表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

鉾立線ユーザー風景・週央

〈水曜日〉

 午前10時 新立岡駅


 電車に乗るのなんて、も~う何年ぶりかしら。何年? もしかして何十年かしら?

 イヤねえ、年を取ると1年があっという間だわぁ。

 最近は、駅や切符も色々変わってる、って言うけれど……本当に大丈夫よねえ?

『いい? それは、改札通す切符じゃないからね?』

 って言われて、カードを貰ったけれど……。紙の切符もまだあるのに、こっちの方が楽、ってどうしてかしらね。私みたいなおばあさんには、紙の方が分かりやすいと思ったけれど……。

『紙だと、落としたりバッグの中で見失ったりするでしょ』

 そう言われてしまうとねえ……。否めないわあ……。

 乗る時はどうだったかしら。手前にピッ、だっけ?

 え、でも……ピッ、てなあに? もしかして、鳥が鳴くの?

 いいわ。やれば分かるわよね。


「下がって、タッチしてください」

 まあ、ピッてタッチ? すること? でも、どこに?

「お客様。ICカードは、こちらにタッチしてくださいね」

 まあ、今はこんなにかわいい女の子も、駅員さんをやる時代なのね。いえいえ、そんな考えは時代遅れ、ってこの前釘を刺されたじゃないの。

 でも、ICカード?

「お持ちのこのカードです。この、青く光っているところにかざせば大丈夫ですよ」

 そうなの! 改札を通さずにピッとタッチね!

「無理に入れてしまうと改札が壊れてしまう恐れがあるのと、カードも取り出せないか破損してしまうかもしれませんので、どうぞご無理はなさらず……」 

 こういうことだったのねえ。よし、覚えたわ。入れようとしなくて本当に良かったわぁ……。

「長く置かなくても大丈夫なので、音が鳴ったらそのままお通りください」

 そうなのねえ。もう鋏を入れる時代じゃないのね。不思議。

 あら? 今何か画面に見えた?

「カードの残額が出ますよ。もし足りないと思ったら、各駅でチャージができます」

 ちゃーじ?

「あ、お金の補充? です。規定の運賃に足りなかった場合、改札の出入りができないので、ご注意ください」

 あら! 油断できないのねえ。

「改札外の自動券売機でもチャージできますし、改札内にある同様の機械でもできますので、困ったら各駅の窓口でお聞きくださいね」

 丁寧に教えてくださって助かるわあ。昨日、同じことを教わった気もするけれど……。

「今日は、どちらまで行かれますか?」

 ああ、そうだったわ。お友達と、新港駅で待ち合わせてるんだった。降りたら、新西口に行かなくちゃよね。

「では、2番ホームに来る次の電車にお乗りください。真ん中くらいの車両が、降りた時新西口に行きやすいですよ。良かったら、今日お着物なので、奥のエレベーター使ってくださいね」

 まあまあ、何もかも親切にしてくださって。これでもう、一人でも大丈夫ね。

 それじゃあ、行ってきますね。

「お客様ー! 反対側のホームですよー!」

 あら?



〈木曜日〉

 午後23時40分 電車内

 

 くそ、何だったんだあのシステムエラー。あれは絶対誰かがどこかで人為的なミスしたせいだろ。

 今日こそちょい残業で帰れると思ったのによぉ~……。開いてる店で飯食って帰れると思ったのによぉ~……。

「次は、元橋、元橋です」

 いや、何でここまで残業する必要があったんだ。ねえだろ。

 あのクソ上司。なにが、ついでにこっちの仕事もよろしく~だよ。普段ろくに仕事してねえのに、人に回してんじゃねえよ。しかも締切近ぇのばっかよこしやがって……。

 終電じゃねえだけマシなんて誰も思わねえわ。ほぼ終電だろこんな時間。会社住みの先輩に比べりゃマシ、って、だけで……。マジで転職すっかな……。

 大体、この時間に乗ってるのなんて俺みたいな社畜か、遊び帰りだけだろ。いや、今日に限ってそんな乗ってねえな。

「現在、大雨の影響で後続の列車が遅れております」

 これか……。そういや、天気予報で言ってた気がするわ……。待て、今日、洗濯物……。やっちまった気がする、ベランダに干した何かの色を覚えてる気がする。

「この電車は、次の元橋で、時間調整のため少々停車します」

 ってかマジか。早く帰らせてくれ。明日も普通に出勤なんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