第八話 大悪魔ブルーベリーちゃん
「ぜはぁ、ぜはぁ、ぜはぁ、こ、これで解呪出来ましたね。それでは私はこれで」
「え、大丈夫なんですか?すごい疲れてるみたいですけど」
「ええ。一日休めば回復するので」
「それならよかったです。あ、結局あなたは誰なんですか?」
「私ですか?ふっ。名乗るほどの者ではありません」
すごいドヤ顔してる...言いたかったのかな?
「そ、そうですか...」
時々ふらつきながら去っていった。なんだったんだろう。まあいいや。思わぬ収穫もあったし。どこか人がいない所で召喚してみよう。
しばらく歩いて草原の奥の方までやってきた。ここなら人もいないしいい感じかな。その前に一応火魔法と水魔法を外して呪術と聖術をセットしておこう。じゃあやってみよう。
うわあ、本から大量の魔法陣がでてきた。だけど呪術って感じは一切しないな。
「あーっはっはっはっは!あたしの為の供物あつめご苦労様!さあ、絶望しなさい!このあたしこそが暴食の悪魔王の娘!大悪魔ブルーベリーよ!」
魔法陣から綺麗な女性がでてきた。この子がブルーベリーちゃんかな?なんか悪の組織の女幹部って感じだな。でも強そうな感じはしない。そうだ、鑑定してみよう。
〔『鑑定』結果
ブルーベリー Lv1 悪魔/天使 正常 受肉中
暴食の悪魔王の娘。十分な供物を得られなかったため自分の魔力で肉体を作り出した。その際魔法陣から神力が流れ込んだことで半分天使となっている。神力を取り込み受肉したことでスキルを使えるようになった。弱い。
スキル:『冥術』〕
なんかいろいろ新しい用語が出すぎでは?
「ちょっと、なにボーっとしてんのよ?というかあたしの初召喚なんだからもっと人が多いところで召喚しなさいよ。気が利かないわね」
えぇ...初めてなのか。
「まあいいわ。それじゃ、あたしを召喚してくれたお礼に苦しませずに殺してあげるわ。『冥凶死睡』」
なんか強そうな技をつかったようだが何も起こらない。
「あれっ?何でかしら。失敗するわけないんだけど。『冥凶死睡』」
何も起こらない。
「あ、あれ、おかしいわね。『冥凶死睡』!『死界』!!『崩壊魔手』!!!」
何も起こらない。
「何で、何で使えないのよ!!あたしにはこれしかないのに!」
半泣きになっている。なんか罪悪感が沸いてきた。私の経験値やアイテムを奪って街の住人を無差別に殺戮しようとしたとはいえさすがに...いややっぱないな。こいつは悪魔だ。
「ぐうぅぅぅぅ!こ、こうなったら直接攻撃するしかないわ!やったことはないけどラムダに教えてもらったし出来るはず!えいっ!」
ぽかっ
弱い。振り回した腕がたまたま私に当たったみたいな動きだ。格闘センス無さ過ぎない?しばらく試していたが無駄だと分かると座り込んで泣き始めた。
「う、うぁぅぅう、グスッ、ひっく」
これじゃあ私がいじめているみたいじゃないか!もういい。なんか疲れたし帰ってもらおう。
「うわぁぁぁ、ごめんなさいおとうさまぁ。あたし、ここで死んじゃうんだぁ」
「帰っていいよ」
「え?」
「だから、帰っていいよ。もうなんかめんどくさくなっちゃった」
「いいの?」
「いいって。だから早く帰りな」
「あ、ありがとう」
ふう。大悪魔ってどんな奴が来るかと思ったら想像を遥かに上回るポンコツだったなあ。
「あれ?」
「どうしたの」
「魔法陣が冥界につながってない?」
「つまり、どういうこと?」
「これ、...あたし帰れないんじゃない?」
えぇ...またなんか面倒ごとか。
「ちょっと!あんたこの魔法陣に何したのよ!帰っていいって言ったじゃない!うそつき!」
「いや、知らんし」
「そんなわけ無いじゃない!魔法陣をなんか魔力じゃない変な力が覆ってるでしょ!これ何なのよ!」
魔力じゃない変な力?そういえば鑑定したときに魔法陣から神力が流れ込んだって書いてあったな。それのことか?言ってみよう。
