が三つ。
壁側を見ると遺影が二つ飾られていてお線香から煙が立っていた。
女の人と自分たちと同じくらいの歳の男の子だ。
太郎「好きなだけ食べなさい」
三八「え?でもさっき柿食べたら怒ったじゃん!」
太郎「柿を食べたことを怒ったんじゃない、盗んだことを怒ったんだ」
とん平「でも、だったら尚更何で・・・?」
太郎「さっきお仕置きをしたろ?それで罪滅ぼしだ」
まつ吉「え・・・」
太郎「それに、お前たちあまりご飯を食べれていないんだろう?服もボロボロだ」
三八「う、うん」
とん平「俺たちお金無い家だから・・・」
まつ吉「だから柿を盗んでたんだ」
太郎「とにかく、この家の柿なら食べに来ていい、
だから他の家に迷惑をかけるようなことはするな」
三八「え、本当に?」
とん平「いいの?」
まつ吉「やった!!」
太郎「ああ」
「「ありがとうおじさん!」」
とん平「あ!あのおもちゃすげえ!」
遺影の近くに置いてあった飛行機のおもちゃを見つけて三人ははしゃぐ。
太郎「ああ、それは息子が好きだった飛行機のおもちゃだよ」
とん平「あ、写真・・・」
太郎「死んだよ、一年前に事故でな」
し〜ん・・・。
太郎「はは、そのおもちゃで遊んでいいぞ、ただし、
この家でならな」
とん平「本当!?やったー!」
それから一年が経った。
三人はこの家にあまり来なくなってしまった。
もう飽きてしまったのだろうと太郎は思っていた。
しかし。
「「おじさーん!」」
声がして玄関を開けた。
すると三人が立っていた。
太郎「何だ?三八、とん平、まつ吉じゃないか」
三八「おじさん、今までのお礼!」
とん平「あ、盗んだんじゃないからな!」
まつ吉「ちゃーんとお小遣い貯めたお金だよ!」
そう言って三人はそれぞれ手のひらの上に小銭を乗せて太郎に差し出した。
太郎「これは・・・お前たち・・・」
太郎は目頭を押さえた。
三八「あ、おじさん泣いてる〜!」
太郎「バカ言うな、大人の男が泣くか」
太郎はお金を持つ手をそっと押し返した。
三八「おじさん?」
太郎「お前たちの気持ちは嬉しいよ、しかしおじさんはね、もう長くはないんだ、すぐに死ぬそうだ、だから俺のことはいいんだよ」
三八「死ぬなんてそんなこと言うなよ!」
とん平「まだ分かんないじゃん!」
まつ吉「そーだよ!」
太郎「いや、本当の話さ、あと半年の命だと医者に言われてな」
三八「そんな・・・」
太郎「その分、自分の欲しいものの為に使いなさい、お前たちが一生懸命貯めたお金なんだから」
三八「うん・・・分かったよおじさん」
三人は渋々承諾した。
そう言って太郎は三人の頭を撫でた。
枯れ枝のような細い腕で。
それから程なくして太郎は亡くなった。
三人はいつもの柿の木の前を通った。
枯れて散っていく葉が一枚、空を舞った。
太陽に照らされた枯れ葉は三人を見て笑っていた。




