The Self‐Defense Forces 4
東京にあるホテルのスカイラウンジ、高級BARに男性が一人酒を嗜んでいた。男性によるサックスと美しい女性がピアノを生演奏して、ゆっくりと時間が流れている。横を見渡せばガラスに映った宝石の様な夜景が映っており、気分は悪くない。男はウィスキーのロックを飲み干すと、周囲を確かめた。男女が談笑している者達が殆どだが、男の様に一人で飲んでいたりと様々である。入口の方から、ようやく待ち人が来た様で確かに目立つ格好をしている。自分の部下と3人で一直線にこちらまで来ると、部下二人は一礼して帰っていく。紅い特攻服の様な風貌と赤い髪が特徴的の目の鋭い男。
「今日は、奢って貰えるって聞いてきたんだが」
「そのつもりだ。何でも頼んでくれ給え」
そういうと、男もジンのロックを注文した。
すぐに飲み干さずに一口付けてから質問する。
「何で、吸血鬼の金持ちのあんたが俺を雇いたいのか聞いていいか」
「元、牙王だからじゃ駄目なのかい」
「いいや、詮索する気はねえし、実際どうでもいんだが。それでも種族としてのプライドみたいなモンは無ェのかなと」
「人狼と違って、僕ら吸血鬼に多種族を認めぬ狭い器量の持ち主は少ないさ。それに足がついても困るから君に頼みたい側面もある」
2杯目を頼んで、勢い良くグラスの中の酒を飲み干す。
「君は知らないだろうが、吸血鬼は長寿だ。勿論個体差もある。それが弊害して我が一族の長は未だに一族の始まりである老齢の女によって支配されているのが現状だ。男よりも女を立て優遇する男性蔑視社会構造を僕ら男子は訴えて来たが、悉くこの祖母が邪魔してね。今まで成功した試しが無い」
許して貰えたなら運が良いが、そうで無ければ処罰される。場合によっては殺される事例もあった。
「俺なら、そんな風習あったら壊すがなぁ」
「僕もそうしたいのさ。だから君の力を借りたい」
「まぁ、いいぜ。面白けりゃ何でも。強い奴に会えるんなら尚更な」
「君の希望には恐らく添えられるだろう。何せ、祖母は年齢に比例して顔の広いお方だからな」
「風習を壊すっていうが、具体的にはどうするつもりだ」
「殺すしか無いだろうね。彼女こそこの一族の悪しき風習の体現そのもの。アカツキグループの会長職に今でも座り続ける一族の癌だ」
「テロでも起こすつもりか?」
「嫌いかい?」
「いいや、大好きさ。いいぜ、まずは何をする」
「最近、会長のお気に入りの自動式人形が直ったとかで浮かれていてね。法律を無視して魔術師の異世界で2体の人形を作らせているらしい。それを2体奪って来て欲しい」
「何だ、嫌がらせか。言ってる事は大きいが、やる事は随分小さいな」
「君には分からないかもしれないが異世界の技術にはそれだけの価値がある。もう一つは陰陽庁への報告さ。彼女もこの世界で生きる限りは無視出来ない組織だしね。ついでに国が動いてくれれば隠居に追い込み易くもなる」
「まぁいいぜ。面白そうだし、乗ってやるよ」
「有難う。今日は良い酒になりそうだ」
二人は、グラスを持ち上げて、それからまた酒を飲み始めた。