「神力?これが?へえ、そうなんだ。初めて見たわ。ん?あれ?なんであたしの体からこれと同じ力を感じるのかしら?」
「なんか半分天使になったらしいよ」
「天使!?魔神さまを裏切った奴らじゃない!そんなのと同じになるなんて嫌よ!」
また知らんことを...魔神ってなんだよ。
「あんた!なんとかしなさいよ!あんたのせいでしょ!」
「そんなこと言われても神力とか知らないし」
「なんで知らないのよ!神力って人間が使う力でしょ!?」
「いや、そうじゃなくてそもそもこれ知らない人に解呪してもらっただけだし」
「え?な、ど、どういうことよ!あたしの冥術は悪魔の中でも屈指なのよ!人間なんかに解呪出来るわけないじゃない!」
「冥術って?」
「呪術の一つ上の力よ!あんたもう黙ってて!」
はい、黙ります。でも呪術の一つ上の力か。あの人はなんでそんなのでかけられた呪いを解呪出来たのだろうか。
「くっ、なんでこんなに弱ってるのよ!弱ってさえいなければ冥界まで転移できるのに!しかたがない、あんた!これを解呪したって奴のところまで案内しなさい!」
「でもその人悪魔を撲滅するのが使命って言ってたよ。弱ってるなら危ないんじゃない」
「え!ううううう、あんたに召喚されてから何もかも上手くいかないわ!なんとかしなさいよ!」
「そんなこと言われても」
【大悪魔ブルーベリーが従者になりました】
【ヘルプ 従者 プレイヤーに従うNPCです。プレイヤーは従者のステータスを見て操作することが出来ます。従者はステータス操作とプレイヤーのインベントリの操作が行えます。インベントリのアイテムが従者に触られないように設定できるようになりました】
〔称号『大悪魔を従えたもの』『知恵者』を獲得しました〕
は?え?なんで?状況についていけず戸惑っているとブルーベリーちゃんの腕に白い腕輪が現れた。
「何これ!?外れない!」
「なんか従者になったって...」
「は!?従者!?何で...まさか!さっきなんとかしなさいって言ったのが契約になったの!?なんてこと!」
「えぇ...一つも分からないんだけど。説明してほしい」
「契約ってのは悪魔の基本能力よ。言ったことを相手に強制的にやらせるの。でも言い方を間違えると自分に強制されちゃうのよ」
「そうなんだ」
「つまりさっきあたしがなんとかしなさいって言ったからあなたにはなんとかする義務が生じた。でも具体的なことを言わなかったからそのためにあたしの力を使っていい見たいな判定になって従者ってことになったんじゃないかしら」
契約ってそんなふわふわした感じでいいのか。
「契約を終えるには契約内容の達成が必要なんだけど...中身が空みたいな契約だからもうあんたが死ぬくらいしかあたしが解放されることは無いわ。それに従者になっちゃったからあんたのことを守る必要があるし」
「なんかごめん」
「いいわよ、別に。あたしの自業自得だし」
まあそれはそう。
「はあ。まあ人間の寿命くらいならすぐだし。その間くらいは従者やってやるわよ」
「じゃあ...これからよろしく」
「今後ともよろしく」
じゃあいま手に入れた称号とブルーベリーちゃんのステータスを確認しておこう。
〔『大悪魔を従えたもの』 大悪魔と呼ばれる者たちの一体を従えた。”サモナーの到達点。それが大悪魔を従えること”
悪魔に与えるダメージが上昇する(大)
悪魔から受けるダメージが減少する(大)
悪魔からの好感度上昇(中)
魔力上昇(極大)〕
〔『知恵者』 悪魔を出し抜いて従者にする。”悪魔とはいずれも知恵者。ならばその悪魔を出し抜いた者も知恵者”
知恵者からの好感度上昇(大)
スキル成長力上昇(大)
弱点看破〕
あれでも出し抜いたでいいんだ。
〔名前:ブルーベリー
Lv:1
種族:悪魔/天使
職業:なし(選択してください)
スキル:メインスロット:『冥術』(選択してください。残り9)
サブスロット:〕
へえ、職業とスキルを取れるのか。ブルーベリーちゃんと相談してみよう。