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褒められたいおじさんたちの商売

作者: 花黒子


 会社員になって初めに気がついたことは、人への興味がない人たちが、物を売るっていう不思議だった。銀行を作ったユダヤ人の本にも人の流れを作ることと書いてあるはずなのだが、とにかく宗教にでも入って広告を打つことの方が有効だった時代がある。


 それもネットの登場によって変わってしまった。

 すべてがデジタルになり、需要以前に会社の業績という名の数字を作っていくことが重要になった。嘘でもいいから、未来は明るいというバランスシートを出すことによって、株価が上がり、その間に逃げるだけになる。


 逃げたってやりたいこともない。

 それでも起業して、ウェブサービスを作っていた。ミクシィ、フェイスブック、ツイッターなど大手SNSが流行る中、疲れたビジネスマン向けに風俗コミュニティサイトを立ち上げた。


 癒されたい男は多いと思って作り始めたものだが、適当にいろんなサイトを参考にしたところ、細々とだが広まった。それでも確実にお金を落としてくれているのに、疑問を持った。

 客の言うことを概念化していくと、結論は出る。

そもそもビジネスマンは褒められたいと、気づいたのは早かった方だと思う。


 バブルが崩壊し、先が見えない成長しない時代がしばらく続いた。自分のやっていることが合っているのかどうかも怪しい中で、誰かに褒められることでどうにか精神のバランスを保っていたのだろう。


 この国は褒められたいおじさんたちによって回っている。

 褒められたい欲、つまり「なんかポジティブな雰囲気」だ。どれだけ国が借金をしていても、なんかポジティブに寄っていってしまうということが不思議でならなかった。

 よく考えれば仕事ができるビジネスマンは周囲からも褒められるし、そのまま出世していき、仕事ができない人たちがうちのサービスを使ってくれているのだとしたら……。

風俗コミュニティだったが、いつしか場末感が漂っていた。

 この国が雰囲気で回っているとしたら、雰囲気がある時点で勝ちだろう。


 ネットの時代になり、物が売れるよりも、ないものを売る方が生産コストもかからないし、別のSNSが勝手に広げてくれる。つまり客にプロモーションをさせればいいのだ。


 ウェブ上のキャバクラのようなサイトも立ち上げた。

 ほとんど自動だったのに、人は来るものだ。


 そのうちに、バイトで若い娘を雇って、配信を始めた。

 対して売り上げはなかったものの、銀行は会社を畳ませてくれないもので、7年くらいはやっていた。

 それがコロナ禍で一気にバイト社員が増え、お客さんも増えた。人は人を呼ぶ者で、ネット上でもそれは変わらない。


 広告を付けていたが、課金システムだけでも行けそうになったくらいで、広告をなるべくつけないようにすると、またしても広がった。


 そんな中でAIが登場する。配信画像も喋りもできる。視聴者との受け答え、仕草はノウハウが溜まっていたから最適化されるだろう。


 数か月で、人気のバイト社員の履歴を覚えさせて、あとはもうAIに任せた。プロンプトエンジニアによる定期的な改良があるものの、最適化されてしまった。

 

 社員はほとんど解雇したいのだが、一応法律があるので、徐々に減らしていくことになった。ジェンダーギャップが取りざたされているので、女性エンジニアが一人いればいいだけだ。


 人もいなくなれば、そろそろ会社も畳みたい。いいだけ稼いだから、会社ごと売ることも考えたが、ジェンダーギャップを生む会社はなかなか売れないのだとか。


 仕方がないので、男性ビジネスマンを癒すためのサイトを、今度は女性のキャリアウーマンを癒すサイトも立ち上げておく。ちょうどショタコン事件が世を騒がせていただけに、風当たりは強いと思っていたのに、なぜかうちのサイトはそれほど人気がないためか、避難所のような扱いになった。


 男性も女性も関係なく、雰囲気さえ作れればそれでいい。物を売らずに、雰囲気を売った方が儲かる。

 だいたい、普通にちゃんと物を売って儲かるなら、食品会社が食品偽造なんてする必要ないし、芸能人が整形の必要もない。

 仕事ができない人たちが褒めあう場所を作ったら、小さくても食えます。


 ジェンダーギャップの解消? 弱者の商売が儲かっているうちは、雰囲気は変わらないんじゃないかな。


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